今から60年ほど前。1959年9月26日に日本を襲った伊勢湾台風は、和歌山から上陸、本州を縦断。今からは考えにくいが約5000名の死者・行方不明者を出した。
それ以降、日本では台風被害で死者・行方不明者が100名を超えたことはない。

これは、台風の進路予想の精度が上がったのか、かつてほど強い台風が来ていないのか、被害の少ないコースにしか来ていないのか、台風予報を人々が知りやすくなり備えるようになったのか。

いずれも影響しあっているかもしれないが、少なくとも台風の研究が進化していることは確かだ。2019年6月1日発売の『ビッグイシュー日本版』の特集は「台風最前線」。
これからの季節、台風を知り、減災対策に役立てたい。
 

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写真提供:山田広幸さん

温暖化で数は減るが、強くなる? 防災意識を高めたくて作った世界初の「台風ハザードマップ」

「温暖化で数は減るが、強くなる」と予想するのは横浜国立大学教育学部准教授の筆保(ふでやす)弘徳さん。
2018年に台風、豪雨などの災害がもたらした損害に対して支払われた推定保険額は、東日本大震災のそれより大きい(1兆3000億円)。筆保さんは、台風はかつてのように人的被害をもたらさないものの、経済的損失が右肩上がり、もっと防災意識を高めるべきだと指摘する。

人々の防災意識を高めてもらうために研究を続けている筆保さんが、本誌360号で「台風発生の条件」や「台風の5つのタイプ」などについて詳しく解説。世界で初めてとなる「台風ハザードマップ」についても紹介してくれた。

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△台風タイプ別の特徴 (出典:『台風についてわかっていることいないこと』)

台風の目に飛行機で飛び込むと?琉球大の准教授

直径が90キロ。これは琉球大学理学部准教授の山田広幸さんが飛び込んだ「台風の目」の大きさだ。 台風の目の中では風はなく、青い海と青い空。そしてまわりには台風の雲の壁、という特殊な状況に、いたく感動したという。

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△2017年の台風21号の雲画像と経路(黒線)、同年10月21日の飛行機による観測調査時の飛行経路(赤線)
(画像提供:山本広幸さん)


山田さんが飛行機で台風に近づいた理由や、そのおかげでわかってきたことなどを本誌360号では紹介。研究を防災に役立ててほしいと語ってくれた。

台風の進路は予想できても、強さが予想しにくいのはなぜ?

雨量がハンパない昨今の台風や豪雨。それは海水温と気圧の関係から起こるものであり、今後雨量が増える可能性があると、前述の山田さんとともに琉球大学理学部で台風を研究する准教授の伊藤耕介さんは話す。伊藤さんほか台風研究者による研究のお陰で、何が進路や台風の急発達に影響を及ぼしているのかが解明されつつあるところだ。

研究者の皆さんの地道な努力に敬意を表しつつ、一般の人々は防災意識を高めていきたい。


関連書籍:
台風についてわかっていることいないこと

筆保弘徳・山田広幸・宮本佳明・伊藤耕介・山口宗彦・金田幸恵 著
ベレ出版/ 1700 円+税


ビッグイシュー360号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:俳優 東ちづるさん
・スペシャルインタビュー:体験談を話してあげようと妊娠した姉の代わりにオーディション参加、演技経験なしで主役に抜擢。ヤリッツァ・アパリシオ
・国際:種が絶滅する瞬間を目撃したことはありますか。密猟の横行で、地球最後のオスキタシロサイが逝く。
・ホームレス人生相談:20代男性からの「入社2年目の会社員ですが、入社1年目の社員が目立ち、自分の働きが評価されていないように感じます」の相談

など盛りだくさんです。
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