ここ20~30年の間、新聞、週刊誌といった紙メディアは、どんどん縮小している。 

新聞・週刊誌は、右肩下がり

新聞(一般紙)の発行部数は2000年以降、1000万部以上落ちた。(※)

無題
日本新聞協会調べ


また、出版物の推定販売金額も1995年から見ると半分以下となった(※※)。 syuppan
※※全国出版協会調べ 


ネットで無料記事が読めること以外にも、人口減・少子高齢化に加え、若い世代の貧困化等を考えると、紙媒体が今後V字回復するということはまず考えにくい。

となると廃刊を免れたとしても、これまでそれなりに潤沢な資金があった各メディアも、これまでのやり方のままでは予算が限られてくる。紙メディアを主な仕事場としていた「編集者」や「記者」、「ライター」といった発信者たちのなかには生き残りをかけてこれからの道を選ぶ必要が出てくる人もいるだろう。

編集者、記者、ライター。発信者たちの生き残る道とは

ある人は、書く場を変えることはせず、「偏向だ」と言われようとも、誰かを傷つける可能性があろうとも、広告主や購入してくれる層が喜びそうな記事を書けるようになろうとするかもしれない。
ある人はWebライティングのスキルを身につけることで、仕事の幅を広げようとするかもしれない。

しかし、このやり方ではどちらにしても「広告や読者の数の最大化」を狙おうとすると、「本来自分の書きたかったこと」と乖離していくことが発生してしまいがちだ。

それは自分の書きたかったことを封印するというだけでなく、「聞き出す力」「調べる力」「書いて伝える力」「編集する力」といった、貴重な才能を世のために使わないということを意味する。人口が減りつつある国の、さらにシュリンクする市場で「広告や読者の数の最大化」を狙って自分の気持ちと才能を殺すというのは、才能がある人であるほど、我慢がならないジレンマかもしれない。

リトルプレスという選択肢

9月15日発売の『ビッグイシュー日本版』367号の特集は「リトルプレス 繚乱(りょうらん)!」。紙でユニークな雑誌や本を発行する個人やグループ、「リトルプレス」の活動を取り扱っている。

本誌では「読み物として興味深い」8冊を紹介しているが、そのうちのほとんどが、元出版社・新聞社勤務、広告代理店などのライター、デザイナー、イラストレーターだった人によって生み出された冊子だ。

今回紹介している冊子に関わる人たちが上記のジレンマとは関係しているかどうかはわからないが、日々「これは自分が書くべきことなのか」と苦しむ編集者・ライターといった発信者側の人たちがいるならば、「聞き出す力」「調べる力」「書いて伝える力」「編集する力」の活かし方の選択肢としてご紹介したい。

本誌367号に掲載の「リトルプレス」の例


『mürren(ミューレン)』

02
山と溪谷社で15年勤めた女性が「街と山をつなぐ小冊子」として出版。
写真は米軍占領下の沖縄で発行された「琉球切手」の歴史特集。



『ポポコミ』
03
“じつは漫画を描いていた女性”の「コミック・アンソロジー」。
アジアの独立書店での取り扱いも増え、通販では北米やヨーロッパからも注文が入るという。



『ツバメものしり帖』
04
勤めていた出版社を辞め、イラストレーターになった女性による、ツバメ尽くしの冊子。
自作のカードがニューヨーク近代美術館(MoMA)から発売された。


『a nagu ma 文庫』
01
通訳や翻訳をしていた米国人が、地域おこし協力隊として奈良の山村に移住。
『木について語る』エッセイが村の広報誌に折り込まれ、冊子化。


**

それぞれの冊子は発行者の尋常ならざる興味をもとにしており、決して「広告や読者が最大化」することはないかもしれない。しかし誰も傷つけることなく「本当に自分が伝えたいこと」について才能をフルに発揮して表現し、それを求める読者とつながる喜び、支援者とのつながりをもとに生きる道筋が生まれているのだ。
自分らしく、発信していく勇気をくれる特集。ジレンマを感じている発信者はぜひ読んでみていただきたい。


『ビッグイシュー日本版』367号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:浦浜アリサさん 
・スペシャルインタビュー:メリル・ストリープ
・国際:ユニバーサル・ベーシックインカムの新しい旗手、歴史家ブレグマン
・監督インタビュー:『サウナのあるところ』ヨーナス・バリヘル監督
・ビッグイシュー・アイ:世界初のウェブサイト「cmap」。リアルタイムで建物被害を予測
・ホームレス人生相談:17歳男子からの「自分の考えや言葉に自信がもてません」の相談

など盛りだくさん。
367号SNS用横長画像

ぜひ路上にてお求めください。

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「なぜ、紙の本なのか?」参考書籍

「興味や才能を活かして理解者と触れ合いたいなら、ネットでもいいのでは?」と思う人もいるかもしれない。作家から取次、本屋まで、「贈る」ように本をつくり、本を届ける10人の手による珠玉の小論集、『本を贈る』。
https://3rinsha.co.jp/book/okuru/








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