東京都新宿区の大久保地域で外国にルーツをもつ親子のサポートをしている「みんなのおうち」。言葉の壁や生活習慣、高校受験、就職など、子どもの成長に応じて直面してきた課題、活動の変遷、新たに始まったキャリア教育の取り組みについて聞いた。

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NPO法人みんなのおうち代表理事 小林普子さん

日本語教室、学習教室、居場所、15年間で卒業生は約150人

 「みんなのおうち」代表理事の小林普子(ひろこ)さんは新宿区で3人の子育てをする中で、子どもの権利条約に関心をもった。

 「故郷を離れるなど、血縁や地縁がない場所で子育てを通して知り合った縁を“知縁”と呼び、子育て中の親と子をサポートする団体『みんなのおうち』を2005年に立ち上げました」

 新宿区は現在、人口の12・4%を外国籍の住民が占める(※ 2019年1月1日現在:東京都総務局)。外国にルーツをもつ人を含めると、その数はさらに増える。「日本語がわからず、子どもに予防接種もできないという声を聞き、外国ルーツの子が6~7割を占める大久保小学校で親子の日本語教室を始めましたが、東南アジアを出身地とする母親と子どもだけの貧困家庭が多く、現状から脱するには高校を卒業する学力を身につける必要があることを感じました」

 06年には新宿区と協働で学習教室を始め、17年には居場所「みんなのおうち」を開設した。「企業内高校や高専も含め、毎年約10人が高校を受験し、全員が合格。150人近い教室の卒業生のうち中退したのは4人程度です。しかし、6割もの子がその後、正規との違いもよくわからないまま、非正規社員になっています」

 そこで小林さんらは助成金を得ることで活動も広く知ってもらえると、中央ろうきん若者応援ファンドに応募。キャリア教育に取り組み始めた。

①教室の学習風景
新宿区教室の学習風景

就職に生かせる、母国の言葉。パソコンや労働者の権利を学ぶ

 「キャリア教育といっても幅広く、週に3回はみんなでごはんをつくって挨拶や食事のマナーを学び、子どもたちのいない時間には親の生活相談にのって、必要があれば行政や弁護士とも連携します」

 さらに、月一度は講座を開催。7月は11人の卒業生が子どもたちに、経験に基づいたアドバイスを送った。8月には外国人留学生と企業をマッチングする会社の代表を講師に招き、進路選択について考えた。
 「母親がタイ人ならタイ語の読み書きは難しくても会話はできる。スキルアップすれば就職にも活かせる。二つの文化をもつことの価値に気づいてほしかったんです」

②料理風景
週3回は、放課後にみんなで料理して食べる

 9月には、「就職はしたもののワードとエクセルを使ったことがない卒業生」などを対象としたパソコン教室と、グループで映像を制作するワークショップ、10月以降は労働者の権利に関する勉強会などが予定されている。

 「そもそも、両親が外国人の子どもは家族滞在ビザしかもらえず、週28時間までしか働けない。企業の内定をもらえばビザは切り替えられますが、企業は就労できるビザをもつ人に内定を出すという矛盾がある。入管法を改正して新たに外国人労働者を受け入れるなら、まずは、日本の習慣を熟知していて、人材としても悪くない彼らを積極的に受け入れてほしい」と小林さん。

③映像制作ワークショップ話し合い
映像制作ワークショップの様子

「ここに来る外国ルーツの子たちの多くは、親が常に仕事で不在のため『家庭内の会話がなく』『語彙が少ない』『そのため教科書が理解できない』『親が非正規以外の働き方の情報をもっていない』など、日本人の貧困家庭の子と同じ悩みを抱えている。今、私たちの活動はボランティアによって支えられていますが、将来的には行政が貧困家庭の子どもとも共通する政策を考え、公費で取り組むべき課題だと思います」

④みんなのおうちルール
「みんなのおうち」は子どもや若者を見守り応援する場でもある。


特定非営利活動法人 みんなのおうち
新宿という都会で子育てを通して知り合った家族が親睦と交流を図ることで、子育ち、子育て支援及び都市コミュニティーの再生に寄与することを目的に、居場所「みんなのおうち」の運営、区との協働事業「こどもクラブ新宿」の運営、映像制作事業、多文化交流会、新宿多文化共生防災フェスタへの協力、職場体験などを行っている。

★活動を続けるためのご寄付やボランティアを募集しています。団体ホームページよりお問い合わせください。
https://minnano-ouchi.jp/


中央労働金庫(中央ろうきん)

ろうきんは、はたらく人のための非営利・協同組織の福祉金融機関。「中央ろうきん若者応援ファンド」は、若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度です。

【2020年公募】
中央ろうきん助成制度“カナエルチカラ”~生きるたのしみ、働くよろこび~
受付期間 2019年10月1日(火)~31日(木)消印有効
詳しくは、中央ろうきんホームページをご覧ください

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上記記事掲載号

THE BIG ISSUE JAPAN369号
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https://www.bigissue.jp/backnumber/369/


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