「人間の命」を中心に考えると、新型コロナウイルスの大流行をポジティブに捉えることなどできるはずもない。しかし多くの人たちが「ステイホーム」を強いられるなか、都会の真ん中で野生動物が目撃される事例が相次いだことから、コロナ禍は我々人間に、「生物多様性の保持・改善」および「環境を大切に守ること」の必要性をあらためて突きつけてくれたとも言えよう。


2020年度の国際生物多様性の日(毎年5月22日)のテーマは「解決の鍵は、自然の中に(Our Solution are in Nature)」だった。 コロナ禍にある今はむしろ、 我々人間がこれまで地球上にもたらしてきた環境負荷(フットプリント)をしっかり把握し、持続可能な環境と野生動物のあり方を考え直せるチャンスである、と専門家たちは語る。

07
自然保護区は生物多様性の「金庫」のような役割を果たし、気候変動への適応に貢献する。
「パンデミックの渦中だが、ポスト2020生物多様性世界枠組みに関する公開作業部会にも取り組んでいます」と国連生物多様性条約事務局(CBD)のエリザベス・マルマ・ムレマ事務局長。
Credit: Jorge Luis/IPS

「将来の世代にどんな“実績”を残せるのか。私たちが今、その分岐点にいるということは明らかです」 国連生物多様性条約(CBD)のエリザベス・マルマ・ムレマ事務局長は言う。「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)が今年3月に発表した地球規模評価報告書にあるとおり、世界の自然が人類史上かつてないスピードで減少していること、種の絶滅率が加速していること、それらが世界中の人々に深刻な影響をもたらしていることを踏まえると、現在の対応では不十分。自然を取り戻し、守り抜くには、もっと抜本的な変革が必要です」

05
コートジボワールのタイ国立公園では、チンパンジーを含め、数多くの絶滅危惧種を見ることができる。
「自然の保存、生物多様性の保全、将来世代の健康を守るには、今すぐ広範にわたる国際協調が必要。パンデミックがそれに気づくきっかけとなってくれたら」国連生物多様性条約事務局(CBD)のエリザベス・マルマ・ムレマ事務局長は言う。
Credit: Marc-André Boisvert/IPS


「我々がいかに危機感を持ってこなかったか、二酸化炭素をどんどん排出し、環境に負荷をかけ、プラスチックごみで海を汚染してきたか。今回のパンデミックが、その事実にあらためて目を向けるきっかけになればと思います」と話すのは国際自然保護連合(IUCN)のウミガメ専門グループで共同議長を務めるロデリック・マスト。「自分たちの行いがいかに自然環境に強い影響を及ぼしているかに気付いてほしいのです」

06
エルサルバドルのジキリスコ湾に生息している絶滅危惧種ヒメウミガメの赤ちゃん。
「これらの生物は、海洋汚染や気候変動によって緩やかに破滅に向かっている」国際自然保護連合(IUCN)のロデリック・マストは言う。
Credit: Luis Romero/IPS


マストはまた、都市封鎖中に問題となっていることの一つとして、インドネシアや仏領ギアナなどで「密猟」が増えていることを挙げた。まだ裏付けが取れた情報ではないものの、パトロール隊員が減っていることで密猟が増えているとの地元の人たちからの情報が入ってきているとのこと。

関連記事:ケニアで4月から続く都市封鎖。アフリカ全土、アフリカゾウとサイの“密猟”急増

11
絶滅危惧種イッカクサイの一番の生息地はインド。この写真は10匹以上が密猟された2013年に撮影されたもの。
「パンデミックを機に、いかに危機感なく環境負荷を加えてきたのかに目を向けてほしい」国際自然保護連合(IUCN)のロデリック・マストは言う。
Credit: Ranjita Biswas/IPS


ムレマ事務局長は、コロナ禍を経て環境保全の取り組みは強化されるだろうと述べる。「コロナ危機は我々に “リセットボタン” を与え、生物多様性が人類の健康に欠かせないものであることを裏付けた。そして、今すぐそれを守る行動を取りなさいと迫っています」

10
干ばつ、森林火災、農業や伐採用の土地開墾、採掘、都市開発などの諸問題によりコアラの生息地が破壊され、脅威が高まっている。人間がステイホーム中に多くの野生動物が出現する光景が見られたが、これで問題が解決したと考えてはならない、国際自然保護連合(IUCN)のロデリック・マストは言う。
Credit: Neena Bhandari/IPS 


しかし、都市封鎖によって野生動物に起きた数々の変化に悦に入っている場合ではない、と両専門家は口を揃える。ウミガメを見かけることが増えたからといって危機が解決されたわけではない、とマスト。一時的に環境ストレスが減っただけでは不十分、自然環境に対する姿勢を大きく変えていく必要がある、とムレマも言った。

「海に関する問題は、我々人間が “海に流し込んだもの” と“海から持ち出したもの”が引き起こしています」マストが付け足す。 「汚染、船の航行、騒音など海に手を加えるもの、漁業などで海から取り出すものを制限することができれば、その時こそ、もっと“健やかな” 海を目にすることができるでしょう」

「IUCNレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」によると、確認されている野生生物約12万種のうち3万2千種以上が絶滅の危機にある、これが実態である。

IUCNレッドリスト紹介動画

By Samira Sadeque
Courtesy of Inter Press Service / INSP.ngo

idb-2020-logo-jp-75ht


*ビッグイシュー・オンラインのサポーターになってくださいませんか?

ビッグイシューの活動の認知・理解を広めるためのWebメディア「ビッグイシュー・オンライン」。

上記の記事は提携している国際ストリートペーパーの記事です。もっとたくさん翻訳して皆さんにお伝えしたく、月々500円からの「オンラインサポーター」を募集しています。

ビッグイシュー・オンラインサポーターについて

環境関連記事

オーストラリア森林火災のその後。コアラの数より深刻!?昆虫の減少は生態系を通じて人間社会にも影響

気候危機は “防止” できないと思うなら“適応”のアクションを取るべき/ドイツの気候変動対策から

「プラスチック・フリー」の先進国がコロナ禍で再び「使い捨て」を採用。今、個人ができること

あわせて読みたい

THE BIG ISSUE JAPAN366号
特集:プラスチック革命
366号SNS用横長画像
https://www.bigissue.jp/backnumber/366/

THE BIG ISSUE JAPAN380号
特集:気候危機に
380号H1_SNS用横長画像
https://www.bigissue.jp/backnumber/380/


**新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急企画第3弾**


新型コロナ対策_第3弾_ハ゛ナー

2020/9/4〜11/30まで受付。
販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2020/09/15944/









過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。