ネット販売の古本ビジネスでトップクラスの「バリューブックス」の三方よしの考え方とは

200万冊の古本在庫を持つバリューブックスの仕入れの秘訣

ネットを通じて古本をよく買う人であれば、「バリューブックス」の名前を見たことがあるかもしれない。我が家でも先日古本で参考書籍をネット購入したところ、「バリューブックス」の取り扱いであった。バリューブックスはネット通販では国内最大級で、長野県の市内3か所の倉庫に200万冊近い在庫を持つという。


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©VALUE BOOKS

バリューブックスの事業は、「チャリボン」という仕組みを導入してからさらに順調だという。
通常の買い取り業者は、古本の査定金額を売り手に示して、合意すればその額を売った本人に渡す。しかし「チャリボン」では、古本を売る人が指定するNPO・NGOに、バリューブックスが買い取り金額を全額寄付するという仕組みなのだ。

つまり一般のネット古本買い取り業者にとっての「仕入れ値」は、「本を売った人に渡す金額(+送料負担コスト等)」だが、「チャリボン」の仕組みにおいての「仕入れ値」は、「本を売った人が指定するNPO・NGOに渡す金額(+送料負担コスト等)」となるのだ。

「チャリボン」を導入しているNPO・NGOは、「古本で寄付ができます」と「チャリボン」の仕組みをNPO・NGO支援者に広めるため、ユーザーへのリーチが大きく、また、本を売る側からも一人から大量の本が集まる傾向があるという。

バリューブックスの「ブックファンドレイザー」の廣瀬さんはこう語る。

「古本業というのは、何より買い取り量を増やす必要があります。買い取り量を増やす基本は『広報』を増やすことにあるので、NPO・NGOが「チャリボン」の広報活動を自発的にしてくださるのはとても助かっています。」

「古本販売」で有名な別企業の、ネット買い取り実績をサイトで見ると2015年の1年間で34万件。それに対し、「バリューブックス」の買い取りは2016年8月〜10月の3カ月で654,039冊(公式サイトより)と、圧倒的だ。

本を売る側にとっては、支援したいNPO・NGOに働きかけられることで「じゃあこれも寄付しようかな…」と動機付けされやすく、また「社会課題解決のために寄付をする」という大義名分があることで、本の処分を決断しやすいということも後押しになっているのだろう。

廣瀬さんは「本が本当に好きな人って、本を売るのも捨てるのもイヤという人が多いんです。でも、売るのでも捨てるのでもなく、<寄付をする>ということで心の折り合いがつけられるという方は多いようですね」と語る。
また、「チャリボン」を経験した寄付者は、古本を購入するときに「多少高くてもバリューブックスを応援したい」といって指名買いしてくれることもあるというから、実によい循環システムといえる。

「チャリボン」が生まれた経緯

「チャリボン」の仕組みは、「バリューブックスは本が集まってうれしい」、「ユーザーは古本処分と寄付ができて気分がいい」、「NPO/NGOは寄付が集まってうれしい」…と三方よしのアイデアだ。このアイデアはどのようにして生まれたのだろうか。

「バリューブックス」の創業者である中村さんは、大学を卒業した後、仕事がなかったため、仕方なく自分の手持ちの本をAmazonで売り始めた。すると思いのほか高く売れたことに驚き、また、自分の本が再び誰かの手に渡るうれしさを感じたという。
そうして古本販売業を始め、仲間を集めて拡大してきたころに、出身高校の先生がNPOを立ち上げ、その理事に誘われたことから、NPO関連に人脈が増えていった。
そのなかで知り合ったNPO法人「育て上げネット」の工藤さんと話をしていて、寄付を増やすには、寄付をしてもらった本を買い取る金額を、NPOに渡す形にしてはどうか…というアイデアが生まれたのだという。
(※工藤さんからこの記事についてFacebookでコメントをいただきました。このページの下部にご紹介しています)

「チャリボン」がバリューブックスに与えた影響

もともと、「本を通して、人の生活を豊かにすること」という理念を持ち、本を循環させることで文化・経済・環境の面で貢献できればという意識はあったものの、「チャリボン」を始めてからは「直接的に社会貢献している」という意識が生まれてきたという。
寄付金をお渡しする支援先NPO・NGOの活動を自然と知ることになり、「このような社会課題と、それに取り組む人たちがいるのだ」と意識するようになったという。
「買い取りのときの『ありがとうございます。』の言葉が、チャリボンを始めてから(この社会課題に気持ちを寄せていただいて、寄付をいただいて)の気持ちのこもった「ありがとうございます。」になったように思います。」と廣瀬さん。
「買い取り」の対応から、「社会貢献に対しての感謝」の対応になったという。

確かにバリューブックスは、他のネット古本買い取り業者と比べても、本や人への愛情が感じられる気がする。チャリボンでは、支援するNPOの関係者で読書家の方に、バリューブックスのスタッフがインタビューするコーナーを持っていて、ビッグイシュー基金でも、「ビッグイシューを売る「読書家」 現役最高84歳!」というインタビュー記事をつくっていただいた。
https://www.charibon.jp/reader/issue/geneki84.html
インタビューを読んでいただくとわかるかと思うが、バリューブックスのスタッフの、読書する人や本への温かい気持ちが伝わってくる。

寄付を迷っている方へ一言

「チャリボンは、本があるなら一度やってみてください。買い取りにはない『後味さわやか』を経験することができます!」と廣瀬さん。

ちなみにビッグイシュー基金も「チャリボン」に参加しており、これまでに1,526人の方から111,125冊、2,859,948円分の寄付をいただいている。(ありがとうございます!)

筆者もこの記事を書くにあたって、「チャリボン」に初挑戦してみた。

1. 申し込みフォームに入力

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午前中に入力するとその日のうちの集荷も可能なケースもあり驚く。
ネット環境のない人は電話でも受け付けている。
0120-826-295
電話受付時間 10:00 〜 21:00(日)10:00 〜 17:00

2.支援先を選ぶ

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支援したいNPO/NGOを選ぶ。
ここはもちろん「ビッグイシュー基金」で。

3.梱包

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定期的に断捨離をする我が家には処分してよい本がほとんどなく、子どもが読まなくなった絵本等を計8冊をセレクト。
廣瀬さんいわく、絵本は「値崩れしにくいジャンルの本ですし、痛みや汚れが少なければ高めの査定になります」とのことで安心。
また、書き損じはがきを入れてOKとのことだったので緩衝材代わりに入れさせてもらった。

ふと、寄付ではなく自分で郵便局で切手や来年の年賀状に変えてしまいたい誘惑に駆られるも、「ホームレスのおっちゃんたちは、今日のこの真冬の寒いなかも路上での寝起きをしてるんだ…」と思いだし、無事封をすることができた。

4.集荷

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指定の時間に宅配業者が到着し、着払い伝票を渡して終了。
あとは査定のお知らせを待つのみ、のあっという間の簡単寄付だった。

チャリボンは5冊からであれば着払いで送付できる(5冊以下は発払い)ので、5冊であっても遠慮なくお送りくださいと廣瀬さん。

5.査定

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送付から数日で査定のご連絡をいただく。年末で忙しいかと思ったが、想定より早かった。
仕分け・査定に300人近いスタッフがいるそうだ。
そして肝心の査定金額は13,022円となった。
ちなみに、ビッグイシュー基金に寄付する場合は「認定特定非営利活動法人」のため、寄付金控除がされる。筆者の場合は確定申告で(寄付金額13,022円-2,000円)×40% の額、つまり4,408円が所得税から控除されるのだ。「後味さわやか」なうえに、とてもオトクな気分になる。

参考までに、査定が高くなる本について確認をしたところ、「書籍→ISBNがついている書籍」であることが第一の条件であるとのこと。
ISBNとは国際標準図書番号のことで、下記のような表記で書籍の裏表紙等についている。赤枠で囲った部分がISBN。
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©VALUE BOOKS

*DVD・ゲーム等についても買い取りOKで、規格番号がついている商品でお願いしますとのことだった。

参考までに、ビッグイシュー基金への「チャリボン」で過去最も高額査定だったのはとあるコミックスの全巻セットだという。コミックもOK、バラバラでもOK、はたまた、ビッグイシュー基金宛でなくてもよいので、ぜひ、大掃除&年賀状準備の機会に、チャリボンを利用して自分の興味のあるNPO・NGOに支援をいただければと思う。

※NPO法人「育て上げネット」の工藤さんからこの記事にコメントをいただきました。

株式会社 バリューブックス
  http://www.valuebooks.jp/

チャリボン
  http://www.charibon.jp/

チャリボン×ビッグイシュー基金
  http://www.charibon.jp/partner/issue/

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