*本記事は2016年8月22日掲載の記事を翻訳したものです。
アート・映画・アニメ作品から構成されるこのフェスティバルを指揮するのは、ストリートペーパーの国際ネットワークであるINSPとも親しく、毎年恒例「INSP大賞」の審査員を務めたこともあるデイヴ・トヴェイだ。彼がアーティスト・イン・レジデンスとして使っている「ジオラマ・アート・スタジオ」を会場に、9月末まで開催される。「ホームレス・アーティスト」による作品を取り上げることで社会的包摂を促し、社会の周辺で生きる人たちの創造的才能を伸ばすことを目指す。
「ホームレスの人たちが人間らしく扱われ、人々の輪の中に受け入れられる夢がかなった日」
会期中、デイヴがバラエティに富んだ展示作品、そして観客の反応について次のように語った。
こんなに大きな反響があるとは思っていませんでした。オープニングイベントでは、歌、詩、映画、アニメ、写真、絵画、写真ワークショップ、ファッション等、さまざまな作品が紹介されました。
あらゆる意味で多様性に富んでいました。来場者もロンドン各地はもとより、遠方からもはるばる足を運んでくれ、ホームレスから富裕層までいろいろな方々が交流を深めていました。
まさに自分の夢がかなった日でした。ホームレスの人たちが人間らしく扱われ、人々の輪の中に受け入れられていたのですから。途中、感極まって席を外してしまったほどです。
ホームレスの人たちにプラットフォームを提供し、これまで日の目を見ることのなかったさまざまな才能を紹介していきたいと言うデイヴ。「ホームレス・アーティスト」を発掘すべく、多くのホームレス支援団体(St Mungo’s, Café Art, Hopeful Traders, New Horizon Youth Centre等)に連絡を取った。
彼らに声を与えたいんです。他者の人生を変えることはたったひとりでもできると思います。自分がその人になれたらと。このイベントを企画した目的もまさにそこで、ささやかな形であっても、受容、自信、多様性の受け入れ、そしてたっぷりの愛を届けることをサポートしたいのです。
「私にもできることがあるんだ!って言えるようになった」
参加アーティストのひとり、フランス出身のイーダ・コテュエ(20)に話を聞いた。彼女は、キングスクロスにある慈善団体で、ホームレスや弱い立場にある若者(16~21歳)向けデイサービスを提供する「New Horizon Youth Centre」に通い、「認定アートコース」を受講している。今回、自分の作品が展示されて野望が広がったと言う。
多くの若者と同じように、こんなギャラリーで展示するなんて「できないこと」だと思ってました。自分の作品が展示されてるのを見て、思ってもみなかったことなので、ただただ嬉しかったです!
一緒に行った先生と他の展示作品の中に自分の作品を見つけ、とても面白かったし、感激でした。私にもできることがあるんだ!って言えるようになりました。これまで自分の作品にはあまり価値がないと思っていたけど、見てくれた人たちの評価は違いましたから。
9月15日にドキュメンタリー映画 『Something You Can Call Home(あなたが家と呼べるもの、の意)』を公開するのは、社会問題を扱った作品が得意の映像作家で、社会派ドキュメンタリー映画プロダクション「mote of dust films」を立ち上げたレベッカ・ケニヨン。この作品では、米ノースカロライナ州でいろんな段階のホームレス経験者のストーリーを追った。
「このフェスティバルに参加できて光栄です」と言うレベッカは、無料上映会を通じて観客に期待していることがある。
この映画がきっかけとなって、安全な場にいるさまざまな層の観客が対話を始めてくれたらと思っています。人の話に耳を傾け、お互いを支え合うことにより積極的になれる場として。なぜなら、ホームレスになる可能性は誰にでもあるのですから。
映画を観た人が明くる日から、フードバンクに寄付をする、路上生活者を見ても怖がらず笑いかける、目を合わす、話しかけるなどの小さな変化を起こしてくれたら、この上映会がささやかながらもポジティブな変化を社会にもたらせると思うのです。
アートを通じてホームレスや孤立を考える
「ジオラマ・アート・スタジオ」の統括マネージャーでクリエイティブ・ディレクターのヤコブ・スティーヴンスは、デイヴいわく「フェスティバルの生命的存在」だ。スタジオに13年間勤務し、ホームレス・アーティストの拠点として「ジオラマ・コレクティブ」を立ち上げた。長い間、恵まれず、なかなか声を届けることのできない人々を支援してきた。
フェスティバルの企画段階を振り返って、ヤコブは言う。
来場者の多くが、展示作品を謙虚な気持ちで受け止めるとともに驚きを見せています。このフェスティバルを開催することで、ホームレスの人々にはチャンスが欠如していること、そしてクリエイティブな営みがもたらす治療効果や更生力にも光を当てることができます。
参加してくれた多くのホームレス・アーティストが、一個人として自分の存在に気づいてもらえる、自分を価値ある存在と感じられる場となっています。
「The One Festival of Homeless Arts」は2016年9月30日まで開催している。クロージングパーティでは、ホームレス経験者らによるコーラスグループ「No Name」やオペラ団体「StreetWise Opera」がパフォーマンスを行い、最終日の夜を飾る。
文:キャット・コクレーン
INSP.ngoのご厚意により
ONE Festival Homeless Arts
https://www.facebook.com/OneFestivalNW1/
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