昨日12/15は、ビッグイシュー基金主催で「住宅政策提案書」の発表シンポジウムを開催しました。オンライン編集部のイケダが取材したので、その模様を書き起こし形式でお伝えしていきます。

3時間近いシンポジウムで分量が多くなっておりますので、まずは第1部「いま、なぜ住宅政策?」をレポートいたします。料理研究家の枝元なほみさんが、提案書作成にあたった平山洋介先生にインタビューを行いました。

今なぜ住宅政策か?



枝元さん:こんにちは、料理研究家の枝元です。料理と住宅…関係があるようでない、のでしょうか(笑) 今日、私は平山先生に簡単なことばでお話を聞いていく役割です。よろしくお願いいたします。まずは先生、自己紹介をお願いいたします。普段何をしているのか、など…。

平山さん:神戸大学の平山です。よろしくお願いいたします。普段は…学校に勤めております。仕事して、勉強したりしています(笑)日本には住宅政策を研究している人が少ないんですよね。専門に教えたり、勉強したりする学部や学科がないんです。色んな授業をやりながら、「裏で」というと変ですが、副業的に研究している感じなんです。

枝元さん:まずは、今なぜ住宅政策が必要なのか、という点についてお話をお願いいたします。

平山さん: 思い返しますと1990年代の前半だったと思いますが、家がない人がどっと増えました。それから色々なこと…派遣切り、ネットカフェ難民、脱法ハウス…そういった住まいの問題がずっと続いています。が、これまではこうした問題は「雇用」と「福祉」の問題だ、という考え方が主流でした。

しかし、これらは住居の問題だと考えるべきです。政府は何もしてこなかったわけではないけれど、「働けば何とかなるでしょう」という価値観で就労支援をする、といった対策に留まっています。厚労省が家賃補助をなさっているけれど、こちらは失業している間に補助をする制度で、失業しないと利用できません。

生活保護を受給すると住宅扶助が貰えるが、これは生活保護受給までいかないと受給されません。大事なのは、雇用と福祉のオマケではなく、逆に、住宅が安定することが、雇用や福祉の基盤だと考えることです。そういう考えで、この提案書を作りました。

住まいの安定があって、初めて仕事を探すこともできるし、暮らしの再建もできる。政府だけではなく、一般の人々、研究者も含めて、住居の重要性が気づかれていない、と考えています。

なぜか安くならない日本の家賃



枝元さん: 私は居候生活を2回したことがあるんですが、住む場所がないというのは不安なことだなぁ、と思います。先に向かって建設的なことが考えられなくなりますよね。

家賃を払えるようになったけれど、本当に高くて…部屋中から1万円をかき集めて。家賃を払いにいくときに、本当に大家さんを養っているんだなぁ、と悔しい思いになったのを覚えています。年々、家賃は高くなっていますよね。一方で、食は心配になるくらい安くなっています。なぜ、住宅だけは値段が上がっているんでしょうか。

平山さん: 家賃は不思議な現象で、所得は下がっているんです。市場経済の理屈からいうと、普通は家賃が下がるはずなんです。しかも空家だらけ。でも、なぜか下がらない。

なぜかはよくわからないが、いくつか「推測」を申し上げると、ひとつは家主さんが、本当だったら空家の家賃を下げるのが合理的だが、様々なリスクを考えると空家にしておいた方がいいと考えていることが挙げられる。

またはリスクを負ってまで貸し出したりはしない、という話も推測されている。家賃の経済学ではなく、家主の社会学という研究が必要だと思われます。しかし、冒頭でも申し上げたとおり、この分野研究者が少なくて、はっきりしたことはいえない現状です。

枝元さん: 新しいビルは建っていて、古いビルは空いてますよね。でも、住めない人がいる。それは何故なんだろう、とすごく疑問に思います。

この政策提案書の「はじめに」がとてもいいと思います。所得さえあればそれで必要なものは買えるが、それは間違いだ、という指摘があります。お金さえあればなんとかなる、というのは間違いだと思っています。これ、「誰が」悪いんですか?(笑)

平山さん: 政治のレベルに暮らしの問題が出てくるようになったのは90年代だと思います。生活の問題が政治の場面に出てくるようになったのは画期的だと思うんですよ。でも、みなさんの関心は雇用と所得なんですよね。

次に、みなさんの関心は年金、介護、教育、そこで終わりなんですよ。所得さえあればなんとかなる、という考え方がある。それは間違いで、住宅は住宅として提供していかないといけない。家が安定していれば、生活の困難の防波堤になる。住まいの安定の重要性を提言したいです。

住宅は個人の問題ではない



枝元さん:所得が大切だと考えると、カツカツで働くことになりますよね。仕事がなくなったら…と色々考えてしまう。まず寝る場所があって、食べるものがなんとかなって、という基本的なところが必要だと思う。うちのネコを見ていても、そう思います(笑)最後に、今日はどのようなことに伝えたいとお考えですか?

平山さん: シナリオ全然すっ飛ばしていますが…(笑)住宅を確保するというのが「個人の問題だ」という風になっていると思うんです。日本の住宅政策は家を買ってください、買えない人は借りてください、となる。

本屋にいっても、住宅ローンの借り方、家の買い方、という話しかない。今日のシンポジウムでは、住まいの問題は、社会的な制度と政策の問題だ、ということを伝えていきたいと思います。

枝元さん:ここで、ビッグイシュー基金の水越さんに、なぜビッグイシューが関わっているのかをお話してもらおうと思います。

水越さん: 理事の水越です。販売者(ホームレス)の方々がビッグイシューを売ると、約7万円くらいの収入になります。これではアパートを借りるのは難しい。でも、家賃補助などがあれば暮らしていけるんじゃないか、という話を販売者の方とするようになった。

生活保護は11万とか12万円とか貰えるが、ギリギリにならないと住宅補助が出ないわけです。病気にならないと生活保護が貰えない。ホームレスに限らず、生活に困る方に4万円くらいの住宅手当が出る制度があってほしいな、と考え住宅政策についてやっています。

---

part2を読む