ゲリラガーデニング:地域に緑を増やす市民活動

法的に栽培権のない土地で作物を育て、地域の活性化を促進するムーブメント「ゲリラガーデニング*1」。この活動の発起人の一人、リチャード・レイノルズはロンドンの路上で初めてガーデニングをしたとき、逮捕されやしないかと不安で、暗闇で作業したという。

Goami/Shutterstock
ゲリラガーデニングを広めたリチャード・レイノルズ。ロンドン・サザーク地区にて。Roger Parkes / Alamy Stock Photo

一般的にガーデニングをすることは心身の健康によいとされているが、ガーデニング好きで知られる英国でも、8世帯に1世帯の人々が、ロンドン市内に限ってみると5世帯に1世帯が、自宅に庭やベランダがない。また、庭や耕地がない人の割合は、白人より黒人の方が4倍高く、16〜24歳の人たちは65歳以上の人たちよりも2倍以上になることが分かった(2021年度調査)。“庭なし問題”は、都市居住者、民族的マイノリティ、若者のあいだで特に顕著だ。

こういう人たちにとっては特に、ゲリラガーデニングはひとつの選択肢となるだろう。ハーブや野菜を育てて地域の人たちでシェアし合う、種子や苗木をまく、雑草を抜く、単にごみ拾いをするだけでもよい。しかしゲリラガーデナーになりたいと思うのなら、権利をしっかり理解しておくことが重要だ。ランカスター大学法律学講師ベン・メイフィールドが『The Conversation』に寄稿した記事を紹介する。

*1 「銃を花に持ち替えた闘い、植物を交えた闘い」という意味合いを込め、あえて戦闘用語である「ゲリラ」という言葉を用いているという。

ゲリラガーデナーを黙認する自治体が増えている現状

英国の都市部では、ゲリラガーデニングの候補地となるような未使用または放棄された土地の大半は、地方自治体が所有している。そうした場所としてよくあるのは、壊れた歩道、荒れ地、環状交差点の中央部分などで、その多くは一般の人が歩けるようになっているが、積極的にガーデニングするとなると不法侵入行為となるだろう。とはいえ刑法上の犯罪ではなく、民事上の不法行為となり、現時点のイギリスでは訴えられて罰金や前科がつく可能性は低い。

ゲリラガーデナーになるうえで必要な条件とは? Goami/Shutterstock

地主には自分の土地から不法侵入者を追い出す「正当行為」の行使権があるが、英国の大半の自治体は、法的措置を取る時間やお金が不足していることから、ゲリラガーデナーを問題にしてこなかった。例えば、コルチェスター自治体は、2009年に街中で放棄された植物コンテナに花を再生させた環境アクティビスト「ヒューマンシュラブ」(ヒトのかたちをした低木)の身元を突き止めなかった。そのアクティビストは2015年に再来し、自治体に植物の種をプレゼントした。英国の他の地域でも、ゲリラガーデナーの取り組みは、除々にではあるが自治体に受け入れられている。グレーター・マンチェスター地域のソルフォードでは、空き地で植物を育てるには、事前に申請して許可を得ることを要件としているが、不法に栽培していても自治体が介入しない場合が多い。

利用可能なスペースがたくさんあり、積極的なメンテナンスもされていない現状を踏まえると、人はどこでも好きなところでガーデニングしてよいとの暗黙の了解があるようだ。自治体にとってはメンテナンスの時間やお金を節約できるという利点にもなる。とはいえ、ゲリラガーデニングが歓迎されない地域もあり、夜間のガーデニングも警察から武器を持っていると誤解されるおそれがあるので注意が必要だ。

ゲリラガーデニング実践で大切なこと

自生種を植えて花粉を運ぶ動植物に役立てたり、放棄地を整備して安全な場所をつくったりと、ゲリラガーデニングにもいろんな種類がある。最も簡単なのは種をまくことだ。土・水・肥料に植物の種を入れて団子状に丸めた「シードボム(種爆弾の意)」を配布する環境プロジェクトもある。

シードボム(種爆弾)を配布するプロジェクトも。Miriam Doerr Martin Frommherz/Shutterstock

まわりの植物や野生生物を守るにはどんな種類の種子を植えるのが適切なのか、よく検討することが大切だ。人間にとって魅力的な種が、必ずしも野生生物にとってもよいとはかぎらない。種によっては、その土地の植物を凌駕し、絶滅をもたらすおそれもある。サワギク、タデ、ヒマラヤバルサムなど有害で侵食性の種を植えることは法律で禁じられている。(SNSで有志を募り、有害な侵食性植物を引き抜く活動を組織したゲリラガーデナーたちもいる。)

ゲリラガーデニングには様々なやり方があり、うまくやれば、地域の人々や環境に大きなメリットをもたらすことができる。だが、決して環境を害してはならず、まわりの人々が楽しんでいるものを台無しにしてはならない。ときには、雑草や手付かずの自然にも環境的価値があること、他の人たちとの共有スペースであること、そして、その地域の野生生物を大切に守ることは忘れてはならない。

参考:『ゲリラガーデニング:境界なき庭づくりのためのハンドブック』リチャード・レイノルズ著

リチャード・レイノルズによるTEDトーク(英語)

著者 Ben Mayfield

Lecturer in Law, Lancaster University

※本記事は『The Conversation』掲載記事(2023年10月4日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。

The Conversation

参考映画

都市を耕す エディブルシティ
https://www.cinemo.info/87m

ビッグイシュー・オンラインのサポーターになってくださいませんか?

ビッグイシューの活動の認知・理解を広めるためのWebメディア「ビッグイシュー・オンライン」。
提携している国際ストリートペーパー(INSP)や『The Conversation』の記事を翻訳してお伝えしています。より多くの記事を翻訳してお伝えしたく、月々500円からの「オンラインサポーター」を募集しています。

募集概要はこちら