(2012年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 190号より)
東電・加害者が罰せられる社会をつくる
告訴の重要性を話す河合弁護士
「被害と加害は明確なのに、加害者が誰一人法的責任を問われていないのはおかしい。刑事告訴で一人ひとりの被害を明らかにし、責任を明確にする」
福島県いわき市で3月16日夕方、会合が開かれ、出席した約70人により東京電力福島第一原発事故の責任者を刑事告訴する「福島原発告訴団」が結成された。
団長に田村市船引町の武藤類子さん(ハイロアクション福島原発40周年記念実行委員会)を選任。担当弁護士で、東京電力株主代表訴訟代理人も務める河合弘之弁護士と、保田行雄弁護士も出席して、告訴状案や今後の具体的な手続きを説明した。今後、被災者の告訴団への参加を広く求め、6月には福島地検に告訴状を提出する予定。
弁護団は、2006年、原子力安全委員会が原発耐震審査指針を改定したが、具体的な津波防護策として専門家が指摘した最新の知見を同指針に盛り込まなかったこと、2010年に同委員会が津波を安全対策の考慮に入れるよう定めた「手引き」を策定したのに、東電は津波対策を怠って、未然に防げた大事故を引き起こした――などの過失を指摘。
原子力安全保安院長などは業務上過失致死傷罪、東電や関係する責任者は公害犯罪処罰法違反の疑いがあるとした。告訴では被災者が被害の状況をまとめた陳述書を提出し、被害状況を明らかにする。
4月6日には郡山市で説明会が開かれた。
「悪いことをしたら個人や企業が罰せられるんだという怒りを社会に強く認識してもらうことが必要。被災者が心の底から怒って、原因をつくった東電の役員や官僚、学者たちを罰してくれと強く言い続けることが重要」と河合弁護士。今後、県内をはじめ、山形、新潟、北海道など、被災者の避難先でも説明会を開く。
団長の武藤さんは「事故から1年が経ち、県民にはあきらめの気持ちも出てきている。しかし一人ひとりの市民があきらめることなく声をあげることが、自分たちがこの日本、この社会に参加し、社会をつくっていくということにつながる。それが最も大切なことだと思う」と話している。
(文と写真 藍原寛子)