(2012年7月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 195号より)
「刑事裁判で被害を明らかにして」福島原発告訴団が東電役員らを刑事告訴
(福島地検に告訴状を提出する告訴団)
6月11日、本誌190号(5月1日発行)でもレポートした福島原発告訴団の1324人が、東電役員らを業務上過失致死傷と公害犯罪処罰法違反などの疑いで刑事告訴・告発した。
告訴されたのは、東京電力の会長勝俣恒久氏、同社長の西澤俊夫氏ら役員、原子力安全委員会委員長班目春樹氏ら委員、原子力委員会の近藤駿介氏、原子力安全保安院長の寺坂信昭氏、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの山下俊一氏ら総勢33人と、東京電力だ(役職名は告訴当日)。
当日は提出に当たり、約200人の告訴・告発人、支援者らが駆けつけ、集会が開かれた。
武藤類子団長は「(被告訴人が)この責任を取らなければ、福島の復興はありえない。今、県民は対立関係をつくらされているが、この告訴で私たちが力を取り戻せる」と述べた。
弁護団長で東京電力株主代表訴訟の弁護団長も務める河合弘之弁護士は、「東電の役員は事故後、誰も責任を取って辞めていないが、社会的に許されない。刑事責任を追及してそれを正し、本当の意味でやり直しをはかるのがこの告訴だ」と話した。
告訴状によると、被告訴人・企業らは「地震発生頻発国である日本で超危険物の原発を運営するに当たり、炉心損傷や溶融などの重大事故の発生を予防し、また、重大事故が発生した場合の被害の拡大を最小限にとどめるために適切な安全対策を講じる注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、その結果、死亡、傷害の被害を負わせた」(業務上過失致死傷の疑い)ことや、「有害物質を排出し、福島第一原発から少なくとも半径50キロ以内の地域に拡散をさせ、告訴人らに傷害を負わせた」(公害罪)疑いがあるなどとした。
被害者は、「告訴・告発人を含む福島県民多数」、亡くなったり大量被曝をした大熊町の双葉病院の患者50人、自殺した川俣町の主婦や相馬市の酪農家男性、けがをした東電社員や協力会社の社員、自衛隊員ら。
福島地検は「現時点では受理には至っておらず、真摯に検討して(受理かどうか)結論を出す」とした。
告訴団は今後、県外の人を加えた第二陣、第三陣の告訴を予定している。
(文と写真 藍原寛子)