7月に子どもが生まれ、仕事に身が入りません [ホームレス人生相談]

Q
7月に子どもが生まれ、価値観がガラリとかわりました。今までは仕事中心で徹夜、土日出勤もザラでした。とにかく家に飛んで帰って子どもの顔を見たくて、こんなことしてらんない…という心境です。妻は専業主婦だし、子どものためにも、稼がないといけないんですけど、仕事に身が入りません。みなさんはどうなんでしょう? おじさんの子育て経験なんかを聞かせてもらえますか。 (26歳/男性/会社員)
A

子どもがかわいいのは人情ですよ。でもね、仕事は仕事、家庭は家庭って割り切らないと。この人の子どもは今、泣くのが仕事。泣いて手足を動かして筋肉が育っていく。もう少したってヨチヨチ歩き出して、言葉を発するようになるころが、一番かわいくなりますよ。小中学生になったら、親を煙たがりはじめるけど、そのかわり成人したら、一緒に飲み屋へ行ける。子どもというのは、楽しいこととそうでないことが半分半分。

私にはね3人の子どもがいますけど、全部不肖の子ですよ。それなりにお金もかけたけれども、80手前になろうという私が子どもの尻ぬぐいをやっているんですから…。私はずっと職人で建築畑を歩いてきて、2回も心筋梗塞で倒れてもなお、こうやって働こうという意欲がある。うちの子どもにはそういう気持ちが欠如している。要は本人次第なんですよ。

この子は26歳か。若いのに子煩悩なんて、珍しいね。自分が遊びたいって年ごろでしょう。私のこのころといったら、戦後でしょ。何もなかった。おかげで今はどんな粗食でも耐えられるし、当時と比べたら、大抵のことはつらいとは思えない。それに私には、戦後の日本を、焼け野原から再生させたという自負がある。外務省や最高裁判所、ここでは言えないところをこの手で作ったんですから。

むろん、辛酸もなめてきました。男はワガママですから、遊び一本でいく人も、家庭に打ち込む人もいるだろうけど、私の場合は仕事。

この人も、子どもが趣味なのも結構だけど、家庭の延長が仕事、仕事の延長が家庭であっても困る。そんなに子どもが好きだったら、そのうち次の子もできるでしょう。

30歳を過ぎてからの子どもはまたかわいいし、孫っていうのはもうそれ以上の存在。冒頭でお話した状態ですから、孫といっても私と亡くなった家内が引き取って育てたんです。今じゃ所帯を持っているから、そうちょくちょく会えないけれど、その時はうれしいね。私もそんなにしゃべる方じゃないし、何を話すってことはないんだけど、元気な顔を見られたらそれでいい。そう思うのは、こんな年だからでしょうか。

子どもをかわいがるのも大切だけど、責任を取るというのも親の役割。仕事はおろそかにしないように、頑張ってください。

(東京/M)

(THE BIG ISSUE JAPAN 82号より)