ここ数年、人材の流出が止まらない台湾で、ついに最高学術研究機関である中央研究院の翁啓恵院長が経済界、メディアなどの代表者と連名で「人材宣言」を発表し、政府に人材確保の対策を講じるよう提言した。
翁院長によると、台湾は既に人材の輸出国になっており、国内の人材をとどめるとともに国外の優秀な人材を入れなければ、10年以内に人材が枯渇し、国際競争力を失うという。
流出の原因として、硬直した給与体系、取得した技術と雇用需要のミスマッチなどをあげている。国内に限界を感じた優秀な人材は中国やシンガポールに高い報酬で引き抜かれ、毎年2〜3万人が流出しているという。一方、外国人就労者は49万人で、そのうちホワイトカラーは2万人しかいない。
「人材宣言」を受け、政府は人材の育成、確保のために4年間で600億元(1600億円)を投じると表明した。それに対し、人材流出の要因は経済の低迷と好転の兆しがないことだと考え、効果を疑問視する声もある。
(森若裕子/参照:亜洲週刊、経済日報、聯合報)
(2011年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第176号より)