(2014年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 230号より)
さらなる運転に数千億円。「もんじゅ」研究計画
昨年の12月7日、「もんじゅを廃炉へ! 全国集会」が福井県敦賀市で開催された。雨模様のこの日、対岸の白木浜には全国からおよそ1000人が駆けつけ、同原子炉を所有する日本原子力研究開発機構(以下、原研機構)に対して廃炉にすることを求めた。
集会に先立って、福井県と敦賀市、ならびに滋賀県と岐阜県に、実効性ある防災対策が策定できないかぎり「もんじゅ」の運転再開に同意しないことを求めた。
主催団体である「原子力発電に反対する福井県民会議」は1995年の事故以来、毎年集会を開催してきた。同年40パーセント出力で試験運転を実施していた最中にナトリウム漏えい火災事故を起こして以来、「もんじゅ」はまともに動いたことがない。
1万件を超える点検もれにより運転再開準備の停止命令を原子力規制委員会から受けたのち、「根本原因分析」を行い、原研機構改革案をまとめて公表したのが昨年9月。
同様の作業は過去に6回もあったが、体質は改まらなかった。また同じ日には「もんじゅ」研究計画が文部科学省から公表された。6年ほど運転して成果をまとめるという。民主党時代には成果をまとめて研究終了となっていたが、安倍政権はその先は後に検討することとしている。
「もんじゅ」は高速増殖炉の開発を目指すための原型となる原子炉として開発された。増殖炉は消費する以上の燃料を作り出しながら運転できる「夢の原子炉」とされた。開発先進国は膨大な費用がかかること、安全上に問題があること、社会的な合意が得られないことなどの理由ですでに撤退している。
「もんじゅ」も増殖炉の位置から燃料を燃やすだけの原子炉に格下げされた。松浦祥次郎原研機構長は12月3日に開催された核セキュリティに関する国際フォーラムの挨拶で「高速原型炉もんじゅ」と表現した。日本も同じ道を歩んでいるようだ。
「もんじゅ」の開発にはこれまで2兆円ほど費やされてきた。わずか6年程度の運転のためにさらに数千億円が必要になろう。福島事故で安全上の対策が必要となるからだ。廃炉にすれば無駄遣いせずにすむのに、それができないのは責任をとらない官僚たちのせいか。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)