(2014年9月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 248号より)
「原爆」製造を加速する 日本の原発輸出
今年5月に首相の座についたインドのナレンドラ・モディ首相が来日した。初来日で、安倍首相と会談し、経済界ともビッグな交流をもち、積極的な経済交流を訴えた短い滞在を終えて9月3日に帰国した。
この時、交渉継続中の「日印原子力協力協定」が締結されるのではないかと懸念した人たちが、世界に訴えて協定反対の国際アピールを発表した。22ヵ国から355団体と個人2136人の署名が集まった。
原子力機器を輸出する際には、原爆の開発に利用しないと約束する協定が欠かせない。インドは核不拡散条約の締結を拒否して原爆開発を進めている。原発と核燃料を輸入することで、インド国内で産出するウランを原爆開発に使用できるようになる。これを懸念する人たちが国際アピールを呼びかけたのだった。今回も協定締結には至らなかった。
安倍政権は原子力協力協定の締結に積極的だ。日本がこれまでに締結したのは12ヵ国、さらに交渉中が6ヵ国だ。国内での原発建設需要が頭打ちになる一方で、中東やアジア地域、特にインドと中国で数十基の建設計画が発表されている。
メーカー側も受注を狙ってしのぎを削っている。東芝は米国の企業ウェスチングハウスを買収、日立がGEと合併、三菱はフランスのアレバ社と子会社設立。それぞれ原発市場に参入している。これらにロシアと韓国の原子力産業が加わっている。
安倍政権は福島原発事故のあと再稼働のみならず、輸出にいっそう積極的になっている。世界を回って原発アピール。少しでも有利になるように、新幹線などとの抱き合わせ商戦も繰り広げている。国内の原子力産業を没落させないためだろう。他方、2基の輸出契約がほぼ確実だったベトナムでは、福島原発事故の影響で建設が延期となった。
期待通りに輸出できるとは到底考えられないが、仮にそうなれば、どの国も原爆に関連する技術を手に入れることになり、核拡散が加速する。広島、長崎、そして福島の経験をもつ国として、それは許されない。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
—-