(2014年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 230号より)
被災地「県民の声を無視するな」 特定秘密保護法 強行採決で県民の怒りやまず
(県民代表全員が法案に反対を表明した公聴会(2013年11月25日 福島市))
2013年12月6日深夜、永田町の国会正門前周辺で、多くの人々が反対のシュプレヒコールを上げるなか、参議院で特定秘密保護法が強行採決され、与党の賛成多数で可決、成立した。 これに先立ち、11月25日には福島市で同法案を審議する衆院・国家安全保障特別委員会による地方公聴会が開かれた。県民代表の意見陳述者7人全員が反対や慎重、廃案を求めたが、そうした被災地の意見を反映することなく、強行採決・可決へと突き進んだ。可決後も、強行採決に対する不満や批判はやまない。
原発技術者として米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で働いた後、東北エンタープライズ社(福島県富岡町/現在はいわき市に仮社屋)を起こした名嘉幸照さんは、「福島第一原発事故が起きたのも、現場の労働者に対して『原発の安全性について話してはいけない』というプレッシャーがかかり、萎縮が起きたためだ。法施行により、各電力会社は労働者に誓約書を書かせて、ますます情報を外部に出さないようにするだろうが、それは安全面からも、労働者を強制的にコントロールするという面からも、大変なマイナスだ」と問題を指摘。そして「このような状況を次の世代に渡すのは忍びない」と落胆を隠さない。
意見陳述者で、「権力は腐敗する。法案は時計の針を戻すものだ。廃案を求める」と訴えたのは、桜の聖母短期大学(福島市)の教授・二瓶由美子さん。「(公聴会は)最初からアリバイづくりだと思っていた。それでも、公の場で議論しないで秘密裏に進めていくようなやり方で大事なことを決めていっていいとは思わない。このような民主主義でいいのかと思い、当事者として意見を述べた」。そして「(政府や与党がいう)『原発事故に対する情報は公開。(原発の)テロ対策に対するものは特定秘密』といっても、その線引きは誰がどのようにするのか、誰もが疑問に思っている。だが法律は永久ではなく、政権交代で法律を廃止することも可能だ。これからが重要。絶対にあきらめないことが大切」と話す。
「原発事故で何が起きていたのか、事実を十分に知りたい」と願う福島県民。その前には厚い壁が立ちはだかっているが、決してあきらめない人々も確かにいる。
(文と写真 藍原寛子)