PDFで公開済みの『若者政策提案書』の本文を、ブログ形式で閲覧できるよう編集いたしました。日本で欠如する「若者」世代の政策的支援のあり方を、ぜひ私たちと一緒に考えましょう。すべての関連記事は「
若者が学校から離れ社会に出ていくとき、何が必要なのか?
「学校」から「企業」へつながっていた太いレールは崩壊した。いまや、大企業の正社員に残された恩恵に与ることのできる若者は、経済的に豊かで教育機会にも恵まれた家庭の子どもたちだけだろう。社会的不利益のもとに育つ子どもたちは「自己責任」のもと、「負」からの脱却を望めない。
若者の状態は年齢や状況によって変化する。学齢期には、ネグレクトされる児童や、発達課題を理由に孤立する子どもがいる。過酷な就職活動がひきこもりの原因になることもあれば、就職できても過労状態になり心身に疾患を抱える若者もいる。非正規を転々としホームレス状態に陥る若者もいる。
その一方で、状態が固定化しない若者は、支援対象者になりづらい。現行の障害福祉サービスは症状(障害)が固定化しなければ認定されず、制度も利用できない。
若者が学校から離れ社会に出ていくとき、職業的自立を目指すとき、今、社会に必要なものはなにかを提案したい。
(1) 学校から社会へのつなぎを強化する
義務教育を終えた15歳以上の多くは学校に所属し、教師など多くの大人が関わるため、リスクを発見・捕捉するのに最適の場である。同時に社会人となるための進路選択・決定の大切な準備期間でもある。
多様な若者に合わせた支援と進路保障のため、福祉・教育・労働の専門家を外部サポーターとして置き、資源ネットワークのプラットフォームとして機能するよう、地域に開かれた学校づくりが必要である。
(2) 若者の多様な社会参画の推進
さまざまな困難を抱える若者に共通するのは社会的に孤立していることである。学校で、家庭で、就職において孤立している若者を放置しないという意識を共有し、一人ひとりの若者を“社会”とつなぐ環境をつくりたい。若者の自立支援は就労支援だけに限ってはならない。
居場所での仲間づくり、アートや音楽、ボランティア活動、中間的就労その他の多様な人との出会いと活動の場をつくり、若者をそこにつなげる人々がいる環境づくりをめざしたい。また、若者が逆境を変革する主体となるようなエンパワメントを進めたい。
(3) ユースセンター(場)とユースパーソナルサポーター(人)の設置・常設
すべての若者の成長・発達・自立を社会が保障するという基本理念を掲げ、すべての若者に対して必要なサービスを提供する体制を整備する。その支援拠点としてユースセンターを開設し、支援の担い手としてユースパーソナルサポーターを設置する。
ユースセンターは若者たちの活動の場であるとともに、困難な環境や多様なニーズを持つ若者の生活・学習・進路といった成長・発達を保障し、若者が社会に参加し、発言し、行動する拠点とする。とくに教育行政から外れる15歳から、職業的自立を果たすと考えられる25歳までは重要である。
ユースパーソナルサポーターは、若者の活動を支え支援も担うだけでなく、あらゆる地域資源、行政窓口はもちろん、学校、訓練機関、福祉事業所や地域企業などとの連携を担う役割として位置付ける。
また、若者には特有の情報ニーズがある。例えば、学校、就職、職業訓練、性や心身の健康や障害、お金、住宅、レジャー、婚活、家族や人間関係、法律などがある。インターネットは便利だが、危険な情報が氾濫している。安全で正しい情報を提供し、相談にも乗れる場所と機能の必要性が高まるだろう。
(4) 自治体に「若者担当窓口」の設置
キャリアブリッジで作成している、大阪府・豊中市の社会資源マップ。赤(企業)、青(医療福祉機関)、緑(就労支援機関)など、地域資源をマッピングしている。
若者を制度横断的に支援するための社会サービスづくりも不可欠となる。従前のターゲット型サービス・縦割りシステムではなく、すべての若者のニーズを把握し、とくに支援を必要とする若者に責任をもつ部所を設け、若者の課題に応えることが必要である。
事例研究:大阪府豊中市の取り組み
これまで見えづらかった青少年の課題がここ数年の取り組みで明らかになった。そこで早期解決のために行政機関を横串で刺し包括的支援を可能にしようと、市民協働部・教育委員会(青少年育成・学校)においては若者担当主幹を置き、子ども未来部には子ども相談課を設置する予定で議論が進んでいる。
(5) 若者支援の専門職が活躍できる場を広げる
支援を必要とする若者の多様なニーズに対応して若者支援を担う人々が増加している。その多くがNPOなど民間団体である。
施策の立案や計画策定は行政の役割だが、実際の支援に関しては、地域の民間団体のほうが個別的で多様なニーズに沿った支援策を立てやすい。しかも、ニーズのある若者と一緒になって方策を立てることができるという長所がある。力量のある支援専門職が豊富であるだけ若者の社会環境はよくなる。
しかし、支援の職に就く人々の社会的・職業的評価は確立しているとはいえない。処遇の点でも恵まれているとはいえない段階で、改善に取り組む必要がある。
(6) 若者支援を地域のインフラに:市民相互扶助による若者支援の活性化
困難を抱える若者を早期に発見し、継続的にサポートする社会資源を増やし、相互に連携する仕組みが必要である。若者支援が地域のインフラとなることをめざすべきである。
事例研究:NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡
地域の「おせっかいおじさん・おばさん」が、就職できず逡巡している若者が働けるように1人ずつの伴走型支援をする団体。市民がもっている利用可能な人的ネットワークを駆使すれば1人の若者の職場くらい見つけられるだろうというスタンスに立っている。市民が若者に手を差し伸べれば、就職できず社会的に孤立する若者を減らすことができることを静岡方式は示している。
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編集部より:随時記事を追加していきます。記事の一覧は熱心な先生であるほど忙しい。子ども・若者のサポートは学校を超えた「地域連携」が重要(白水崇真子) : BIG ISSUE ONLINE