米国で銃がらみの暴力事件が頻発していることに思い悩んだナタリー・バクスターは、抗議の手段として縫い針を選択した。布で銃のレプリカを作ることで銃規制の議論が深まることを期待する。
文:サム・フリード
最近のマスコミ報道により、人々の関心は増加の一途にある銃乱射事件に向き、銃規制政策に関する対話も盛り上がっている。繰り返し勃発する破壊的行為と遅々として進まない議会審議の連鎖 – その中で行動することに無力さを感じたナタリー・バクスターは、彼女オリジナルの銃を作ることにはけ口を見出した。
無力感に駆られるのです。銃乱射事件のニュースをこうも頻繁に聞かされると心が痛みます。多くの国民も同じように感じていると思います。すべきではないと分かってるのですが、それぞれの事件にまつわる報道を追っかけてしまうのです。
そんな彼女が考えた解決策が「縫い続ける」ことだ。
「OK-47」は、布を縫って中に詰め物をしたシリーズだ。その多くは、米国内で起きた近年の銃乱射事件で実際に使われた銃をモデルにしている。2015年、バクスターは国内で発生した銃乱射事件で使われたさまざまな種類の銃を模した100丁以上の銃を縫ったが、どれだけ早く縫おうとも実際に発生した372件の銃乱射事件に追いつくことはできなかったという。
“OK-47”
ニューヨーク・シティのガーメント地区(*1)で入手した布や同居人が持っていたグッドウィル(Goodwill *2)の生地を使い、武器が持つ暴力的なイメージをやわらかく明るい色目のニセモノに仕立てる。
“Automatic-wedding”
現在はブルックリン在住だが、育ちはケンタッキー州レキシントン。そこで銃と縫い物の両文化に触れたという。キルトの縫い方は若い頃、自らも銃を所有するアパラチア人の祖母から教わった。
1 ガーメント地区:洋服の生地、ボタンなどアパレル関係の卸売り問屋が集まっているエリア。
2 グッドウィル:アメリカのリサイクルショップ。全米に3000店舗以上ある。
従来、権力と男らしさの象徴と見なされてきた銃のイメージを、歴史的に女性的とされてきた工芸技術である縫物を用いて、脅威でない、機能しない銃を創作することでくつがえそうとしているのだ。
“TCC_Warm Gun”
“baby white”
彼女が作る銃は単なる縫いぐるみではない。彼女はこの作品がきっかけとなって、暴力、ジェンダー、ひいては人と人の関わり合い方について自由な議論が深まることを望む。
銃所持の賛成派・反対派と簡単に割り切れる問題ではありません。皆さん、異なる背景、考え方、意見を持ってアートを鑑賞し、それぞれの解釈で意味を見出します。私のこの親しみやすい作品によって、人々が銃規制、銃による暴力、ジェンダーの概念について考える機会になればと思っています。
解釈がひとつだけでない、「ああ、なるほど!」と感じられるアート作品が個人的にも好きです。銃規制の議論になると多くのアメリカ人は感情的になります。何をすべきか、何をすべきでないか、それぞれが独自の意見を持っていますから。
同じように、バクスターは自身の作品も鑑賞者の好きなように解釈してほしいと考えている。
“banana repblic”
“besty”
“church clothes”
“Cute Shoot”
“flower power”
“ghost gun”
“happy place”
その他ナタリー・バクスターの作品 はこちらから
nataliebaxter.com
The Curbside Chronicleのご厚意による / INSP.ngo
翻訳監修:西川由紀子
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