元スパイス・ガールズのメラニー・チズム、新曲で人間関係の破綻、母であること、いじめを歌う-「やっとソロ活動で一人前になれた」

スパイス・ガールズの元メンバー、メラニー・チズムが、ビッグイシュー英国版とのインタビューで、彼女の新たな一面について語った。最新アルバムに歌われているように、母であること、いじめ、うつ病がテーマとなった。今回で3度目となるインタビューについて「ビッグイシューの取材はいつでもうれしい」と言った。

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(ライター:アドリアン・ロブ)

昔の自分を振り返るのは妙な気分。自分のことというより、よく知ってる誰か他の人のことみたいなの。

1999年発行の本誌ページを、おそるおそるめくるメラニー・チズム。彼女が表紙を飾った創刊8年記念号だ。スパイス・ガールズは公式には解散宣言していないものの、インタビューでの彼女は、自身を世界的スターにしたグループと距離を置きたがった。

変よね。こんなかたちで昔の自分の姿を見る人は多くないとは思うけど、なんだか恥ずかしいわ。

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メルCが初めてビッグイシューUKのインタビューを受けたのは1999年。「自分自身の記事を読むのは妙な感じ。まるで、とてもよく知っている誰かを見ているような感覚よ。でもそれが自分とは思えない、そんな感じ」と彼女は語るCredit: Courtesy of The Big Issue UK

1時間以上に及んだインタビューのあいだ、彼女は、20年間あらゆる発言を事細かに注目されてきたせいか、慎重に言葉を選びながら正確を期す話し方をしていたかと思うと、思いのままに自然に話すときもあった。早口で自由にしゃべりだすと、訛りが強くなった。

彼女はよく笑い、音楽業界に君臨する存在にも関わらず、とても謙虚だ。最新アルバム「Version of Me」の3年に渡る製作期間については、自嘲気味に話した。

「わたしが仕事としていること、と言うよりもむしろ、かつては仕事にしていたけど今は趣味程度にやっていることは常に変化していて、それが素晴らしいところなの。」そう言ってから、アルバム製作がいかに楽しかったか、なぜならその間、娘を毎日、学校まで送ることができ、自分のベッドで寝ることができたからと説明してくれた。長期間のスタジオ作業を終えた今は、ツアーが待ち遠しいと言う。
新曲では感情をむき出しに、人間関係の破綻、母であること、いじめを歌っている。

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最新アルバムはとても感傷的だと彼女は認めた。壊れてしまった人間関係や母であること、いじめなどが歌われている。Credit: Courtesy of The Big Issue UK

だって私はもう42才よ。今回で6枚目か7枚目のアルバムだし(カバーアルバムもカウントすべきなのかな?)、わたし自身のライフイベントにも大いに心を動かされてきたわ。

年を取ることにはネガティブな見方が強く、そのほとんどは肉体的なことよね。でも大きなメリットもあって、そのひとつが他人の意見を気にしなくなるってこと。もう何も恐くない。これが私の現実だもの。

タイトル曲は、大人になってから経験したいじめをもとに書いた。大人のいじめはあまり話題にならないけど、よくあることなのだと言う。

いじめはあちこちで起こっているわ。この曲では、いじめがどれほどの影響を心が弱っている人に与えるのか、いかに逃れられないものなのかを歌った。人格形成にも影響するし、相手から植え付けられた疑い、不安、恐怖はずっと拭いきれないものよ。たとえ、その人物との関わりがなくなったとしてもね。

かつて語ってくれた心の健康について、経過はまずまずだと言う。「精神面のことは何もしゃべらないでおこうと思った時期もあったけど、ビッグイシューの取材はいつでもうれしいから、オープンに話したいわ。でも、あらゆる人が取り上げるから、かなりおかしな偏見はつきものだけどね。」

鬱だったことを話したくない日もある。話題にすること自体、気がめいることだもの。でも、とても大切なテーマだわ。結局は、人生の浮き沈みをあまり気にしすぎるなってことよね。

体を動かすことでとても救われ、頭もすっきりしたわ。わたしはどんな病気でも、従来の医療に頼らないようにしてるんだけど、そうできない時もあるわ。常に情報は溢れ返っているもの。おもしろいのは、消化器官の健康がいかに心の健康にも影響するかってこと。おなかでは大量のセロトニンが作られているからね。私たちは、日々口にするものでできているのよ。

最新アルバムのタイトル「Version of Me」はぴったりに思える。彼女は今の自分をどう見ているのだろうか? 我々は今の彼女をどう捉えたらよいのだろうか?

今の状態が続いてくれたらと思う。これまでの人生、たくさんの騒動があったわ。人生は浮き沈みの連続だもの。トラブルも次々と起こる。だけど、今は最適な場所にいるって感じてる。母親になって7年、家族との生活にとても満足している。16才でイギリス北部の親元を離れたけど、母親になるってことは新たに自分のルーツを築くってことでしょ?

人生ではじめて「仕事と生活のバランス」を見つけられたとも言う。

20代前半であんな経験をしたから、この世界になかなか自分の居場所が見つけられなかった。人気絶頂のポップ・グループにいると、いつだって仕事に追われていたもの。

野心に燃えて、一心不乱だったわ。だからこそ成功できたんだとは思うけど、若い頃には思いもしなかった終わりが来てみたら、バラバラになったかけらを拾い上げなくちゃならないのよ。

幻想の真っただ中にいたのよね。休みもないから、ソーシャルライフに割ける時間もなかった。仕事ばかりで、同世代の人とは真逆の生活をしてた。だから今、それを埋め合わせてるのよ!

カナダ人シンガー、ブライアン・アダムス(彼もビッグイシューの良き友)とのデュエット曲「When You’re Gone」をリリースし、シングルチャートに何ヶ月もランクインした時、彼女は若干24才だったが、すでに数千万枚のCD売り上げを達成していた。

2007-8年の再結成世界ツアー、2012年ロンドンオリンピック閉会式でのメンバー5人揃っての最後のパフォーマンスには参加したものの、チズムはソロ活動に主軸を置いてきた。
「スパイス・ガールズ結成が1994年。『Wannabe』リリースが1996年7月、ジェリが脱退したのが1998年。だから、クレイジーな日々はたった2年だったのよ。」文化現象を巻き起こした当時をあっさりまとめた。

やっとソロ活動で一人前になれた気がしてる。うん、いい表現だわ。ソロ活動を始めた時は、よちよち歩きの子どもみたいだった。向こう見ずなやつって言った方がぴったりかな。スパイス・ガールズで過ごした後で、私はひとりなの!って暴れてた。

メンバーと過ごした時間を軽視してるわけじゃない。ただ、何かの一部として見られることにうんざりで、すごくいらいらしてた。『私はスポーティー・スパイス(グループでの彼女の愛称)なだけじゃないの!』ってね。

メンバーの3人(ジェリ・ハリウェル、エマ・バントン、メラニー・ブラウン)がスパイス・ガールズとして新曲とツアーを準備中であることについては、質問をさえぎって言葉を選びながら話した。

ご存知のように、メンバー3人が『Wannabe』リリースから20周年を記念した活動を計画しているわ。だけど、私は手を引いたの。今は違うなって思ったからよ。

スパイス・ガールズを非難してるわけじゃない。私は今も彼女たちが大好きだし、とても誇りに思ってるわ。メンバーのことはいつも気に掛けてる。だから、私がスパイス・ガールズを見捨てたんだって批判されるのは、とても心外だわ。

背を向けているんじゃなく、スパイス・ガールズを守りたいからこその、私なりの愛情表現なの。ちゃんと根拠があるのよ。

グループのレガシーを守ること、それこそが彼女にとっては気高い行為なのだ。リトル・ミックスなど最近のガールズバンドを見ていると母親のような気分になるから、自分が仕事を始めたばかりの頃に、ライオネル・リッチーやセリーヌ・ディオンなどの大先輩から頂戴したアドバイスを彼女たちに伝えていきたいと言う。レガシーについて言うと、大衆向けフェミニズムへの関心が高まる昨今、スパイス・ガールズが果たす役割を考えてしまう。

スパイス・ガールズをとても誇りに思ってるわ。時が経つほど、そして、もはや若くないファンに会うとその思いは強くなるわ。彼女たちは、今や仕事や家庭で活躍している立派な女性。そんな女性たちが、自分がどれほどのファンだったか、どんな影響を受けてきたかを話してくれるの。そこに関われたことは、とても光栄だわ。

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スパイスガールズだった時から過ぎ去った日々を振り返りながら、今や仕事や家庭で活躍している立派な女性たちが、自分がどれほどのファンだったか、どんな影響を受けてきたかを伝えてくれる、とメルCはいう。「そこに関われたことは、とても光栄だわ」。Credit: Courtesy of The Big Issue UK

スパイス・ガールズだけじゃないけど、わたしたちの活動を通して主張したかったことがあって、それは音楽業界がいかに男社会なのかってこと。レコード会社のディレクターから作曲家まで、男性ばかりだなって思ってたの。それは今でも変わらない。過去20年間、一緒に仕事した作曲家は、男性50人以上に対し女性は2、3人だけだもの。私のバンドメンバーも全員男性だし。

あなたはいい上司ですか? と聞くと、「ほとんどのバンドメンバーとは長い付き合いだから、責任を感じている」と言った。「私はあくせくしていないし、むやみに騒ぎ立てたりもしない。いい上司だと思うわ。いつも全員分おごってあげてるしね!」

Courtesy of INSP.ngo / The Big Issue UK










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