「いったんホームレス状態に陥ると、働きたいと思っても雇ってもらいづらい」という事実
“「ホームレス」は「家がない」という状態を示す用語であり、その人となりを表すものではないのですが、ホームレス状態に一度陥ると保証人や住所がないという理由で、バイトですら働きたくても雇用されづらい現実があるんです”とスタッフの吉田は言います。
そのため、ビッグイシュー日本ではホームレス状態の人だけが路上で販売できる雑誌として事業を展開、350円の雑誌が1冊売れると180円が販売者の収入になること、雑誌は世界各国のストリートペーパーのネットワークで記事を共有し合っていることなどを説明しました。
また、格差社会が進みすぎると社会のどの層にもストレスがかかって望ましくない状態に陥るリスクについても解説していきます。
参考動画:ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会
人づきあいが苦手で大学でいじめに遭い、中退。
最初の仕事はリストラに遭い、次の仕事では部下をリストラしろと言われ…
スタッフの解説に続いて、美馬さんの体験談。
徳島県出身の美馬さんは、高校卒業後、大学に通うために大阪へ出て来るも、人とのコミュニケーションが苦手で入学するなり寮でいじめに遭ってしまいます。単位も思うように取れず大学4年で中退することになってしまいました。
その後故郷に帰り、情報処理の勉強など様々な道を模索したのち、大型釣具店へ就職。仲間もいる充実した職場だったのですが、阪神・淡路大震災を境に売上が落ち、リストラの波に遭ってしまいます。
次に転職した職場では、逆に部下をリストラするように命令されます。しかしどうしても部下を辞めさせることができず、自分が辞めることを決意。
その後『俺はここで本当に役に立てているのかな』と不安に思いながら様々な仕事を転々としているうちに、日雇いの仕事を仲介する“手配師”に声を掛けられ、日雇いの土木の仕事をすることになりました。
しかし、その仕事も減っていき、15年ほど前に路上へ出ることになってしまったと話します。
そんな美馬さんに、学生の皆さんからいろんな質問が寄せられました。
Q:販売をされていて、よかったことを教えてください。
― 人とのつながりができたことです。
たまにいただける励ましの言葉が嬉しいですね。今までの仕事ではなかった経験です。
Q:販売をされていて、辛かったことは?
― 通行人からくさい!と大声で言われたり、唾をかけられたりすると辛いです。
でも今日はきっといいことあると思うようにしています。
Q:昔に戻れるとして「リストラをしないといけない」状況になったときどうしますか?
― (少し考えて)リストラしませんね。やっぱり一緒に頑張った仲間を切ることは今でもできないと思います。
Q:ビッグイシューの販売を通して、何か変わったことはありますか?
― 自分に自信がついたかなと思います。自分が作って、販売する雑誌に挟んでいるブックレットが評価されたり、自分で販売を工夫したり、お客さんからの励ましがあったのが大きいかなと思います。
Q:社会に対する不満はありませんか?
― 格差がなくなってほしいと思う。
冷たい人がニコッとしてくれるようなみんな楽しめるような社会になったらいいなぁと。
Q:今後の目標を教えてください。
― 今は、他団体の施設で泊まりながら、貯金をしています。このお金でアパートを借りられたらなと。
就職もできればうれしいですが、いまはビッグイシューが黒字になるよう販売で貢献したいと思っています。
Q:学生さんへメッセージをお願いします。
自分ができなかったからということもありますが、いろんな人と出会って、大学時代を謳歌してほしいです。自分の場合は失敗を恐れて逃避行してしまったので、失敗を恐れずいろんなことにトライしてほしいです。
「ビッグイシュー」を読んでみての感想をシェア
そして今回も「6分間リーディング」の時間を持ちました。学生の皆さんに一人1冊のビッグイシューを選んでもらい、特集を6分間集中して読み込んでもらいます。その後ビッグイシューを読んだ感想をグループでシェア。
学生の皆さんからは「もっとゴシップ記事が多いかと思っていたが、新聞記事のようにしっかりした内容が多くて読みごたえがある」「日常では感じないが、記事を読んで気づかされることがあった。(ものごとには)社会的な見方が必要だと思った。」「大学の先生や実績のある人が登場し、インタビューの裏付けがしっかりしていると感じた」等の感想が挙がりました。
学生に交じって感想を交わし合う美馬さん(右)
講義を終えて
講義を終えた後のアンケートでは、多くの学生から「ホームレス」という言葉の印象が変わった、という声が見られました。
例:「すごくプラスになりました。大きく変化しました。」
「美馬さんの人の良さと“頑張っていれば、何か良いことがある”という考え方に心を動かされました。自分の悩み事が小さすぎて情けなく思えました。」
例:「“かわいそうな人”と考えるより、自立支援活動を応援したくなった」
「昔からホームレスの人はかわいそうな人という勝手な印象を持っていました。
今回の話を聞いてそんなことを考えるより、自立を支援する活動を積極的に応援する意欲が湧きました。できることから頑張ろうと思うので、美馬さんも体調に気をつけて頑張ってください」
授業の後、いただいたアンケートを読み込んだ美馬さん。
「自分の話を聞いて“心動かされた”と書いてくれている学生さんがいて嬉しかった。」とはにかみました。
「たくさん質問が出てよかったです。リストラの質問にはまいったなぁ。」と笑っていました。
格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします
ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。
小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/
人の集まる場を運営されている場合はビッグイシューの「図書館購読」から始めませんか
より広くより多くの方に、『ビッグイシュー日本版』の記事内容を知っていただくために、図書館など多くの市民(学生含む)が閲覧する施設を対象として年間購読制度を設けています。学校図書館においても、全国多数の図書館でご利用いただいています。
※資料請求で編集部オススメの号を1冊進呈いたします。
https://www.bigissue.jp/request/