販売者とともに雑誌販売を行うCEO
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イタリアの南チロル地域で発行しているストリート誌『ゼブラ』では、2019年7月にこのイベントを初めて開催した。発行母体である「Organization for World Solidarity」が協力を取りつけたのは、大手アウトドアブランド(Salewa、Dynafit等)を手がけるオーバーアルプ・グループ社のCEOハイナー・オーバーラオホ氏。
7月8日、CEOは販売者デビッド・チャールズとともに、市場近くに2時間以上立ち、『ゼブラ』を販売した。
(左から)販売者のチャールズ、CEO、編集者のフレイ、販売サポートのジョルダーノ
チャールズはナイジェリア出身の38歳。事前にCEOに路上販売の基本ルールと販売のコツを教えた。
この日のためにCEOにも販売者IDカードが用意され、62歳のビジネスマンのやる気をかき立てた。
CEOはこの日を楽しみにしていたものの、実際にやってみると、通行人の視線を痛いほど感じたようだ。怪訝そうに見る人、「結構です」と足早に去る人も少なくなかったとか。でも全体としては「これほど前向きな反応があるとは思っていませんでした」と振り返る。チャールズも「コツを掴むのも早く、通行人にどうアプローチすべきかもしっかり心得ておられました」と、CEOの販売スキルを高く評価する。
CEOのために用意された販売者カード
「ゼブラは新しい視点を得られる雑誌ですが、それを販売するというのは全く異なる経験ですね。決して簡単な仕事ではありません」。販売を終えた今は、この雑誌が息長くこの街に根づくことを願う、と語った。
販売サポートスタッフとして働くアレッシオ・ジョルダーノも、CEOが販売する様子をそばで見ていた。「昨今の政治情勢や、社会の隅に追いやられた人々の排除がすすみ、路上生活が犯罪扱いされるなか、ビジネス界の大物がストリートペーパーの販売をサポートしてくれるのは、非常にありがたいことです」と語る。
人生の困難に直面した人や仕事を得る機会に恵まれない人たちに、意義のある仕事と収入を得るチャンスを提供する「ストリートペーパー事業」。販売者たちは物乞いはしない。生きていくために雑誌を販売し、街にビジネスを作り出す。それが販売者にとって自信と自尊心を持つきっかけとなる。
販売者からトレーニングを受けた後、ボルザーノストリートで一人で販売するCEO
現在、『ゼブラ』の登録販売者は約60名。路上では紫色のIDを身につけている。販売価格は2ユーロ、うち1ユーロが発行団体に、残り1ユーロが販売者の収入となる。記事のほとんどはボランティア有志によるもので、地域に暮らす人々の心温まるニュースが中心だ。
By Lisa Frei
Translated from German by Louise Thomas
Courtesy of zebra. / INSP.ngo
All photos:courtesy of zebra.
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