新型コロナウイルス感染症が、全人類の脅威となっている。
「強制的」かつ「長期間」のソーシャルディスタンスは何をもたらすか
遠い昔から我々は、村や地域社会、また家族の一員として、常に集団の中で生きてきた。本質的に“社会的な”生き物である人間にとって、「ソーシャルディスタンス」や「自主隔離」は簡単なことではない。
孤独感や社会的孤立が健康を保つうえで良くないことはよく知られているが、その状態が“強制的” かつ “長期間続く”こととなったときにどのような結果がもたらされるかはまだ未知の世界だ。身近な地域社会の中でも、孤独を感じる・孤立する人が増えるリスクが高まることは覚悟しておかなければならない。
オーストラリアでの最近の調査によると、孤独感はすでに若者のあいだでも大きな問題となっており*1、孤独感や社会的孤立を感じている人は、そうでない人よりもそれぞれ26%と29%「死が早まるリスク」が高まるとされている*2。
*1 *Australian Loneliness Report 2018
*2 Loneliness and social isolation as risk factors for mortality: a meta-analytic review
この先行き不透明な時期を乗り越えるのに一層の困難を強いられそうなのは、高齢者を含む社会的弱者だ。すでに孤独を感じている人、さまざまな健康問題を抱えている人たちを自主隔離下でどうサポートすればよいか、その策はまだない。
対面でのコミュニケーションには他では得られない価値があるが、このような状況では柔軟かつ創造性をもってアイデアを出していく必要がある。
テクノロジー機器を所有していない高齢者たちに、何か提供できないだろうか? 機器の使い方が分からないのなら、やり方を教えてあげられないだろうか? 自宅にひきこもっている高齢者には、近所に住む人たちが様子を見るようにするのはどうか? 手紙やメモを渡す、電話をかける、何か私たちにできることはないだろうか?
自粛生活下でより孤独感に陥りやすいのはおそらく高齢者だろう /Shutterstock
人とのつながりを保つため、こんなことから心がけてみるのはどうだろうか。
1.自分や相手の健康を危険にさらすことなく対面でやりとりできる手段を考えてみよう。
イタリアで見られるように、近所の人たちとフェンス越しやベランダ越しに会話するなど。
2.テクノロジーが使えるなら活用すべき。スマートフォンのビデオ通話機能などを積極的に使おう。相手の表情が見えると“つながり感”は増すものだ。
スマートフォンのビデオ通話機能をどんどん使おう /Shutterstock
3.友人や家族だけでなく、近所の人たちとも連絡を取り合うよう心がけよう。身近にインターネットやオンラインショッピングの使い方を知らない人がいたら手助けする等、他者に親切な態度で接することで、あなた自身の幸福感も高まるはずだ。
4.ひとつ屋根の下に暮らしている人たちとは意識して「一緒の時間」を過ごすよう心がけ、「これまでより良い関係性をもてているか」と自問してみよう。
5.できるだけいつも通りの生活パターンをキープしよう。運動や瞑想を取り入れ、自分のストレスレベルをうまくコントロールするよう努める。
感染症の拡大を抑えることだけでなく、どう振る舞えば社会的かつ精神的なダメージを最小限に抑えられるか。想像力を持って考え、思慮深い行動を取ることが、いつも以上に求められている。
※ こちらは『The Conversation』の元記事(2020年3月17日掲載)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。
Michelle H Lim Senior Lecturer and Clinical Psychologist, Swinburne University of Technology
Johanna Badcock Adjunct Professor, School of Psychological Science, University of Western Australia
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