ロレアルが展開する美容を通じた社会支援プログラムーーイタリアでソーシャル美容サロン「Beauty for a Better Life」開始

NPOと企業がコラボすることは珍しくなくなってきたが、企業側にとっては「イメージ戦略」や「知名度向上」を目的とした取り組みに過ぎないことも少なくない。そうしたなか、グローバル企業であるロレアルは、自社のビジネスと接続したかたちで、社会的に孤立しがちな人たちの支援に取り組んでいる。

アジアなど世界各地で美容スキルの集中研修を提供することで、経済的に困難な状況にある女性たちが就労機会を得て経済的に自立できるよう支援してきたほか、2025年10月にはイタリア・ミラノにある公的支援施設エンツォ・ジャナッチに、ソーシャル美容サロン「ビューティー・フォー・ア・ベター・ライフ(Beauty for a Better Life)」をオープンさせた。この公的支援施設には、単身者、家族、保護者のいない未成年者など現在560人以上の生活困窮者が入居しているが、このような施設にソーシャル美容サロンが入るのは初めてのことだ。

Courtesy of Beauty for a Better Life

このソーシャル美容サロンでは、生活困窮者たちが無料でヘアカットやスタイリングのサービスを受けられ、身だしなみを整えるための関連用品も取り扱っている。このプロジェクトは、ホームレス状態にある人々に自立心と尊厳を取り戻すことを目的とした広範なプロジェクトの一環として、ロレアル・イタリア、ロレアル財団、ミラノ市との連携によって実現した。運営はNPO法人のメディホスピスやフォンダツィオーネ・プロジェット・アルカなどのネットワーク団体が共同で担う。年間1,000人の利用者を見込み、実用的かつ専門的サービスの提供にとどまらず、利用者が気軽に会話を交わし、人とのつながりを感じられる温かい空間となることを目指している。

社会的弱者への配慮訓練を受けたソーシャル・ヘアスタイリストの存在

ここで働くヘアスタイリストやエステティシャンは事前に、イタリア初のソーシャル美容サロンで働くための訓練を受けている。高い技術力だけでなく、困難な境遇にある人々を温かく迎え入れる対応力を教育されているため、利用者はあたたかいケアを受けられる。「美しく生きようとすることで、新たな視点を得ることができる」とスタッフの一人は言い、このスペースが心の込もったケアを提供し、社会交流を促し、個人の尊厳回復の一助になっていると実感している。

Courtesy of Beauty for a Better Life

ソーシャル美容サロンでのサービスを体験した者たちは、シンプルに深い感謝の思いを抱いている。疲れた表情とボサボサの髪でドアをくぐってきたのに、帰る頃には穏やかな表情になっている。鏡に映る自分の姿を正視し、しっかりと今の自分と向き合うことが生活再建の大切な第一歩となる。「初めてサロンに行った時のことを今でも鮮明に覚えています」と利用者のカーサ・ヤナッチは言う。 「施術が終わって鏡を見たとき、ここしばらく味わっていなかった姿を自分の中に見ることができ、とても気分が良かったです」

運営にあたるメディホスピス北イタリア支部マネージャーのパスクアーレ・モンターニャは、「ここでは身だしなみのケアだけでなく、希望と再生を重んじています。セルフケアと新たなスキルの習得を通して、人々が自信、自立、そして尊厳を取り戻せる場所です」と語る。ミラノ市議会議員で福祉保健分野を担当するランベルト・ベルトーレも、「身だしなみのケアは決して生活の“余剰”ではなく、人としての基盤となるもの」と言う。「ですから、社会復帰の支援プログラムは、社会の周縁に生きる人々を含むさまざまなニーズを考慮に入れなければなりません」

貧困問題が広がり、社会での排除や疎外化が深刻化している中で、身だしなみのケアができる場所の誕生が、困難な状況にある人々の前向きに生きる力を強く後押しするはずだ。

By Giulia Ghirardi
Translated from Italian via Translators Without Borders
Courtesy of Scarp de’ tenis / INSP.ngo

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