ビッグイシューの出張講義の際、ある大学の学生さんから「医療分野でできる困窮者・ホームレス支援について調べていこうと思う」といった感想をいただきました。時間がなくてその日は紹介ができませんでしたが、この記事で医療現場での困窮者・ホームレス支援の形について紹介していきたいと思います。
1.無料・低額診療事業(無料低額診療事業)
経済的困難がある人でも、無料または低額で必要な医療が受けられる、社会福祉法に基づく制度です。社会福祉法人などが運営する病院や診療所の単位で都道府県などの行政に届出のうえ、審査を経て認定された病院・診療所で受けることができます。
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2.NPOなどが行う健康相談会
困窮者やホームレスの人たちを支援する団体が、活動の中で医療専門職と連携し歯科検診や健康相談を開くことがあります。相談会場などで医師・看護師・衛生士がボランティアとして相談を受けています。
NPO法人ビッグイシュー基金でも、東京・大阪で健康相談会を開催しています。
東京では年1回、医師や看護師、薬剤師、栄養士などの専門職が参加する「新宿連絡会医療班」の協力を得て、専門職ボランティア当事者の相談に対応しています。

大阪では毎月、歯科保健研究会との協働で、ビッグイシュー基金事務所で希望者に歯科医師と衛生士による口腔ケアをしていただける場をつくっています。歯の異常や痛みを我慢してしまう困窮当事者が多いことを受けて始めたのですが、これにより口腔衛生の状態が飛躍的に改善され、毎月来ることで歯の健康を維持している販売者や元販売者もいます。また、同じ姿勢で足腰を痛めやすい人たちのために鍼きゅう体験(協力:はりねずみのハリー鍼灸院)や、内科においては大阪府保険医協会の協力を得て、当事者の相談を受け、血圧チェックや無料低額診療へのつなぎなどを行うための相談の場を不定期でつくっています。
例)
・ビッグイシュー基金の医療相談会
https://bigissue.or.jp/2024/08/24083001/
・東京23区で医療・健康相談をしている民間支援団体一覧
https://bigissue.or.jp/action/guide/tokyo_medicalcare/#anc05
2025年5月25日(日)には大阪の支援団体ネットワーク「住まいとくらしSOS おおさか実行委員会」の主催で、西成の三角公園で食料配布&相談会を開催。
内科医や訪問看護ステーションの看護師による健康相談、歯科保健研究会による歯科相談ブースも設置。

3.夜間・路上での巡回診療
非営利団体で、困窮者向けの無料相談を実施しています。医師や看護師がボランティアで炊き出しの場や公園、夜回りなどで健康についての相談機会を提供し、必要な際には応急処置をすることもあります。
・TENOHASIの夜間診療
https://www.tenohasi.or.jp/activity/medical-consultation/
・ホームレス状態にある方へのアウトリーチ:夜回り活動から見えてきたこと(ビッグイシュー・オンライン)
https://bigissue-online.jp/archives/10559
生活に困窮する人の中には、医療へのアクセスに大きな壁がある場合が少なくありません。保険証がない、自分が使える制度がわからない、診察・検査ブランクからの受診控えなど、背景はさまざまです。
福祉・司法・住まいの支援との連携が求められる場面も多く、医療だけでは完結しないからこそ、専門職のかかわりが重要になります。
4. 行政機関による結核健診
結核は過去の病気と思われがちですが、現在でも多くの患者が発生し、命を落とす感染症です。そして、ホームレスの人がかかりやすい病気としても知られています。
東京では新宿区保健所と連携し、当事者に対して無料結核健診の情報を提供しています。特に『ビッグイシュー日本版』の販売者については、年1回の受診を強く勧めています。
ボランティアとしてビッグイシュー基金の活動に参加してみませんか?
月に一度ボランティア説明会を行っています。ボランティアをご希望の方は、ぜひご参加ください。
(説明会の詳細は「イベント一覧」でご確認ください)