盲目の水上スキー選手ダニエレ・カッシオウリ

イタリア出身、盲目の水上スキー選手ダニエレ・カッシオウリ。数々のメダルやタイトル、栄誉を獲得してきた彼は、「スポーツはいつも私の人生を方向づけてきました」と語る。生まれつき盲目ではあったが、物心がつく前からスポーツに打ち込んできた。「他の子どもたちのようにサッカーができなかったから、何か自分ができるものを見つけなくてはと。最初は水泳と空手、その後にスキー、最後に水の世界にたどり着きました」。そして今や、その世界でレジェンド的存在になろうとしている。

スキーとの出会いはゲレンデではなく、実家のリビングルームだった。「いろんな物を壊して、結構やらかしましたね」と苦笑いを浮かべる。だが、アオスタ渓谷で人生が変わった。「初めて山でスキーをしたとき、それまで感じたことのない可能性と自由を感じたことをよく覚えています。自分一人で自由に動き回ることができる、そんな感覚は初めてでした」。こうしてスポーツが新たな可能性の扉を開いていった。

前人未踏の快挙を達成し、次の世代に勇気を

結果がすべてを物語っている。世界選手権28回優勝、金メダルを100個以上獲得、イタリアで最高のスポーツ栄誉である「コッラーレ・ドーロ・アル・メリト・スポルティーボ(黄金のスポーツ功労勲章)」も受賞した。最も印象深いのは、2013年にミラノのイドロスカロで開催された世界選手権で5つの金メダル獲得という前例なき快挙を達成したことだろう。「もしかしたら自分は障害を持つ子どもたちの励みになれるかもしれない、不可能だと思えることを成し遂げる一助になれるかもしれないと思うようになりました」と、その頃から使命感が芽生えていったという。

カッシオウリの物語では、自己発見というスポーツのもう一つの側面も際立っている。すべてのトレーニング、競争、転倒が自分の限界を再定義し、新たな可能性に変える手段となる。これは障害の有無にかかわらず、困難に直面するすべての人に当てはまる教訓だ。真の成果とは勝利だけではない。挑戦を続け、努力、リスク、そして再挑戦する喜びを受け入れられることだとカッシオウリの経験が物語っている。

Photos courtesy of Daniele Cassioli

アスリートとしてのキャリアと並行して理学療法を学び、医学的な観点からスポーツ界を支えられたらとも考えている。執筆活動にも精力的で、2018年には視覚障害や人生のさまざまな困難とどう向き合ってきたのかを、誠実さとユーモアを交えて描いた自伝『Il vento contro(向かい風)』を出版した。執筆活動を通して、自身の経験をメソッドとして他者を支えるものに昇華させている。さらに、教室での講義や体験型学習プログラムを通して、自身の洞察を共有し、耳を傾け、そしてモチベーションを高める企業研修にも取り組み始めた。

「課題に優劣はない、あるのは戦略の優劣だけ」とカッシオウリはよく口にする。スキーをする時も同じで、「盲目である私がこのスポーツを楽しむことができるのは、地形を説明し、曲がったり減速したりするタイミングを適切に導いてくれるガイドがいるおかげ。選手とガイドが調和と責任の共有に基づく関係性を築けているかが重要な戦略となります」とほほ笑む。「ガイドをどれだけ信頼できているか、そこから楽しさが生まれます。スポーツをする上で信頼は単なる感情ではなく技術的な問題ですから」

近年は視覚障害のある子どもたちの支援にも活動を広げている。2019年に慈善団体「リアル・アイズ・スポーツ(Real Eyes Sport)」を設立し、視覚障害のある子どもたちの運動を促進している。「障害のある子どもたちは、病人や患者のように見なされがちですが、それは間違っています。彼らが自分らしく生きていけるよう、ごく普通の生活への架け橋としてスポーツを活用していければと考えています」

インクルージョンを日常的な選択に

だが、課題が山積していることも十分に認識している。「スポーツにおけるインクルージョン(多様性の受け入れ)は実現に程遠い状況です。バリアフリー施設の不足、スタッフの意識向上、学校でのトレーニング環境の不足など……皆が同じ状況ではないーーそれが本来あるべき姿ーーとの認識が広がった文化と、それに基づく繊細なアプローチが必要です。インクルージョンが日常的な選択となる、それができて初めてスポーツが真の味方になるのだと思います」

彼がスポーツ界のみならず文化界においても中心人物となっているのは、こうした信念があるからこそだろう。カッシオウリは講演、著書、研修、テレビ出演などを通じて、「障害は制約ではなく、異なる出発点である」との画期的なメッセージを明確に伝えている。「大切なのは、とにかくやってみること」と語る。「私は80歳になってもスキー板を履いているんじゃないかと想像しています。人工股関節の置換手術は受けているかもしれないけど、スキーはしているんじゃないかな。何事も遅過ぎるということはないのです」

一見乗り越えられないように思える障害でさえ自由への踏み台になり得る、そのことを思い出させてくれる彼の物語は、まさにこうした信念に支えられているのだろう。

ダニエレ・カッシオウリ(Instagram)
https://www.instagram.com/danielecassioli/

慈善団体リアル・アイズ・スポーツ(Instagram)
https://www.instagram.com/realeyessport/

By Giulia Ghirardi
Translated from Italian via Translators Without Borders
Courtesy of Scarp de’ tenis / INSP.ngo

サムネイル:Photos courtesy of Daniele Cassioli

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