掃除機などの家電が壊れたら…、カバンの持ち手がはずれたら…、修理を試みる人はどれくらいいるだろうか? すぐに買い替えようとする人がほとんどになってはいないだろうか。修理に必要な道具もないし、やり方も分からない……そんな人たちのために「リペアカフェ」という活動が、米国やヨーロッパで広がりを見せている。英国シェフィールド大学サステナビリティ評価の研究員スチュアート・ウォーカーが『The Conversation』に寄稿した記事を紹介する。
買い替えよりも修理で環境負荷軽減へ
水曜日の夕方、私は友人のピートと一緒に、コーンウォール州ペンリン市役所にて「リペアカフェ」のボランティアをしている。テーブルを並べて必要な道具を揃え、看板を立てたら準備完了。それから3時間、総勢4人のボランティアが、ノートパソコン・デスクランプ・時計・電動スケートボードを修理した。掃除機にいたっては3台も修理した。修理以外にも、ボタン・チャック・ヒューズ・電球の交換といったサポートも行った。中には、部品を別途注文する必要があり、日を改めて持ってきてもらう必要があるものや、残念ながら、構造上、私たちでは修理できないものもあった。

私たちはいつもクリーニングから始める。それだけで問題が解決したり、故障の原因が明らかになることもよくある。次に、締め具を使って部品を接着し直す方法や、液漏れしている箇所を綿棒で掃除する方法などを伝える。電子機器など複雑なモノの場合は、念入りに手順を踏むことが求められる。部品を取り外し、工具を使って検証しながら、どの部分が、なぜ故障しているのかを確認していく。手に負えないと思っていた故障も、案外すんなりと直せることがある。
ドリルの故障に対応したときも、上部ライト部分のワイヤーが外れていることが原因と判明したため、はんだ付けの方法を説明した。スペア部品を使って何度か練習してもらった後、ワイヤーを取り付け直し、修理できた。「ドリルを修理することで、新しいスキルが身に付いた」と喜んでもらえた。
リペアカフェの繁忙期はクリスマス後の数週間で、宅配で届けられたプレゼントが輸送中に破損していたからと、修理ニーズが高まるのだ。ある報告によると、クリスマスに受け取ったおもちゃのほぼ半分が壊れ、春までに廃棄されているとのデータもあるくらいだ*1。
*1 Christmas Waste Facts – Tis The Season To Recycle
「修理する権利」の公布により欧州で拡大中
リペアカフェ運動は、買い替えよりも修理を促すことで、環境への負荷を軽減しようという狙いがある。コーヒーメーカー、ヘッドフォン、懐中電灯、パソコンの画面交換などに対応することが多い。シニア女性が持ち込んだ宝石や家宝、子どものおもちゃなどの修理にも対応してきた。掃除機もよく持ち込まれるアイテムの一つで、英国にあるリペアカフェのうち80拠点で、常時トップ3にランクインしている。掃除機を修理することで、新品の製造にかかる二酸化炭素70kgの排出を遅らせることができる。
現在、リペアカフェ国際財団*2 が認定するカフェは世界で3,823拠点ある(英国に446拠点、ドイツに550拠点、EU全体では合計2,500拠点に上る)。2024年4月に「修理する権利法」(正式名称:修理に関する欧州指令)が可決され、消費者の修理サポートを強化するようメーカーに義務付けることで、ヨーロッパ全域でより多くの日用品を修理する運動を推進している。最近のある調査では、ヨーロッパ全体で約3,500万トンの商品が修理可能であるにもかかわらず廃棄されていることが明らかとなった。
*2 https://www.repaircafe.org/en/
リペアカフェの存在意義は、モノを買い替える必要がないということを人々に示すとともに、修理のやり方を学べるところにある。最終的に修理を行うのはボランティアであるにしても、クリスマスのプレゼントが直せると気づけることは、実に前向きな体験で、感動的ともいえる瞬間でもある。2021年のノルウェーの調査で指摘されているように、新品が低価格で売られていることが人々を修理から遠ざけている。安いなら新品を買う方が手っ取り早く、自分が生み出す廃棄物について考えようとしなくなる。修理することで節約になり、新品を買い続ける流れに歯止めをかけることで、地球規模での二酸化炭素排出量の削減にもなる。
修理には時間がかかる。急いでやろうとすると、修理ボランティアが全てやってしまうことになり、それでは持ち込んだ人が得るものが少なく、彼らにお金を払わなければと感じさせてしまう。そうなると、リペアカフェのあるべき力学が変わってしまう。営利目的の修理業者に持ち込むと費用が高くつきがちだが、私たちボランティアの修理屋は料金を請求せず、基本無料で対応している(少額の寄付は随時受け付け)。リペアカフェを通じて、より多くの人たちが、「修理してモノを使い続ける」ことを学ぶお手伝いができればと思う。
著者
Stuart Walker
Research Fellow in Sustainability Assessment, University of Sheffield

※本記事は『The Conversation』掲載記事(2025年12月30日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。
編集部おすすめ書籍:『修理する権利』(アーロン・パーザナウスキー著, 西村伸泰訳)
米国やヨーロッパで「修理する権利」運動が巻き起こっている。その現状を縦横無尽に分析した決定的入門書。
https://amzn.asia/d/03V8ZuoT
編集部オススメ映画:『リペアカフェ』
https://ideasforgood.jp/documentary-repair-cafe/
参考:日本おもちゃ病院協会
日本にはおもちゃ修理を原則無料で行うボランティア「おもちゃ病院」が全国に700か所以上で活動している。
https://www.toyhospital.org/
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