心を踏みにじる「入国者収容施設」。収容期間の上限なく、就労は人手不足とされる職種のみー英国 

入管施設に収容されている移民・難民が不当に扱われたり、仮放免時の人権が保障されず、心身が蝕まれるケースは日本だけでない。たとえば、母国ガンビアの経済状況では生活が厳しく、英国へやって来たラミン・ジョーフ。彼が入国者収容施設で受けた経験を語る。

ラミン・ジョーフと家族 Photo: Julio Etchart

8つの施設に毎年2万4千人
収容長期化する人は3分の1

 「世界中の人に、私が声を大にして言いたいこと。それは、入国者収容施設(以下、収容施設)が収容されている人の心を踏みにじり、家族を引き裂く場所だということです。あそこにいると、心が壊されてしまいます」

 2007年、31歳の時に母国ガンビアから英国へやって来たラミン・ジョーフはそう語る。ビザの問題が発覚し、収容施設に収監されたのはそれから10年後のことだった。「ガンビアではその日暮らしの苦しい生活でした。高校を卒業して、炭坑作業員の職業訓練を2年受けましたが、仕事を見つけるのは本当に大変でした」

 「収容施設は刑務所と似ていますが、(ある意味では)もっとたちの悪い場所です。刑務所では、懲役1年の人は1年経てば刑期を終えて出所できますが、収容施設の被収容者はいつ出られるのかすら教えてもらえない」

ロンドン近郊にある入国者収容施設「ブルック・ハウス」の一部屋(2009年撮影)

 英国には2021年現在7つの収容施設があり、毎年約2万4000人が移民法に基づいて収容されている。だが、他の多くのヨーロッパ諸国と異なり、収容期間の上限が設けられていない。多くの人は2ヵ月以内に釈放されるが、それ以上収容が長期化するケースも3分の1にのぼる。

 「ここに収容される人たちは、よりよい生活を求めてこの国に来ただけで、犯罪者じゃありません」とジョーフ。「異国に住んでいる家族と会えない寂しさや、家族を失った悲しみを抱えている人たちなのに、追い打ちをかけるように施設に収容されて、夫や妻や子どもたちを失った上に、進むべき道をなくしてしまう」

 ジョーフの収容期間は9ヵ月間におよび、3つの施設を転々としたという。「最初に送られたのはドーバー海峡近くの収容施設でした。そこが閉鎖されたので、ロンドン・ガトウィック空港近くのブルック・ハウスに移送されましたが、ひどい場所でした」

「ブルック・ハウス」のロビー (2009年撮影)。施設の運営は民間企業に委託されているが、17年には被収容者への虐待が発覚した Photos: PA Images / Alamy Stock Photo

 「煙草を吸いに外に出ると、狭い喫煙スペースに人がひしめき合う。上を向いても空は見えず、見えるのは施設を囲む網ばかり。とても居心地が悪かったので移送を願い出て、(南部)ドーセット州のポートランド島にある別の施設に送られました」

出国命令は取り消されたが家族を養いたくても働けない

 それでもなんとか、収容施設ではパソコンやメールの使用、美術室や図書室の利用が認められている。ジョーフにとって心の安定をもたらしたのは音楽室での時間だった。「収容されている人間には言いたいことがたくさんあります。奥さんに捨てられた人や、子どもを失った人。築き上げた資産や信用をすべてなくした人。みんな、さまざまな心の痛みを抱えているけれど、表現するすべも持っている。だから、それぞれの方法で痛みを解き放つことを考えるのです」

 ようやく18年に出所したジョーフは、人手不足とされる職種にのみ就くことができる移民向け労働ビザが下りた。「でも、年収約3万3000ポンド(約520万円)を稼がなければならないという条件があり、しかも対象となっていたのは医者やエンジニアなど私には資格がない特別な仕事ばかりでした」

 そうした中で見つけたのが、入国者収容施設で音楽活動を行う慈善団体「Hear Me Out」の求人広告だった。ジョーフはかつて施設滞在中に同団体のワークショップに参加したことがあり、すぐに応募すると「音楽の力で、レジリエンス(回復力)を得た移民当事者」として理事会に迎えられた。理事というポジションを得たことで出国命令は取り消されたが、仕事に就くための労働ビザや正式な滞在許可は今も申請中で、同団体の活動にかかわりながら許可を待つ日々だ。

 「セッションやCDへの録音など音楽を通して、感情や怒りを解き放つことで心が強くなっていく。収容施設送りにされても、歌いたいと思っている人はたくさんいます。世界に聞いてもらいたいことを、心の底から歌いたいのです」

「私の家庭生活の基盤はここ英国にあるのです」と語るジョーフには、妻と息子、2人の義理の娘がいて、以前に交際していた女性との間にも娘がいる。

 「つらいことも、ある程度までは受け入れられます。でも、私は健康な成人であり、家族を養いたいのに働くことができません。それがどんなにみじめなことか。私は人としてカウントされていないと感じています」

(Lamin Joof, The Big Issue UK/編集部)

※この記事は2021年11月01日発売の『ビッグイシュー日本版』418号 16-17pから転載しました。

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