路上で販売する雑誌・新聞事業、25年で大きく環境が変化。販売者の声を聞く

『ビッグイシュー日本版』は創刊から23年。当初からの販売者や読者の多くは高齢に差し掛かっている。社会環境も激変する中、事業も販売者もこれまで通りとはいかない。この状況は日本だけでなく、海外のストリートペーパーも同様だ。ドイツ・シュトゥットガルトのストリート誌『トロット・ヴァー』のベテラン販売者、ドロシア・メンゲルに話を聞いた。

読者がリタイアで街に出なくなり、販売部数が1/5程度に

ストリートペーパー『トロット・ヴァー』の販売員として長年、常連のお客さまに支えられてきました。でも、25年が経った今では、多くのお客さまが定年を迎え、街に出て来ることががくんと減っています。

Photo courtesy of Jack Finnigan on Unsplash

私は、雑誌販売の仕事が好きです。何よりもこの仕事は「自立」をもたらしてくれます。いつ、どれくらいの時間、販売するかを自分で決めることができ、調子の悪い日は無理して街頭に立つ必要はありません。とはいえ、決して楽な仕事でもありません。路上に立っていると、いろんな人々が話しかけてきます。ほとんどの人は好意的ですが、そうでないこともあり、セクハラまがいの目に遭ったこともあります。

販売者を始めた頃は1日に20〜25部、時には30〜40部売れたこともありますが、近年はそんな数字にはなかなか達しません。調子のいい日でも5〜6部、日によっては1部しか売れないこともあります。そのため、残念ながら収入は以前より大幅に減っています。その理由ははっきりとは分かりませんが、紙媒体を読む人が減っていることや、お金の余裕のない人が増えているのも影響しているのでしょう。

私の常連客の多くも姿を消してしまいました。以前は通勤途上で私の販売場所を通り過ぎていた人たちです。オフィスや裁判所に勤務している人たちもいて、定期的に足を止めては雑誌を買い、少し言葉を交わす。こうしたことが“常連客”の小さな基盤を形成していました。ですが、彼らの多くが高齢になり、退職し、販売スペースの前を通らなくなっています。退職したことで、以前よりお財布のひもを締めなければならない人もいますしね。

IndiaUniform/iStockphoto

若い世代に関心を持ってもらいたい

他の販売員のように、私も新しい常連客を開拓しなければと思っています。頻繁に足を止めて雑誌を買い、簡単な会話を交わしてくれる人たちです。若い人たちにそうなってもらえればと願っています。紙メディアの魅力を知ってもらいたいですし、上の世代が持っていた社会的感覚を失わずにいて欲しい。そうすることで社会の活気が保たれ、私もこの仕事を続けていけると思うのです。60歳を迎えた今、その思いは一層強くなっています。

By Dorothea Mengel with Daniel Knaus
Translated from German via Translators Without Borders
Courtesy of Trott-war / INSP.ngo

アイキャッチ画像:Tomas Andrei/iStockphoto

あわせて読みたい

ベルリンの壁崩壊で東ドイツから西ドイツに望みを託して移住。視覚障害、依存症、心臓手術、借金を乗り越えードイツ『トロット・ヴァー』販売者 エマニュエル・バラノフスキー
https://www.bigissue.jp/vendor/370/

ビッグイシュー日本の取り組み

NPO法人ビッグイシュー日本では、通販の発送業務、「シェア型本屋」を運営、販売者が店番を務めるなど路上販売以外のなりわいを模索している。

ビッグイシュー・オンラインのサポーターになってくださいませんか?

ビッグイシューの活動の認知・理解を広めるためのWebメディア「ビッグイシュー・オンライン」。
提携している国際ストリートペーパー(INSP)や『The Conversation』の記事を翻訳してお伝えしています。より多くの記事を翻訳してお伝えしたく、月々500円からの「オンラインサポーター」を募集しています。

募集概要はこちら