熱波に襲われている欧州で多くの原発が停止や出力低下を余儀なくされている(図)。河川の水位低下や水温上昇が起きているためだ。

5秒で25mプール一杯分
海や川へ放水される温排水
原発は核分裂によって発生した熱で蒸気を作りタービンを回すことで発電する(火力発電も同様)。タービンを回した蒸気は復水器で冷やされて水に戻される。この冷却に使われるのが海水や河川水だ。そのため、蒸気から熱を受け取った海水や河川水は7度程度温められて、海や川に放水される。これが「温排水」と呼ばれる理由だ。多くの原発の場合、薬剤やトリチウムなどの放射性物質も含むため、「温廃水」と呼ぶ識者もいる。
温排水は圧倒的な量も問題になる。出力100万kWの発電所の場合、原発で70m3/秒程度、火力発電の場合で25~40m3/秒程度にもなる(25mプールの容積が375m3程度)。5秒で25mプール一杯分に相当する温排水を海や川に放出すれば、生態系に大きな影響を与えることは明らかだ。高すぎる温度は河川水を飲料水として使う場合の処理にも影響を与える。そこで、フランスの内陸部原発では排水後の河川水温の上限が設定されている(28度など)。
温暖化進めば水位はさらに低下
日本も近海の海水温30度超え
これまでも欧州では夏場になると、河川水温の上昇による原発停止や出力低下が頻発していた。だが2026年の深刻さは質的に異なる。複数の主要河川で同時に水位や流量が低下しているからだ。たとえばライン川やドナウ川では記録的な低水位となっている。温度の高低以前に、冷却水の取水が問題になっているのだ。
水位低下はなぜ起きているのか。研究者によれば、2026年の少雨は25~30年に一度の規模だったが、長期的な降水量の減少傾向は確認されていない。重要なのは気温上昇による蒸発量の増加である。以前なら渇水に至らなかった程度の少雨でも、今は深刻な渇水を引き起こしてしまう。温暖化が進めば蒸発量はさらに増加する。つまり、渇水による原発の停止は今後も続く恐れがある。
川沿いの原発でも停止していないものもある。そうした原発に共通するのは大きな冷却塔を備えている点である。冷却塔では温水を散水し、気化熱で温水を冷却し、冷却水として再利用する。そのため川からの取水量は大幅に減る(~95%減)。ただし、気化熱で冷却するため、冷却水の蒸発量は通常の原発の数十倍増える。川の水を蒸発させてしまうので、渇水をさらに深刻化させることになる。冷却塔設置には巨額のコストも必要となる。冷却塔は万能の解決策ではない。
日本の原発は海沿いに位置している。だが、たとえば、鹿児島県にある川内原発の近海の海水温は夏場30度を超える。ここに7度高くなった温排水が放出されれば、海水温は人間の体温を超える。生態系に与える影響は間違いなく深刻だ。海水温上昇はクラゲの大量発生も引き起こす。フランスではクラゲの影響で取水ができず原発が止まった。日本でも起きたことがある。
ここまで渇水・水温上昇が原発にもたらす問題を説明してきたが、火力発電でもほぼ同じ問題を指摘できる。水力発電も渇水した場合、出力低下を余儀なくされる。風力も夏場は風が弱くなるため、発電しにくい状況が生まれる。一方、太陽光は気温上昇によって発電効率が若干低下するものの、日照時間が増えるため、そうした低下を補って余りある電力供給源となる。気候危機が深刻化する中、原発が安定電源と言えるのか。改めて検討する必要がある。(松久保肇)
まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など https://cnic.jp/
2026-09-01発売の『ビッグイシュー日本版』534号より『原発ウォッチ』第232回を転載しました。
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