<2008年11月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第107号より>
平田裕之さんがこのアパート建築に携わることになったのは、2005年秋頃のこと。古い木造アパートの大家である平田さんの父親から、建て替えを相談されたのがきっかけだった。
それがなぜ、畑つきエコアパートになったのだろうか?
趣味のアウトドアから興味をもち、国内外の川や森を巡り歩いたことをベースに、10代の頃から「自然と人間の共存」を考えてきた平田さん。
環境NPOの活動でも、現在の生活様式の中で、身近にできる環境活動が大事だと思っていた。建て替えを機に、畑をつけ、都会の生活の中で無理なく、自然に触れられるアパートを作りたかったという。
「ビジネスとして見たら、なるべく安く建て替えをして、経済効率を優先した経営がよいのでしょうが、果たしてそれが正解なのかという疑問がありました。ですから、これを機にアパート自体がエコで、その上、住人が楽しんで自然を感じられるライフスタイルを提案したいと思ったんです」
そう思い立った平田さんの行動は、すばやかった。環境活動で得たネットワークから、設計士の山田貴宏さんと地元の大森工務店という力強いパートナーの協力を得て、約2年でエコアパートを完成させた。
「花園荘」は、室内に階段のある2階建ての間取りのメゾネット形式の4戸が、横に並ぶ。各戸の床面積は、上下階合わせて約15.7坪(52㎡)。17㎡の畑つき、2DKG(Gはgarden)の日本初の新時代の長屋、誕生である。
このアパートには建物自体に、森を守るための、独特なメッセージが込められている。
「材料には、東京都多摩の木を43本使用しました。その土地の木材をその地で消費することで近隣の林業従事者に収益をもたらし、さらに外国の木の伐採を抑えられたらいいな」と、平田さんは話す。
また、極力省エネで暮らせるよう、太陽の熱を効率よく取り込む設計の工夫がされている。
「建物を日当たりの良い南向きにし、南に面した大きな窓や、せり出した庇で日差しを上手に調節しています。冬場は一度入った熱は壁の断熱材で逃がさないように、夏場は外部から熱が侵入しないようにしています。また、冬でも40度になる屋根の熱を室内に還元する新型のパッシブソーラーシステムを導入しました」
それらの効果もあって冬はどの部屋も室温は14度以上に保たれているそうだ。この夏も3軒はエアコンが必要なかったという。さらに、雨水の貯水タンクやゴーヤを生やした「緑のカーテン」など、自然の力を最大限に利用している。
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畑つきアパートが提案するエコ意識とコミュニティ:平田裕之さんが語る、エコアパートという試み
畑つきのいっぷう変わった賃貸アパート「花園荘」が、東京都足立区にある。建設をコーディネート、プロデュースしたのは、環境NPOで長年活動してきた経験のある平田裕之さん。そこには、エコロジーな住宅の探求だけでなく、日本の環境問題や地域コミュニティへの提案が見える。平田さんに「畑つきエコアパート」誕生の経緯、その魅力について聞いた。
2DKG。 日本初、新時代の長屋が誕生
平田裕之さんがこのアパート建築に携わることになったのは、2005年秋頃のこと。古い木造アパートの大家である平田さんの父親から、建て替えを相談されたのがきっかけだった。
それがなぜ、畑つきエコアパートになったのだろうか?
趣味のアウトドアから興味をもち、国内外の川や森を巡り歩いたことをベースに、10代の頃から「自然と人間の共存」を考えてきた平田さん。
環境NPOの活動でも、現在の生活様式の中で、身近にできる環境活動が大事だと思っていた。建て替えを機に、畑をつけ、都会の生活の中で無理なく、自然に触れられるアパートを作りたかったという。
「ビジネスとして見たら、なるべく安く建て替えをして、経済効率を優先した経営がよいのでしょうが、果たしてそれが正解なのかという疑問がありました。ですから、これを機にアパート自体がエコで、その上、住人が楽しんで自然を感じられるライフスタイルを提案したいと思ったんです」
そう思い立った平田さんの行動は、すばやかった。環境活動で得たネットワークから、設計士の山田貴宏さんと地元の大森工務店という力強いパートナーの協力を得て、約2年でエコアパートを完成させた。
「花園荘」は、室内に階段のある2階建ての間取りのメゾネット形式の4戸が、横に並ぶ。各戸の床面積は、上下階合わせて約15.7坪(52㎡)。17㎡の畑つき、2DKG(Gはgarden)の日本初の新時代の長屋、誕生である。
このアパートには建物自体に、森を守るための、独特なメッセージが込められている。
「材料には、東京都多摩の木を43本使用しました。その土地の木材をその地で消費することで近隣の林業従事者に収益をもたらし、さらに外国の木の伐採を抑えられたらいいな」と、平田さんは話す。
また、極力省エネで暮らせるよう、太陽の熱を効率よく取り込む設計の工夫がされている。
「建物を日当たりの良い南向きにし、南に面した大きな窓や、せり出した庇で日差しを上手に調節しています。冬場は一度入った熱は壁の断熱材で逃がさないように、夏場は外部から熱が侵入しないようにしています。また、冬でも40度になる屋根の熱を室内に還元する新型のパッシブソーラーシステムを導入しました」
それらの効果もあって冬はどの部屋も室温は14度以上に保たれているそうだ。この夏も3軒はエアコンが必要なかったという。さらに、雨水の貯水タンクやゴーヤを生やした「緑のカーテン」など、自然の力を最大限に利用している。
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