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進路未決定の理由と、DxPのソリューション

進路未決定者のヒアリングをすると、「尊敬できる大人に会えず、大学に行きたいと思えなかった」と話していました。進路未決定の理由として、見えてきたことがあります。

1つは「社会関係資本の欠如」。人とののつながりです。通信制高校の生徒になったことをイメージしてみてください。あなたは不登校になりました。まだ中学生です。「高卒資格くらいとっておきなさい」と言われて、通信制高校に行きました。そういう前提で、学校にほとんど行かなくても、進学や就職に結びつきますか? よっぽど行動力がないと、つながりがないので難しいですよね。

2つめは「成功体験の欠如」。不登校であったり、サークルに通っていなかったり、自分に自信を持つ機会が少ないのが一般的な通信制高校の生徒像です。

DxPの独自のプログラムに「クレッシェンド」というものがあります。通信制高校4校と提携して、延べ120名の生徒が受講しています。これは授業を受けると単位になることが特徴で、日本でも特殊な授業の形態です。

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クレッシェンドの目的はただひとつ。「できない」から「やってみたい」に変える。ここまでもっていくのが目的です。実際、DxPの授業を通して、9割の生徒がやってみたい、と感じられる状況まで持っていけています。

「クレッシェンド」は3ヶ月に4回の授業で、生徒10人に対してスタッフ含めて8名の社会人・学生(「コンポーザー」)がつきます。そうして、主に社会人から体験談を語る授業になっています。18歳から39歳の社会人、80名くらいがコンポーザーとして登録して、長期的に関わりながら生徒たちを支援しています。

まず、面談を受けないとコンポーザーになれません。面談では、不登校の経験を持った方々を中心に、失敗経験をして、そこからどのようにして生きているか、という話をしてもらいます。

この授業では、意欲的に「やってみたい」という状況まで持っていき、さらに「できた!」までつくるためのチャレンジプログラム「フォルテッシモ」も持っています。この4回のなかで生徒たちとの関係性ができて、「挑戦してみる?」と誘うことができるようになって、生徒のモチベーションも高まっています。今年度は50人くらい参加しています。

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「フォルテッシモ」では企業インターンの人気があって、進学や就職につながるきっかけになっています。インターンは通信制高校の特色である「学校に通わなくてもいい」という利点を生かしています。たとえば、島根県の海士町までインターンに行きます。あとは、大阪や京都の会社さんと提携して3ヶ月間、5ヶ月間といった長期間の挑戦ができるようにしています。

通信制高校の生徒は、アート系に親和性が高い子がなぜか多いです。自分たちでアート展、写真展を企画させて、実際にイベントをやってもらって、勝手にフォトブックも出版しました。このフォトブックは250冊売れましたが、自主制作・自主編集になっています。ほかにもPC研修講座もやっており、ゲーム好きな子たちが制作会社に行くような道になっています。

DxPのこれから:定時制高校にも授業を提供

体験者の生徒はこんな風にプログラムのことを語ってくれました。

「中学校時代に不登校になったんですが、話すことも苦手で、自分の好きなリズムで生活できるということで通信制高校を選びました。(クレッシェンドの)第一回目を終えた瞬間に世界が180度変わったような気分でした。大人の人に理解してもらえることはないと思っていたので、周りが大人ばかりで不安だったけれど、そのプログラムの中で話をしていくうちに、自分は高校生で、通信制高校の生徒という立場と大人の人たちの立場は変わらない。何の隔たりもないということを教えてもらいました。」

D×Pのこれからなんですが、来年に京都と大阪の定時制高校でクレッシェンドを応用した授業が始まります。定時制高校も課題が多いんですよね。進路未決定率が35%です。これは、「卒業する時点」での進路未決定率で、中退者は含んでいません。

定時制の中退率の実態は40%くらいだと考えられます。ざっくり、半分の生徒が中退しているわけです。生活保護家庭率、一人親家庭率も高く、学校によっては5割に達することもあります。

定時制高校にもしんどい子がいるんですね。そこに総合学習で8回から10回、イメージとしては半分くらいの授業を請け負って、クレッシェンドの応用バージョンをやっていきます。地域の資源、人たちと協力して事業を運営していく。そうすることで、夜間の生徒たちに「できない」から「やってみたい」という気持ちを持ってもらいたいと考えています。大阪と京都でモデルケースとして作っていきたいと感じています。

寄付は若者への「投資」である

うちは学校さんからの事業収入もありますが、企業のインターン、プロジェクトは寄付でやっています。ここは若者への投資だと思ってやっていただきたいんです。

行政は予算が減っていきます。日本は借金が90兆円で税収が40兆円なので、若者支援の予算も減らざるを得ないので、民間の力で少しずつ問題解決していく必要があります。寄付という行為は意思表示であり、投資なんです。僕自身もいくつかの団体に投資として寄付をし

ています。そういう風に考えていただけたら、非常に嬉しく思います。

最後になりますが、私たちのビジョンのゴールは「一人ひとりの若者が自分の将来に希望を持てる社会」です。どんな状況でも希望を描けるのが大切で、それを皆さんと作っていくことが大切だと考えています。今の若者を自己責任論で潰さないで、支える仕組みを作るんだというところで、皆さんと仕事ができればな、と思っています。ありがとうございました。

part.3に続く