part.5を読む

岩切:川原さんは、前職で新卒採用のコンサルティングにも携わっていらしたそうですが、進路決定というところで、高校から大学に進路を決定する力と、就職活動の力は同じですかね。

川原:まったく同じだと思いますね。自分が何に時間を使うのかという選択って、幼少期は色々なことに興味をもって熱中するということでいいと思うんですが、あとは仮説を立てて動いてみるということだと思うんです。ミスマッチはゼロになりませんが、何を目標にして、どんな意図でこの環境を選んだのか、という体験が繰り返されて選択する力が磨かれていくと思っています。

岩切:学校の話も出ていましたが、私も学校の評議員を8年やっています。当然、学校教員が出来ることにも限界があります。今日は民間企業の方がたくさんお申込み頂いたことにとても驚いています。学校の先生以外の人は、子どもたちにどうやってサポート、支援を提供できるのでしょうか。

今井:それは非常に難しい質問で…学校現場に関わることって、民間からするとハードルが高いじゃないですか。それをうちは作ろうと思っていて、1つのモデルを作ろうとしているんです。

学校の先生は「教えるプロ」であって欲しいですが、総合学習はうちが担当しますと、役割分担しているんです。学力は先生たちに教えて頂き、総合学習は地域の人たち、民間がセットになって支えていく、特に定時制や通信制は。そうすることによって進学、就職に結びつけるという制度作りが、高校段階から必要じゃないかと思っています。

岩切:インターンがだいぶ一般化されましたが、その状況を見ると、「1dayインターン」みたいな、「それインターンなのか!」とツッコミたくなるものもありますが、本当にインターンは大学生たちを育てていくことに繋がるのでしょうか。学校以外での成長の場というのは、どういう場があると思いますか?

川原:インターンシップにどういった教育効果があるかについては、学校現場が関わって作っていかないと、企業側に都合のいいものになってしまうのは仕方がないとも思っています。教育的観点をもって、学校の先生方が民間の企業や社会人の方と仕組みを作っていく必要があるでしょう。これが大学生向けでも高校生向けでも必要だと思っています。

今井:教育的観点のないプログラムは意味がないので、気をつけるべきだと思いますね。

川原:私たちも総合学習で取り入れていただくことがあるんですが、先生は脚本家であり演出家で、それ以外の人間はアクターだという話があって、それは凄く納得がいきます。先生は演出家であることを意識してプログラムを作るということが大事かなと感じています。

「あなたはこの授業を寝て過ごしますか?前で聞きますか?」

岩切:ではもう少しお時間があるので、せっかくなので質疑に移っていきたいと思います。

Q:現在Teach for Japanで学生スタッフをしております。川原さんに質問ですが、WEEKDAY CAMPUS VISITのアンケートのなかで、自分の努力や振る舞いで大学生活の質が変わる、という話に感銘を受けました。どういったきっかけで、この生徒はこういう感想を抱くようになったのか、仮説をお聞かせください。

川原:振り返りのワークで話をすることなんですが、寝ている先輩を見て、あなたは前に座るか、後ろで寝るか、ということを聞くようにしているんです。人によってはこの内容だったら後ろで寝ちゃうかも、自分だったら将来のために前で聞くかも、という振り返りをするようにしています。

岩切:気付きを与える問いかけという点で、今井さんは工夫していることはありますか?

今井:警戒心が強い生徒が多いので、1〜2回目は生徒の話を聞き出さないようにしていて、3〜4回目で生徒からの話を聞くようにしています。まずは信頼関係を作ろうと思っています。当然、生徒に事情聴取のようなことはしません。その部分は少し違うかもしれないですね。

Q:大学職員をしています。今回のお話は耳が痛いとともに興味深く聞いていました。私自身、今の大学職員という仕事に違和感を感じています。

まず川原さんに質問なんですが、WEEKDAY CAMPUS VISITの手法というのは入学してしまって退学予備軍になっている学生や、学科のミスマッチを起こしている学生に対しても有効だと思います。学科でミスマッチをしていても、転学によって退学を防ぐということも可能だと思いますが、そういった方向性の取り組みもやられているのでしょうか。

川原:なるほど、そういった意味でWEEKDAY CAMPUS VISIT自体をすでに大学に通っている学生に対してというのはやっていません。が、大学さんに対しては、教職員向けにプログラムを拡充していこうという話をしています。その中で学科のミスマッチ、発達障害の人たちを早期に発見しフォローしていくのか、というのを研修していくプログラムの企画を進めています。

通信制高校での企業インターンが進学に結びつく

Q:ありがとうございます。今井さんには2点あります。今回のお話は比較的、就職に対しての方面という印象が強かったのですが、卒業後、進学に進みたいという学生さんはどの程度いるのでしょうか。また、コンポーザーは39歳という話がありましたが、その年齢制限の理由について教えてください。

今井:まず、39歳というのは、親年齢以上にならないようにという理由からです。40歳以上でもどうしてもやりたい、という方には面接をしています。そういった年齢になると価値観が変わってきたりするので、年齢を区切っています。

最初の質問ですが、うちは企業インターンばかりやっていますが、なぜか進学に結びつきます。インターンをしたあとに大学で学ぶ目的を見つけるんですね。先日は、「なんとなく心理系に行きたい」という子がいたので、カウンセリングセンターで働いてもらったんです。相性が良かったみたいで、今春に心理学の分野に進学することになりました。

岩切:欧米にギャップイヤーという仕組みがありますが、大学に入る前に社会を見てみることで、学業のモチベーションが上がるというのはありますよね。

そろそろお時間ですので、まとめに入らせていただきますが、私はまずアクションを起こすことが第一だと思っています。民間企業、NPO、教員、関係ありません。大事なのは、子どもたちが希望を見出すことを大人がサポートすることだと思います。

皆さん、是非、自分に出来るアクションをお願いします。今日はありがとうございました!

今井・川原:ありがとうございました。


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