part.1を読む

「集まってくるのは、ぱっと見、普通の子なんですよ」




11661864 2014 05 16 21 36 42 166A0049

イケダ:ありがとうございます。家入さんは、最近ホテル暮らしだったりして、当事者意識があるのではないでしょうか?

家入:ぼくね、ホテル暮らしはまだ良かった方で、最近はホテルもなくて、色々な人の家を転々としているんです。家ないんですよ。

佐野:でも、ご家族はいらっしゃるんでしょ?

家入:家族からも追い出されてしまって。

佐野:いやぁ、またまた!

家入:たまに帰ると、子供に「パパが来た」って言われますからね(笑)。

基本的には家がなくて、荷物もいらないですしね。バッグひとつでいいので。今、ぼくがやっているリバ邸というのが日本中にあるんですが、リバ邸のコンセプトは1人あたりの家賃を大勢で住むことでお金の面を解決して、支え合いながら、1人では難しくても、3人位集まることでプロジェクト立ち上げて、何か産み出していこう。起業に限らず自分が何をやって食っていくかを考えていこう、というシェアハウスなんですね。

こういう話をすると、貧困ビジネスだと言われますが、リバ邸では家賃のみで利益は取っていません。

で、ぼくはそこを若い人、生き辛い人の居場所だといっていますが、集まってくるのは、ぱっと見、普通の子なんですよ。普通の格好なんですが、1人1人話してみると、心に闇があったり、貧困を抱えていたりして、一歩間違えるとホームレスになってしまうんですよね。問題が表面的に見えづらくなってしまうんですよ。

明らかにボロボロの服を着ていたら、「服あげようか?」って、手を差し伸べることもやりやすいですが、見た目が普通であるだけに、日本において注目もされていないんじゃないかと思うんです。若い人の貧困、闇は深刻だと思っているんです。

この間、何かの本で読んで思ったんだけど、実際に例としてあるらしいんですが、働ける若い人なのに、何を仕事にしていいか分からないし、働きたくない。やりたいことを探し続けて、仕事が見つからなくて衰弱して死んじゃう人もいるらしいんですよ。


生きるためではなく、承認されるために働きたい若者たち



佐野:ある意味、徹底してますね。

家入:これって根深い問題があると思うんですが、「今の若い人」という、ざっくりとまとめるのもよくないんですが、往々にして仕事にあんまり生活を求めていないんです。日本が安全で物質的に豊かになりすぎたのが理由なんですかね。

マズローの欲求の話で言うと、生理的欲求や安全の欲求を下から叶えていって、働くことも承認されるために働きたいという風になってきているんじゃないですかね。

親はまだ元気だし、吉野家で安く美味しい飯食えるし、「生きるために働く」のではなくて「承認されるために働く」人が増えてきていて、そういう人たちにとっては仕事は生活ではなく認められるため。NPOや社会起業が流行るのも、そういう理由だと思います。

働いても承認されないんだったら働かないくていいやと思って、衰弱する人が出るのも不思議ではなくて、それってある意味で幸せな悩みじゃんといわれるかもしれないけれど、深刻な悩みだと思うんですよね。豊かさを築き上げた先が見えなくなってしまっているんじゃないかと…。

佐野:おっしゃる通り、おじさんホームレスは路上にいるから見えるけど若い子の貧困は見えないんですよね。

厚労省の統計だと、路上に寝ている人は10年前は25,000人いましたが、今年の1月は7,500人くらいになっているんです。反面、家入さんがおっしゃった、「ホームレスに見えないホームレス」が増えてきていますよね。見えない存在なんです。心の内には承認欲求を抱えていますが、社会的には透明人間と全く一緒。

若い販売者が「自分は透明人間だ」と言っていました。統計データでも見えない、問題にもされない。そういう問題が日本社会で進行している気がしますね。


part.3に続く