こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。現在路上で発売中のビッグイシュー日本版246号から、読みどころをピックアップしてお届けします。


子どもの頃に見た「朝鮮人だから」という差別

本日ご紹介するのは、「世界の中心で、愛をさけぶ」「北の零年」「GO」などの作品で知られる映画監督・行定勲さんのインタビュー。目次を開いてすぐ、リレーインタビュー「私の分岐点」からの引用です。



 

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行定勲さんが映画監督になるきっかけを語っていらっしゃるのですが、特に目を引くのは子どもの頃に出会った「朝鮮人差別」についてのエピソード。

10歳の頃、僕には親友がいました。彼は身体が大きくて運動ができて、クワガタ取りが得意な、僕にとってのスーパーヒーローでした。

ある日、地元の有力者の息子の誕生会があってクラス全員が呼ばれていました。「一緒に行こうよ」と彼に言ったら、「お父さんと釣りをするから」と彼は行きませんでした。

誕生会でその親友が「朝鮮人だから」という理由で呼ばれなかったことを知った僕は頭にきて途中で帰りました。親友がいる川へ向かうと彼は一人で釣りをしていました。「お父さん、来れなくなったんだ」と言ってたけれど、親友はすべてを知っていたんだと思います。

(中略)
それからしばらくしたある日、彼から「鴨を捕まえに行こう」と誘われました。鴨を剥製にすると高く売れるとどこからか聞いてきた彼は、売ったお金で一緒に街を出ようと言いました。僕の分のパチンコ銃もこしらえてくれたのですが、約束していた日、僕は用事が入ってしまって行かれなかったんです。

それが最後になりました。

親友は、鴨を捕りに行った湖で水難事故に遭って死んでしまったのです。詳しい死因はわかりません。でも、親友のことはずっと僕の心に突き刺さっていました。

こうした過去は、在日の青年が主人公の小説「GO」の映画化に影響を与えます。

監督になって『GO』という小説の映画化のオファーがありました。主人公は在日の青年で「国境線は俺が消してやるんだ!」と叫ぶスーパーヒーローです。小説を読んだ時、「この作品に出会っていたら親友は死んでいなかったんじゃないか」という思いが出てきました。この話をちゃんとしたかたちで映画化すれば、励まされる人、支えになる人がいるかもしれないと……。

『GO』には個人的体験が強く反映されていますが、他の作品でも自分なりの"つくらなければいけない理由"があります。



1ページと短いインタビューですが、行定監督の原点に触れることができる、印象的な記事です。





次回のリレーインタビューは行定監督のご友人、音楽家の半野喜弘さんがご登場しますので、どうぞお楽しみに!


246号では他にも、浜矩子さんと青井未帆さんのスペシャル対談、特集「アフリカゾウとともに生きる」、東田直樹さんの「自閉症の僕が生きていく風景」、ホームレス人生相談などなどのコンテンツが掲載されております。ぜひ路上にてお買い求めください!


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