よく目にする数字として、日本は先進国の中で貧困率が高く、「貧困率が15.6%」や「6人~7人に1人が貧困ラインを下回っている」というものがあります。「日本に貧困層がそんなにたくさんいるなんて実感がない」という人のために下記に解説いたします。
先進国35ヶ国中、貧困率が7番目に高い日本
OECD加盟国の相対的貧困率のグラフを見ると、日本が先進国のなかでも「相対的貧困率」が高い国であることがわかります。
(イーズ 未来共創フォーラムより)
日本の子どもの相対的貧困率は上昇傾向にあったが、27年で減少
厚生労働省の平成28年の資料を見ると、子どもの相対的貧困率は1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあったのが、27年で減少に転じたことがわかります。なお、子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は15.6%であり、そのうち,ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%と、大人が2人以上いる世帯に比べて高い水準となっていることが伺えます。
(厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」より)
相対的貧困と絶対的貧困とは?
貧困には「相対的貧困」と「絶対的貧困」の二種類があります。
まずわかりやすい方、「絶対的貧困」についての解説を引用します。
必要最低限の生活水準を維持するための食糧・生活必需品を購入できる所得・消費水準に達していない絶対貧困者が、その国や地域の全人口に占める割合。世界銀行では1日の所得が1.25米ドルを貧困ラインとしている。絶対的貧困の基準は国や機関、時代によって異なる。
つまり地球で生きるにあたって、最低限必要と考えられている食料・生活必需品を購入するためのお金がない状況が「絶対的貧困」です。主に途上国で起きている問題といえます。
先進国での貧困問題は「相対的貧困率」をもとに考えられます。
OECDでは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が全人口の中央値の半分未満の世帯員を相対的貧困者としている。相対的貧困率は、単純な購買力よりも国内の所得格差に注目する指標であるため、日本など比較的豊かな先進国でも高い割合が示される。
「相対的貧困」とは、所得の中央値の半分を下回っている人の割合で、つまりその国の所得格差を表している数字です。
平成27年度の日本の所得の中央値が245万円なので、122.5万円以下で生活している人が貧困ラインを下回っているということです。
貧困ラインを下回ったいる人の年収が122.5万円であり、月収でいうと約10.2万円です。これに当てはまる人が日本だと15.6%、6人~7人に1人いるということです。
相対的貧困はなぜ問題か?
NPOが運営するオンラインメディア「ひみつ基地」には、相対的貧困について理解を促す情報が多く掲載されています。
・「相対的貧困」は、ときに「絶対的貧困」と同レベルのダメージを人に与えます。
・「日本の貧困状態の子どもたちの方が、精神的な落ち込みが大きかった」
・「周りのみんなにとっては当たり前の生活が自分だけ享受できない」という状態は、子どもたちに破壊的なダメージを与えます。そして、「なんで、僕だけ?」 を繰り返した子どもたちは、もうその言葉を言わなくなります。その代わりに、ある言葉を繰り返すようになります。それは次のような言葉です。「どうせ、僕なんて」
・「子どもの貧困」とは、所得が低い家庭の子どもが低学力・低学歴となり、将来不安定な就業に陥ることで、次の世代にまで貧困状態が連鎖していく(=貧困の世代間連鎖)問題です。このような貧困状態にある子どもは今日本に約6人に1人の割合で存在しており、年々増え続けています。
(「子どもの貧困」問題を解決する3つの政策手段-「子どもの貧困対策法」を絵に描いた餅にしてはいけない! / ひみつ基地より)
・圧倒的な格差の前で、消えていくハングリー精神
・小学校・中学校は、義務教育ですから、どんな経済状況でも就学援助があり学校に行けます。しかし、高校になれば、親がリストラや倒産などで経済状況が困窮すると、高校を辞めざるをえなくなったり、その後の進学を諦めなければならない状況になります。高校の教員との話の中から、「親がリストラされ、学費が払えない」とか、「保険証をもっていない生徒がいる」など、学びの質の前に生活そのものが困窮している話になることも少なくありません。
・「ハングリー精神」なんて言葉がありますが、それには「自分もがんばれば、この状況を脱することができる」という自己効力感があればこその話です。そもそも圧倒的な格差のなかに長期間置かれた子どもは、意欲を喪失し、「金持ちと結婚したい」とか、「生活保護うけて、働かずに生活したい」など他力本願になるか、冒頭の小学生のように「どうせニートに」等、自暴自棄になってしまうのです。
(「経済・希望格差を超えるための教育環境」の作り方-若者一人を無業者にすれば、最低4,600万円以上の損失! / ひみつ基地より)
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貧困問題を解決するためにあなたができること
生まれた環境によりその人の人生が大きく変わってしまうことに対して問題意識を持ち、原因や取り組みについて調べてみましょう。
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・湯浅誠さんが解説、「子どもの貧困」に対してあなたができること-子ども食堂(居場所)フォーラム基調講演「なんとかする」子どもの貧困 より
・子どもの貧困問題について本気で考える会:ビッグイシュー×Teach for Japan
・イギリスの貧困状態の子どもの数を50万人減らした仕組みを視察。日本との違いは5つ
また、様々なアプローチで解決に取組んでいる団体も存在します。相対的貧困の問題を解決するために、これらの活動に関わることから始めてみてはいかがでしょうか?
この記事では、5つの団体を紹介します。(他にもたくさんあるので、是非自分が支援したい、関わりたいと思った団体を関わってみて下さい。)
認定NPO法人カタリバ
カタリバは、キャリア教育と被災地での放課後学習を行っている団体です。
カタリバの詳しい理念・問題意識はこちら。
カタリバの理念 | 認定NPO法人カタリバ
ボランティアを常時募集しているので、詳しい関わり方はこちらをご覧下さい。
あなたの関わり方 | 認定NPO法人カタリバ
NPO法人3keys
3keysは格差などによって十分な学習支援が得られない子どもたちを対象に、大学生や社会人などの学習ボランティアを研修・派遣することで、学習支援を行っています。
3keysの詳しい理念・問題意識はこちら。
3keysについて | 3keys
3keysもボランティアを募集しているので、詳しくはこちらをご覧下さい。
あなたにできること | 3keys
Chance for Children
Chance for Childrenは、教育専用のクーポン(バウチャー)を貧困家庭に配布することで教育格差を解決しようとしている団体です。
Chance for Childrenの詳しい理念・問題意識はこちら。
子どもの教育の問題 | Chance for Children(チャンス・フォー・チルドレン)
Chance for Childrenは活動内容上ボランティアをそれほど募集していませんが、寄付という形で関わることが出来ます。
支援の方法 | Chance for Children(チャンス・フォー・チルドレン)
特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール
放課後NPOアフタースクールはその名の通り、放課後教育に取組んでいる団体で、「社会で子どもを育てる」をコンセプトに活動を行っています。
放課後NPOアフタースクールの詳しい理念・問題意識はこちら。
私たちについて | 放課後NPOアフタースクール
放課後NPOアフタースクールはボランティアの放課後の先生を募集しています。詳しくはこちらをご覧下さい。
放課後NPOアフタースクール:市民先生&スタッフ募集
放課後NPOアフタースクール:賛助会員・寄付受付
特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
児童養護施設から社会に巣立つ子どもたちが、未来への希望を持って生きられるよう支援する活動を、持続的かつ発展的に行っています。
特定非営利活動法人ブリッジフォースマイルの詳しい理念・問題意識はこちら。
児童養護のいま
教育・子どもの貧困を軸にして5つ団体を紹介しましたが、こういった問題に多くの人が関心を持ちに様々な人が実際に関わることによって、社会は変わり、課題の解決に近づいていきます。ぜひ、みなさんもボランティアや寄付者として、関わりあいを始めてみてください。
※2015年1月公開の記事を、2017年6月の厚生労働省の発表を受けて再編集しました。※
『ビッグイシュー日本版』348号の特集は『間違いだらけの貧困イメージ』
https://www.bigissue.jp/backnumber/348/
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