「ベツルート」という就職支援サイトが話題を呼んでいます。
「占い」と「くじ引き」で志望企業を決める「ベツルート」
「ベツルート」は「"やりたくないこと"に×をして、志望企業を占いとくじ引きで決める」という、一見めちゃくちゃな就活サイト。しかし、メッセージには一定の納得感があります。
計算尽くしで採用したはずの社員が、すぐにやめてしまう。考え抜き、納得尽くしで入社したはずの会社で、やりがいを見出せない。世の中、そんな企業や人であふれています。
考えてもみてください。人生も、会社経営も、思わぬ出会いや偶然の連続でできています。なぜ就職や採用の入り口だけ、一部の情報や計画性に頼ろうとするのでしょうか。知らない企業、マニアックな会社は世の中に山ほどあり、その出会いや仕事のバリエーションは無限に存在しているはずです。
大切なのは、いかにして就職先を決めるか、ということではなく、就職後にどれだけ前向きに働き続けられるか、ということです。まずは心から“やりたくないこと”にだけ✕をして、あとは偶然の出会いや出来事に身を任せてみる。
そして、とにかく人と企業が「仲良くなる」ことを大切にする。条件や情報の選択、ルールや型の習得に神経をすり減らすのではなく、まずはゆるやかに「関係する」ことを始めてみる。そんな前代未聞の新卒就職・採用サービスを、実験的に始めてみます。
利用の流れを引用します。
- こんな会社や仕事だけはイヤだ!という項目をチェックし、該当企業を除外します。仕事を前向きに続けていく上で、結構大切な事だと思います。
- 自分の生年月日と、企業の設立年月日や経営者の生年月日で、相性を占います。事実、世の中の企業・経営者の多くが占いに頼っています。
- 自分の主観や思い込みでは、選択の幅に限界があります。そこで、完全に運任せのくじ引きを行い、マッチングに偶発性と無限の可能性をもたせます。
- マッチングした応募者と企業(経営者)で、BBQやサバゲーなど食べる・遊ぶといったレクレーションを一緒に楽しみ、たっぷり仲良くなります。
- 仲良くなれたら、インターンシップなどでゆるやかに仕事体験を始めます。
Q&Aもシニカルかつ本質を突いており、クスリとさせられます。
Q:「やりたいこと」ではなく「やりたくないこと」にチェックするのはなぜですか?
A:就職という現実において、「やりたいこと」の多くは幻想だと思うからです。
編集長は「鯖江市JK課」「ゆるい就職」を手がけた若新雄純氏
運営会社は株式会社アドヴァンテージ、そして編集長は若新雄純氏が就任しています。
若新氏といえば、「鯖江市JK課」「ゆるい就職」「ナルシスト採用」などを手がけた人物として知られています。
(「ナルシスト採用」ウェブサイトより)
一見はちゃめちゃに見えますが、その考えは大いに共感できるものでした。若新氏からコメントをいただいたので、合わせて掲載いたします。
僕がテーマとしているのは「多様性を開発するコミュニケーション」であり、色々な価値観や個性を持った人、世代や立場の違う人が、成熟した複雑な社会環境の中でどう関わり合っていくかを考えています。
鯖江市役所JK課は、オープンデータアプリやオリジナルスイーツの企画など一年間で20以上の活動が生まれ、女子高生が従来はほとんど関わり合うこともなかった、市民団体や地元企業とのコラボレーションがたくさん生まれました。
ベツルートに関しても「多様性」がキーワードで、多くの学生が「これが当然」と思っている従来の就職サービスやスタイルを相対化させることが狙いです。当然、僕もこのサービス「だけ」が正しいとは思っていません。ベツルートは、あくまでマニアックでマイナーな実験的サービスです。
高学歴層に人気
とあるイベントで同席した際、若新氏は、
僕がやっているのは、はみ出した人、マニアックな人を「トレーニング」するのではなく、マニアックなまま、ありのまま社会に繋いでいく、ということです。
とも語っていました。ぼく自身、おそらくかなり「マニアックな人」なので大変共感できます。
興味深いのは、彼が手がける就職関連のサービスは特に高学歴層に人気があるそうです。ベツルートに関しても「203名の申込者のうち、最も多いのは早稲田大学の10名で、次が明治大学の6名。国立大では、東大4名、阪大4名、横国4名、京大3名という順」とのこと。「ナルシスト採用」しかり、「優秀な(マニアックな=強烈な情熱を持った)はみ出し者」たちが集まる仕掛けになっているのでしょう。
現在は2016年度卒業者向け本サイトのリリースに向けて動いています。仮申込が始まっているので、気になる方はぜひ登録してみては。
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。