ビッグイシュー・オンライン編集部です。『ビッグイシュー日本版』263号より、読みどころをピックアップいたします。
※以下は2015/05/18に公開した記事を加筆・修正した記事です。
どこでも、誰でも、雨水利用!
263号、表紙はジュリアン・ムーア、特集は「どこでも、誰でも、雨水利用!」です。この記事では、特集の内容をダイジェストでお伝えいたします。
日本中どこにでも雨は降る。降り始めて30分以上たった雨水の水質は蒸留水に近く、生活用水に使え、貯めれば非常時の水源となり、ゲリラ豪雨などの水害も緩和する。そんな雨水利用をすすめる市民や団体を紹介したい。
雨水を冷暖房に活用
最初に紹介されているのは、雨水を冷暖房に活用する「雨デモ風デモハウス」を建築した黒岩哲彦さん。まずは、意外とも言える雨水の清浄性についてレクチャーいただきましょう。
「降り出して30分を過ぎた雨水は、水道水よりきれいなんですよ」
これを証明する実験がある。
「水道水と雨水を適度な密閉の容器に別々に入れておくと、水道水は塩素が抜けたら腐りますが、雨水は腐りません。それはなぜか?水道水にはなんらかの栄養分が含まれていて、空気中に飛び交っている藻類などが水に入っていてそれを食べるから腐るんですね。けれど、雨水にはほとんど栄養分が含まれていないので腐らない。」
黒岩さんは、そんな雨水を「冷暖房」に使うという提案をしています。
屋根と天井の間に、アルミのパネルが貼ってある「小屋裏通風扉」がある。冬には閉まっているが、夏になると全部開けて自然の風が通るようにする。床下の雨水をポンプ(240Wの太陽電池を駆動)で上げ、見た目は普通だが、天井冷放射パネルの仕組まれた天井、その上面に貼り付けたグラスファイバーを湿らせる。
たとえば、外気が33度くらいだと「小屋裏通風扉」から入る空気によって蒸発が起き、天井板が26度くらいになる。すると内部の床壁の面の温度が自動的に下がる特殊な構造を有しているのがエクセルギーハウスだ。
雨水を資源に変える貯水タンク
続いて紹介されているのがNPO法人「雨水市民の会」の取り組み。地域のあちこちに雨水タンクを設置し、そこで貯めた水を野菜づくりや災害対策に利用してきたNPOです。
(三島市ウェブサイトより)
「お金をかけて隣県にダムを造り、パイプを引いて水を運んでくることを考えたら、雨水は高いところから降る雨を受けて溜めるだけ。いたってローテクで経済的でしょ?
それに東京は使う水量よりも降水量のほうが多い。各家庭が軒先にバケツひとつおけば、ダムを造ったのと一緒になるのではと思い、家庭用の安価なタンク『天水尊』を開発したり、ゴミバケツを使った手作りタンク教室を開催したりもしています。」
「雨水市民の会」の活動は海外にも広がり、バングラデシュに雨水タンクを設置するプロジェクトも始まっています。
「現地の地下水にはヒ素などが混ざっているからですが、世界ではまだ11億人もの人が安全な水を確保できない状況です。だけど、雨水というのはいわば天然の蒸留水。ごみや化学物質が混ざる降り始めの部分を除けば、非常にきれいな水です。」
知らせざるイノベーション「地下貯水槽」
最後に紹介されているのは、1919年創業のメーカー「トーテツ」の「地下貯水槽」。
トーテツは「地下貯留システム」を開発。その仕組みはこうだ。
地表に設けたU字溝などから集められた雨は、「除塵管理桝」へ。ここで、大気中の汚染物質を含んだ降り始めの雨は「オリフィス」という小さな穴から外へ逃がし、きれいな雨水だけをフィルターに通して「地下貯水槽」へ送る。これにより、99パーセント以上の塵埃を除去できるという。
東京都羽村市の幼稚園や、石川県小松市の公園など、施工実績は約60件に上ります。海外からも注目を浴びており、インドの遊園地からも相談が来ているとか。雨水活用技術は、日本が誇るテクノロジーでもあるのです。
雨水は飲み水としての活用も可能で、世界では様々なソリューションが開発されています。こちらはネットでも話題になった「Rain Drops」というアイテム。
「Rain Drops」は、ペットボトルに取り付けることで、屋根から流れてくる水を飲料水に変えることが出来るキャップです。シンプルなデザインで誰でも使いやすいようになっています。
身近な資源である「雨水」。263号は東京・大阪事務所の在庫はありませんが、販売者によっては手元にあることがございます。お気軽に路上の販売者にお問い合わせください。
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『ビッグイシュー日本版』再生可能エネルギー関連号
THE BIG ISSUE JAPAN283号
もう 自分電力
https://www.bigissue.jp/backnumber/283/
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