大規模な停電や断水を伴う地震・豪雨・台風、そしてインフラの老朽化など、想像を超える事態が起こる頻度が高まってきている。
“備え”を「自分ではない誰かがやってくれること」と切り分けてしまうのではなく「自分たちですること」と思っている市民・家庭が多いまちは、災害にも強い。
『ビッグイシュー日本版』の過去の特集のうち、インフラ停止などに備えとなる記事をいくつか紹介する。
※以下は2018年に公開した記事を加筆・修正した記事です。
①個人・家庭として
災害時は「災害モード」になるべし
341号では、前提として「災害モード」の重要性ついて特集。
「災害時にも出社・通学しようとする私たち」に心当たりはないだろうか?
「電車が動いているから出社しよう」「水が止まるならネットで注文しよう」といった、“普段の生活と同じ行動”は、ときに被害を拡大させうることに注意しよう。
293号に掲載の「ブッシュクラフト」(Bush=森、Craft=技能)。キャンプに比べ、使う道具をできるだけ少なく、素材も現地調達、”自然との一体感”を楽しむ。生存術として災害時や日常生活にも役立つ”知恵の宝庫”だ。
https://www.bigissue.jp/backnumber/293/
水を自給する:生活用水に、冷暖房に、飲み水に…事例に学ぶ「雨水」を活用する方法
日本中どこにでも雨は降る。降り始めて30分以上たった雨水の水質は蒸留水に近く、生活用水に使え、溜めれば非常時の水源となり、ゲリラ豪雨などの水害も緩和する。
263号ではそんな雨水利用をすすめる市民や団体を紹介。

参考:生活用水に、冷暖房に、飲み水に…事例に学ぶ「雨水」を活用する方法
長期停電の備え①「わがや電力」でスマホ充電くらいは確保
312号に掲載の、鹿児島県の山奥で、電気・水道・ガスを契約しないという”フルオフグリッド”の生活を送る、テンダーさん。年間家賃1万円の家「てー庵」に住み、電気は自作の太陽光発電システム、調理と暖房の熱源は薪から、風呂のお湯は太陽熱、水は裏山の水源から引く。
「ここまで極端なことは都市部ではできない…」と思う方もいらっしゃるだろう。
しかし、長期停電となったときに、スマホの充電ができる状態くらいは自分の家で確保しておきたい。
編集部がテンダーさんに教わって試した「マンションでもできる太陽光発電」レポートはこちら
・本気で電気代を削減したい人必見!小6の知識で自作可能な『わがや電力』
完全停電への備え:電化という豊かさの幻想をつきぬける「非電化生活」
そもそもとして、停電の時にも自家発電する方法を準備するのではなく、「電気を使わない暮らし方」を考えるという手もある。「電気を使わない冷蔵庫」や「電気も洗剤も使わない洗濯機」にあなたは興味はないだろうか。109号では「非電化生活」を特集。
https://www.bigissue.jp/backnumber/109/ (SOLD OUT、ただしPDFで提供あり)
②集合住宅・まちとして
長期停電の備え②下水道が流れると発電できる!?国産の小水力発電の導入検討を
298号でご紹介した、初めて国産の「ターゴ式水車」開発に成功し、市民出資の小水力発電所に提供した「田中水力」(神奈川)。なんと下水道が流れるだけで発電ができるのだ。こちらは集合住宅や小規模な町で導入を検討してはどうだろうか。
再生可能エネルギーで若者を雇用。「田中水力 株式会社」は国産の小水力発電機開発のパイオニア
食料を自給する:ビルの屋上・学校・空き地で畑を運営する方法
308号で紹介するのは物流が止まっても生鮮野菜を自給でき、多様な人と交流できる”都会の畑づくり”。「孤立状態」においても、まちのみんなで力を合わせて普段と変わらない暮らしをしたい。
https://www.bigissue.jp/backnumber/308/
洗濯や買い物ができない地域に:移動型スーパー「とくし丸」と移動式洗濯サービス
地方の高齢者やホームレスの人など、買い物や洗濯がしてくてもできないという人のほうに出向く形のサービスに学ぶところも大きい。
257号の特集「包容空間、路上のいま」では、オーストラリアの移動式無料洗濯サービスや、徳島発の移動スーパーを紹介。ふだんから社会的弱者に心を寄せ、このようなサービスを提供している地域は、災害にも強いはずだ。
物流を自給する:「セルフマーケット」で、自分たちの市場をつくる
そして2018年9月15日発売の343号の特集は「セルフマーケット」。
既存のスーパーやコンビニを否定するものではない。まちの人々で仮設のテントや机を並べ、野菜などの生鮮食品から日用品、アクセサリーまで、さまざまな物が売り買いされる“マーケット”を自分たちで企画するのだ。人々が集い、語らい、買い物をし、安否確認もできる機会になる「セルフマーケット」。平常時から週に1回くらい開催することで、そこに住む人たちとのつながりができ、いざというときの物流や、安否確認をスムーズにするかもしれない。
https://www.bigissue.jp/backnumber/343/
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地域の防災への意識を高める:防災を楽しく実践し、広げていく
210号で訴えたのは、「そもそも日本は動く大地の上に乗っている」ということ。その前提を踏まえた上で、安心して暮らすための知恵を探る。

市民一人ひとりが楽しく参加できる防災活動を実践し提案している、渥美公秀さん、西川亮さんにインタビュー。
③自治体として
もしこの記事を自治体関係者が読んでおられるなら、「大規模発電所に頼りすぎない地域づくり」も視野に入れていただきたい。
「抗震力」究極の地震対策
456号では長年地震研究をしてきた神沼克伊さんに話を聞いた。行政や自治体は「地震に強い街とは何かを考え、長期的視野で対策を立ててほしい」。そして個人にとっての「究極の地震対策は『抗震力』。大地震に遭遇しても、とにかく生きのびることが大切」だと言う。
大規模発電所に頼りきらない:小水力発電。自然エネルギーの突破口
218号では現行の大規模集中型から分散複合型のエネルギーシステムへの転換の突破口であり、その鍵をにぎる小水力発電について考えた。

・岡山県西粟倉村、小水力発電から始まった自然エネルギー生産。化石燃料に頼らない地域づくり
北海道や大阪南部、真備など、ここのところの大規模災害で被災し、長期間の停電や断水に苦しむ人が多いなかで、被災した人々の痛みを我がごととして想像し、そしていかに自分たちの行動を変えていくか。それが問われている。
これを機に「防災、はじめの一歩」を踏み出してみたい。
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