近年、東京や横浜などの特に家賃の高い都心部において、20〜30代の若年単身者を中心にシェア居住が増えている。これは、一つの住宅に家族ではない複数の居住者が台所や風呂、トイレなどの空間や設備を共同に利用する住まいである。
筆者がこの調査を始めた5年前は、家賃や生活費を安く抑えられることが最も大きな入居理由だったが、最近の傾向としては、ワンルームマンションと同家賃でも、好立地で住環境が整っているクオリティの高いシェア居住を望む入居希望者も増えている。
シェア居住は、住宅形態、立地、居住者の年齢・性別などによってさまざまな特徴がみられるが、いくつかの事例を紹介する。
2人の友人と同居の20代の大学生は、シェア居住のよさを語る。「100㎡の戸建て住宅を75,000円で安く借りました。個室にいる時は寝る時ぐらい、友達を呼ぶ時には共用空間のリビングで他の同居人とともに仲よくパーティをやっています」
研究のために家族と離れ東京でシェア居住をしている50代の大学研究員は、「同居人は3人の30代のキャリアウーマン。彼女たちが仕事などで帰宅が遅くなると自分の子どものように心配で、全員を待っています」と言う。
中国国籍の20代留学生は、「日本語がまったく話せなかった時、2人の同居人の日本人が区役所での外国人登録手続きや銀行の口座開設も手伝ってくれました。おかげで安心して生活ができるようになった」と話す。
1室で5人とドミトリーをしている20代の男性は、「フリーターでアルバイトをしています。家賃は光熱費などを入れて4万円程度ですが、他の居住者と一緒にご飯を食べるのがとても楽しいです」と言う。そして、「職を探すために1ヵ月前に東京に来ました。5人の同居人たちが就職の情報や面接方法などを親切に教えてくれて助かっています。来週2ヵ所の会社の面接に行きます」と言う20代の女性。
以上のようにシェア居住は、フリーターからサラリーマンまでさまざまな職種や国籍、性別の人々が混ざって住んでおり、今後は単身者の居住スタイルの一つとして確立していくだろう。
丁 志映(ちょん・じよん)
千葉大学大学院助教。2003年9月日本女子大学大学院博士課程修了・博士(学術)。日本学術振興会(JSPS)外国人特別研究員と芝浦工業大学非常勤講師を経て、07年9月より千葉大学大学院工学研究科助教に。著書に『若者たちに住まいを!−格差社会の住宅問題』(岩波ブックレット)、『もうひとつの家族、コレクティブハウス』(ハンギョレ新聞社)などがある。
(2009年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第128号)