「子どもを被曝から守れ」—IAEA国際会議で住民グループ抗議

(2013年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 207号より)

「子どもを被曝から守れ」「事故被害を過小評価するな」—IAEA国際会議で住民グループ抗議

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(IAEAのテューダー報道官を前に要請書を読み上げる小渕・共同代表(左))

昨年12月15日から17日まで福島県郡山市で行われた「原子力安全に関する福島閣僚会議」(政府と国際原子力機関〔IAEA〕共催)の会議場の外では、市民の抗議活動が展開された。

福島県や県議会は廃炉に向けた請願を採択し、核燃税の廃止を決めるなど、再稼働ストップから廃炉に向けた「ポスト3・11期」を歩み出している。そのなかで、「核(原子力)の平和利用」を掲げるIAEAが福島県内に拠点を設けて活動を開始することに対して、市民は、「子どもたちの未来を守ってください。子どもたちに放射能のない美しい未来を約束してください」と抗議と懸念を表明した。

IAEAの活動をウォッチする「フクシマ・アクション・プロジェクト」共同代表の武藤類子さん、小渕真理さん、関久雄さん、事務局長の佐々木慶子さんらは、「福島原発事故を過小評価せず、福島第一、第二原発の即刻廃炉や、子どもや若者たちの放射能被害の最小化、避難、疎開の実施に向け、日本政府に働きかけてほしい」とする要請書をIAEAのジル・テューダー報道官に手渡した。

また、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの副理事長、伊藤和子弁護士も「福島では原発事故後、健康に生きるという最も重要な基本的人権が危機にさらされている。IAEAと政府が一緒になって、人権侵害の状況を継続し、さらに悪化させてしまうのではないかと懸念している」などと述べ、米国、フランス、ドイツ、チェルノブイリの被害にあった国の人々、福島から全国に避難した人々の要望をまとめた意見書を手渡した。

テューダー報道官は「IAEAは盲目的に世界の電力政策を進めるためにあるのではない。チェルノブイリの被害の大きさについて意図的に矮小化したという印象がみなさんにあるのは残念。福島の被害を矮小化しようということはない。この会議の目的は、福島支援のために、事故についての客観的、科学的な情報をどう集めるか、関係機関が協力することにある」と述べ、13年1月をめどに、住民らに回答するよう本部に伝えると話した。

しかし海外から会議に参加した電力関係者の中には、この会議で「福島は安全」とのお墨付きが得られたとして、原発建設に向け各国との連携を模索する動きもあり、現実的に福島の被害矮小化の可能性を残した。

同市内では脱原発をめざす首長会議や市民会議も開かれ、佐藤栄佐久・前福島県知事、桜井勝延・南相馬市長、海外のNGOや関係者らが参加し、被害の過小評価の問題点などを議論した。

(文と写真 藍原寛子)