保護された犬のケアや訓練を通し、不登校やひきこもりの若者の社会復帰を支援する
米国のプログラムを引きこもりの若者支援に応用 北に筑波山を望む緑豊かな茨城県土浦市で、保護された犬のケアや訓練を通し、不登校やひきこもりの若者の社会復帰を支援する「キドックス」。 その活動の現場を訪れた。
代表理事の上山琴美さん
「捨てられた犬たちと、環境に恵まれない子どもたちを支援したい」
高校時代から「捨てられた犬たちと、環境に恵まれない子どもたちを支援したい」と考えてきた代表理事の上山琴美さん。2011年に二人のドッグトレーナーと「キドックス」を設立後、13年に米国の「プロジェクトプーチ」を視察した。
少年院内で受刑者が捨てられた犬をトレーニングし、共に社会復帰を目指すプロジェクトで、研修プログラムまで少年たちが考える当事者主体のシステムに感動しました。この少年院全体の再犯率50%に対し、受講生の再犯率はゼロという実績もあります
このプログラムを日本の不登校やひきこもりの若者に応用できないかと考えた上山さんらは独自の「ドッグプログラム」を開発し、現在、15~35歳までの若者に有料で提供。
提携先のシェルターで保護された犬の中でトレーニングが必要な子を引き受けています。最初は怯えて震えが止まらない犬もいて、散歩や日常のケアを通して信頼関係を築き、人と暮らすために必要なトイレや留守番などのトレーニングをします。1頭の訓練には1年近くかかるという。
プログラムは週4日の朝10時から午後4時まで。5人の若者がドッグトレーナーの助言のもと、担当の犬の世話や訓練をするが、体調に応じて午前中や1時間だけ、月に1度から始める人もいて、疲れたら休める寝室もある。
重要なのは「若者と犬のマッチング」と「若者と犬の課題を見極め、次のステップに進むための声かけや介入をするタイミング」だ。うまくいくと、若者と犬に変化が訪れる。
ドッグトレーナー山田有紀子さん(左)と代表の上山琴美さん
「殺処分をされる犬たちが減り、若者の社会復帰も助ける」WIN-WINのプログラムを全国に。
たとえば、2年ひきこもっていた20代半ばの男性は「初めは心因性の頭痛がひどくて休みがちでしたが、犬と接するうちに頭痛が楽になり、1年経った今では会報づくりのまとめ役。IT関係の仕事に就くために、面接の練習やバイト探しにも励んでいる」という。
20代前半の女性も2年ひきこもっていたが、約9ヵ月で「東京の児童養護施設に送り出した担当の犬について、職員や子どもたちに発表をしてみせる」ほどになった。
課題は、有給スタッフが雇えないため事業の拡大に注力できないことだったが、中央ろうきんの助成金でプログラム統括者を一人雇用し、余裕が生まれたことで、ようやく次の展開が見えてきた。
「犬のシェルターと、若者が犬をモチーフにしたアクセサリーや迷子札を制作する工房をつくる計画が進行中です。完成すれば、ドッグプログラムを受けた若者が、シェルターでボランティアとして働き、工房での中間就労を経て一般就労へ至る仕組みを新たな事業として展開できます。
「アクセサリーづくりを教えてくれたのは利用者の若者。敷地内の畑にブルーベリーを植え、犬用ブルーベリー入りビスケット商品化の企画もあります。こういうアイディアが若者からどんどん出るようにしていきたい」と上山さん。
最終的な目標は「プログラムにかかわるスタッフの教育システムをつくり、他地域でも実施できるようにすること。全国で殺処分をされる犬たちが減り、若者の社会復帰も助けることができます」。夢はどこまでも広がる。
活動拠点外観。家屋の右側に畑がある
NPO法人キドックス
犬を介した若者の自立支援プログラムや子どもたちへの教育活動を行う。ドッグプログラムの参加費は週4日で月3万2400円。1回3000円程度の回数券もある。
★ドッグフードなどの物資、寄付の他、シェルター運営を手伝えるボランティアを募集中!
お問い合わせ先 TEL 070・5088・6436
(火曜〜金曜 10時〜16時)
http://kidogs.org
★工房で制作したアクセサリーを購入できるオンラインショップスタート!
http://kidogs.thebase.in/
ストラップや犬の迷子札などのハンドメイド雑貨を制作中。制作過程には自立を目指す若者たちも中間的就労の場として主体的に携わっている。
犬のナチュラル雑貨 kidogs(キドックス)です。
自然や命のあたたかさを身近に感じられるナチュラル系の雑貨や犬用おやつをつくっています。つくば山の近くで自然に囲まれた素材を活かして、1つ1つにメッセージを込めてハンドメイドしています。
商品の売上は、原価代を除いて全てNPO法人キドックス(青少年と保護犬の支援活動)の活動費に充てさせていただきます。
ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド」の特集記事をお届けします。
[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]
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