市民の寄付で建設。福島県白河市の「原発災害情報センター」

原発事故と向き合い、人々の尊厳を守り、平和の尊さを伝える資料館にしたい――。福島県白河市の「アウシュヴィッツ平和博物館」の隣に、姉妹館となる「原発災害情報センター」の建設が進んでいる。オープンは5月19日(日)で、開館記念式典とともに、立命館大学国際平和ミュージアム提供による企画展「放射能と人類の未来展」が開幕する。

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建設が進む「原発災害情報センター」内部(4月現在)

アウシュヴィッツ平和博物館が建設されたきっかけは、1988年からアウシュヴィッツ収容所を管理するポーランドのオシフィエンチム博物館から借りた遺品やインタビュー記録、写真などをもとに、市民により「心に刻むアウシュヴィッツ展」が開かれたこと。全国を巡回展示するなかで、常設展を希望する声が上がり、栃木県塩谷町に常設館・アウシュヴィッツ平和博物館が00年開館。

その後03年に白河市に移転・再オープンした。そして10年にわたり、地元白河市の住民も参加し、平和を考える学習や講演会、シンポジウムの開催や、コンサート、交流事業、海外への見学ツアーなどを開催し、博物館を運営してきた。

「原発災害情報センター」の建設は、県内で地元の活動に参加してきた女性たちから震災後に提案があったのがきっかけだった。

「福島県内には原発災害を考える施設がない。心配や不安があっても声に出せない県民も多い。みんなで集まって話し、事実を記録して正確に発信し、伝えていく拠点が必要ではないか」

こうした要望を受けて建設を決定。原発事故の資料を収集し、機関誌発行などで正確な情報発信をする。また、各種の企画展や勉強会・学習会を開くほか、広島、長崎、チェルノブイリ、そして福島での原発・原爆の歴史やその影響などを、さまざまな考えや立場を越えて自由に話し、お互いに励まし合い交流する仲間づくりの場を目指すことになった。

メインの展示棟は約140平方メートルで自然光を利用、太陽光発電設備も設置。図書室や喫茶サロン室などの併設も予定。長野県から運んだ木材を使い、200年はもつという伝統工法による建設が進められ、「環境に優しく、後世に残る施設にしたい」との思いを込めている。

建設費用は賛同者からの寄付で賄っており、運営費は20年で総額1億円を予定。展示棟などの建設費用は目標3500万円のうち2000万円が集まったが、さらに寄付を募っている。このほかにも木材の現物提供、大工仕事のボランティア、菓子類の現物寄付など、全国からの多様な支援によって建設が進められている。

(文と写真 藍原寛子)

<2013年5月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第215号より>