(2013年6月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 217号より)
震災復興、原発事故と向き合う高校生らの文集、話題に。『福島から伝えたいこと』第2集も発行
震災当時の体験や避難生活を通して今考えていることなどを、高校生と卒業生、そして教師らがつづった2冊の文集『福島から伝えたいこと』が話題になっている。福島県立高等学校教職員組合女性部(大貫昭子・女性部長)がまとめたものだ。
2012年4月に第1集(副題「あの日 あの時から 教師と生徒の声」)を発行。全国から問い合わせが相次ぎ、現在5刷まで増刷した。今年4月には、震災後丸2年の現状と、将来に向けた課題、今の思いをまとめた第2集(副題「奪われた尊厳を取り戻すために」)が完成した。
生徒たちは、震災後から家族が避難先で分かれて生活してきたことや慣れない環境での戸惑い、ほかの高校校舎などを借りて臨時の分校「サテライト校」で受ける授業や学習の遅れへの焦り、教師らへの思い、といった複雑な日常生活の様子を述べている。
3月12日から県外で避難生活を送る生徒たちは、故郷・福島の現状への憂い、原発事故への複雑な感情を、具体的に自分の言葉で伝える。
「17年間、住み慣れた自分の家へ帰れないかもしれない。(中略)今はまだ完ぺきに前を向いて歩こうということはできませんが、自分が辛くて泣いた日々を糧にして、どんな逆境にも負けない強い人間になりたいです」(『幸せとは普通に生きること』双葉高3年女子)
「私は復興とは、街並みを再建するだけではなく、被災し深い悲しみを持った人たちの苦しみや不安を取り除いてこそ実現するものであると考えています」(『被災者の声が届く復興を』安達高3年女子)
「原発事故がなぜ起こったのか、さまざまな理由があるが、私はもしかしたら現在の日本に対する自然災害の警告、戒めだったのかもしれないと思っている」(『原発ゼロを』原町高校3年女子)(以上、第2集より)
これらの文章からは被災した福島県の高校生の今の姿がリアルに伝わってくる。編集委員長の小林みゆきさんは「2011年9月に教員による『女性部のつどいでのしゃべり場』を開いた時、さまざまな話が出てきたんです。こうした体験や意見を残さなければ、忘れられる。記録として残すことが大事だと思い、文集作成を提案した」と話す。
(文と写真 藍原寛子)