こんにちは! ビッグイシューオンラインの小林美穂子です。
今日はカナダの路上死についてピックアップしました。2014年に46人のホームレスがカナダのブリティッシュコロンビアで亡くなったことについて、バンクーバーのストリートペーパー(※)は事態の深刻さを問題視し、政府に提言をしています。
日本はどうなんだろう?と思い、書物をめくってみました。時代は異なるものの、2000年に黒田研二大阪府立大学教授らの調査結果によれば、大阪市内における路上生活者の路上死は年間なんと213人!!調査からは16年が経過していますから状況は良くなっていると思いたいですが、路上で人が亡くなるという状況はまだまだ存在しています。日本にいる私達もカナダと同様、ホームレス問題から目を背け続けるわけにはいかなそうです。
※ストリートペーパー:ホームレスの人の仕事をつくり自立を応援するために発行される雑誌や新聞。
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ブリティッシュコロンビア州でホームレスの「不必要な」死亡数が急増したことを受けて、同州の最大都市バンクーバーを拠点とするストリートペーパー『メガフォン』紙は政府の責任を追及している。「路上の死」と題した記事には、ホームレスの死亡が2014年に70%増加したという衝撃的な数字が記されている。そして、その死亡の多くは防げたはずの悲劇であったと。同紙の取締役であるショーン・コンドンはINSP(※)に対し、ホームレスになることがすなわち地域の最弱者として「早死にをするという宣告」を受けることと同等にならないよう、もっと対策が必要だと話してくれた。――ローラ・スミス(INSP)
※INSP:世界のストリートペーパーが参加するネットワーク。
凍える仲間を助けたい、その気持ちが彼女を死に追いやった。
アニタ・ホークは、ホームレスの人権擁護に情熱を傾ける人物として、メトロバンクーバー北東部メイプル・リッジ界隈ではちょっとした有名人だった。そしてその闘いが、彼女の命を奪う結果となってしまった。
9月27日、アニタはクリフアベニュー沿いのテント村で暮らす仲間のホームレスが、寒さをしのぐのに苦労しているという話を耳にした。なんとか助けたいと、アニタは近くにある寄付用衣類の集積箱からジャケットと毛布を見つけようとしてよじ登った。そして逆さの状態で引っかかってしまい、そこから出られなくなってしまったのだ。
救出されたとき、アニタは意識不明だった。そして翌日、病院で家族に看取られながら亡くなった。
路上死が前年比70%増。安全で安心な住まいと支援があれば防げた。
アニタのようなケースはブリティッシュコロンビアでは珍しくない。INSPの会員紙『メガフォン』の新しい記事は、少なくとも46人のホームレスが2014年に同州で死亡したことを明らかにしている。
この数は前年に比べて70%増であり、ブリティッシュコロンビアでのホームレス死者数としては2008年以来最高だと、バンクーバーを拠点とする同紙は伝えている。
これを受けて、『メガフォン』紙はカナダ政府に対し、貧困を減らすための政策と、誰もが住まいと支援を得られるようにするよう求めた。
「ホームレスになることは、早死にの宣告を受けるのと同じことなのです」と『メガフォン』の取締役ショーン・コンドンは言う。
「彼らの死は悲劇的で不必要なものです。安全で安心な住まいと支援が受けられていれば、防ぐことができたはずの死です」
地元の検視官事務所によると2006年から2014年の間にブリティッシュコロンビアで死亡したホームレスは合計325人だった。しかし、実際の数はその2倍にのぼる可能性があると事務所は認めている。
死亡したホームレスの平均年齢は40~49歳、死因は48.3%が「事故死」
またデータによれば、それらのホームレスの死亡理由の48.3%が「事故死」である。人口全体の事故死の割合はわずか16.5%であるのに。
ブリティッシュコロンビアの平均寿命は約83才だが、死亡したホームレスの年齢の平均値は40歳~49歳である。
この統計は、政府の無策がブリティッシュコロンビアのホームレスに致命的な影響を及ぼしている証拠であると、ショーンは考えている。そして記事の主張を繰り返す――安全で低価格な住まい、健康支援、ハームリダクション(健康被害を減らすのを最優先する考え方)をもとにした支援が広く提供されていれば、多くの死が防げるという主張だ。
「ホームレス状態の人は一般平均より30年早く亡くなる傾向があります……そして死亡者数の増加は、社会が間違った方向に進んでいることを示しているのです」とショーンはINSPに語った。
人々の偏見がホームレスを死に追いやる。住まいや適切な支援サービスの提供は、政府にとっても結果的に安上がり
「われわれにはこの危機の解決策がわかっています。政府にとっても、ホームレスの人々に住まいや支援サービスを提供するほうが結果的に安上がりになることもわかっています。それなのに、政治的意思が明らかに欠如しています」
「多くの人は相変わらずホームレス問題を個人的な問題ととらえていて、市民の健康を脅かす問題であるとは思わない。その偏見がホームレスを死に追いやる結果になっています」。
『メガフォン』紙では、2015年に薬物の過剰摂取による死者数が急増したこと、低所得者用住宅の立ち退きが増加していること、そして低価格な住宅の供給がまだまだ足りない状態であることから、ブリティッシュコロンビアにおけるホームレスの死者数は今後も増加の一途をたどるだろうと警告している。
ショーンはさらにこう言う。「ホームレスの死を防止する最善の方法は、ホームレス状態の人をなくすことです。それは政府の関係部門同士が協力すれば実現可能です。これまでの悲劇が、政府の無策によって招かれたものであることがこの記事によって分かっていただけたら幸いです」
彼のこの意見は多くの人にシェアされ拡散された。クリスティー・クラーク州首相と州政府に対策を求めるために『メガフォン』紙が主催したオンラインの請願には、すでに700人近い署名が集まっている。
すべての人に安心できる住まいと支援を。
残念なことだが、アニタは1週間後にアパートに入居することになっていた。
「わたしたちは、路上生活者から目を背け続けているという事実から目を背けることをやめなくてはなりません。困っている人々に住む場所と、食べ物と、衣服を提供する必要があります。彼らは誰かの家族なのです。わたしたちみんなの家族なのですから」。
INSP.ngoの厚意により
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。