編集部より:2014年7月4日に開催された「野武士ジャパン出版記念パーティ ~いま、サッカーが社会にできること~を開催」の講演の模様を書き起こし形式でご共有いたします。
長谷川:皆さんこんばんは。ビッグイシュー基金でホームレスサッカーの担当している、長谷川と申します。「ホームレスワールドカップ日本代表のあきらめない力」出版記念パーティーにお越しいただきましてありがとうございます。今回のパーティーには、今まで応援いただいた方、選手、そして今後さらに関わっていただきたい方、たくさんの方にお越しいただいています。
1部の方はパネルトークという形になるのですが、2部の部分ではぜひ一緒に交流を深めて、これから活動をみんなで盛り上げていければなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
「野武士ジャパン」監督、蛭間芳樹さんが語る

司会:それでは、6月12日に発売した「ホームレス・ワールドカップ日本代表のあきらめない力」の著者でありまして、「野武士ジャパン」の現監督(パリ大会当時:コーチ)蛭間芳樹さんにお話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
蛭間:皆さんどうもこんばんは。ヨルなのにヒルマです。
会場:(笑)
蛭間:笑ってくれてありがとうございます。この冗談が通じるの、日本だけというのが最近よくわかりました。
会場:(笑)
蛭間:本日はご来場いただきありがとうございます。私、今週は仕事で東北の被災地めぐりをしていまして、先程東京に帰ってきました。
本日の登壇者である星野さんはブラジルワールドカップの取材を経て来てくださいましたし、米倉先生は今朝はインドにいたという。すごいんですよ、今日のメンバーは(笑)それを含めて、皆さん今日はお集まりいただきまして本当にありがとうございます。
私の方から簡単にこの本の中身の紹介や、このチーム「野武士ジャパン」が目指しているコトについてお話したいいと思います。
そもそものところなんですが、そちらにいらっしゃる米倉先生との出会いが私の人生を大きく変えました。
学生時代、私は埼玉に住んでいまして、大学は東京だったものですから、荒川とか北千住を通りその電車の中から河川敷のホームレスの人が見えるんですね。ただその当時はホームレスの問題ですとか、貧困や格差の問題に全く関心がありませんでした、正直。
この本の中にも書いてありますけども、日本という国はすごい豊かな国なわけですよ、ひとりあたりのGDPなどの経済指標でみても。そこでホームレスの状態でいるということは、少しご自身の努力が足りないんじゃないかな、という風にも正直思っていました。
しかしながら、そうじゃないということをビッグイシューのスタッフやホームレス状態にある選手に教えてもらいました。そういう現場で起こっているいろんな事実、問題というのを現場に行って見てこいというのを厳しく教わったのが米倉先生が塾長の「日本元気塾」です。私社会人1年目でこの塾にたまたま入るきっかけがありまして、そこから大きく私の公私の様々な活動の原点となるきっかけを作ってもらいました。
私はたまたま元気塾の授業のなかで、「ビッグイシュー」の販売体験をさせてもらい、その仕組みを勉強する機会を得ることができました。

振り返れば2009年ですね。今からもう5年前になります。新宿の西口の前で販売者さんの横に立ちまして、事前のレクチャーを受けながら、「こうやって売ってください」と一生懸命頑張ったんですけれども、当時売れたのは2時間でたった3冊。
手元に入る収入はほんのわずか。これでどうするのかな、というのを思いながら、横にいた販売者さん、ビッグイシューのスタッフとディスカッションしていく中で感じた強烈な印象というのは今でも忘れません。
ビッグイシューを売るということは「私はホームレスです」と宣言すること
ビッグイシューの販売を路上でしていると、目の前では大勢の人が通ってるわけですよ。明らかに私たちの存在に気がついてるわけですね。でも、多くの人が見てみないふりをしますし、なんというか、威圧的に近づいてくる人もいます。
これを売っているということは、イコール、「私はホームレスです」ということを宣言しているということとほとんど同義なんですね。
そういうことを自分の中で感じる中で、私は恥ずかしくなってきました。横をパッと見ますと販売者の方がじっと黙って売っている。込み上げるものがありました。この原体験が全ての始まりなんですね。
その隣の販売者さんが販売の終わりに、「おいお前、今度サッカーやるちょっと遊びに来ないか。俺ホームレスワールドカップ日本代表を目指しているんだ」。その一言の誘いがこのチームとの出会いの始まりです。
ホームレスワールドカップ、皆さんもご存知だと思いますけれども過去に日本チームは3回出ています。私は2009年くらいかボランティアで関わらさせてもらって、今は監督という立場でいますが、その以前にも今も、沢山のボランティアの方がこのチームを支えてくれています。
「ホームレスワールドカップって何なんだろう?」 私自身、サッカーのキャリアが結構長いんですけれど、正直全く見たことも聞いたこともなかったんです。全くです。
ですから、ホームレスの人たちがサッカーをして遊んでんだろう、なんて始めは本気で思っていたんですけども、実は全然違うんですね。社会的な困難、不利な状況の人たちをこういうサッカーという社会技術を活用して一つでも二つでも、自立に向けて前進をしていく。そういうプロジェクトである、ということを知りました。