現在の日本の路上生活者は約6200人(2016年厚生労働省調べ)。それに対し、日本に空き家は何戸あるかご存知ですか?

答えは820万戸(2014年総務省調べ)。

住宅困窮者やホームレス化の危険がある若者の住宅問題の解決には「空き家」を含む民間の住宅ストック活用がひとつのカギになると考え、ビッグイシュー基金では、協力的な家主さんから固定資産税分のみで提供された空き物件を活用して、ホームレス状態の方が初期費用や保証人を立てることなく一時的な居所として利用できる「ステップハウス」を実験的に運営しています。
このステップハウスは利用料の一部を積立金にできる仕組みとなっており、ここを足掛かりにアパート入居や就職活動などの生活再建を応援する事業です。
関西で全5室あるうち、兵庫県内にあるステップハウスは、キッチンとミニダイニング、トイレつきの和風物件。
3月から利用開始した、大阪でビッグイシュー誌を販売する吉富さんにお話を伺いました。

Q:ステップハウスを利用してみての感想はいかがですか

やっぱり帰る家があるのはいいね。(満面の笑み)
今までは、寝る前は水分を取らないように、とかの制約があったけど、トイレもいつでも行けるし、人を待たなくていいから、いいね。
ずっと周りに誰かがいた生活から一人暮らしになったので、ちょっと寂しいこともあるけれど、近所の人と話したり、隣駅まで散策したりしています。
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Q:布団で寝るのは久しぶりでしたか。

布団で寝るのは半年ぶりくらいだったんです。
でも、入居した最初の頃は火曜日・水曜日の深夜になると、目が覚めちゃったんですよ。
なんでかっていうと、火曜日・水曜日は清掃車が回ってくる時間だったから。
路上で寝てると清掃の水でビチャビチャになるんで、長い間その時間は起きるようになってたからね。それが体に染みついていたんだろうね。
今は慣れてきて、朝まで眠れるようになりました。
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Q:利用料が15,000円(うち5千円は家主さんへ、1万円は積立金)ですが、やりくりは大丈夫ですか。

うん、今のところは払えてるよ。
電気代は月1,500円くらいかかるけど、家があると自炊ができるから食費が下がったもの。
野菜は安売りのを買って、自炊しています。
ご飯やうどんは、賞味期限が切れる前に冷凍しています。
冷凍庫があると、貯蔵ができるので、節約できますね。だいたい食費は週に2000円くらいになりました。
そのうち、ステップハウスの前でプランター野菜も育ててみたいですね。
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Q:家賃や光熱費の支払いに追われるような感覚はありませんか。

今のところは大丈夫です。
ビッグイシューは、1冊350円の雑誌を170円で仕入れるから、本当は1冊あたり180円の収入になるんだけど、最近は「1冊200円の仕入れ」のつもりで、1冊あたり30円の「つもり貯金」もしています。

Q:ステップハウスに入ったデメリットはないですか。

そりゃ、販売場所の近くで路上生活していた時と比べたら、通勤の時間はかかるよね。(笑)
だからその分、販売時間がちょっと短くなったかなあという感じではあります。
常連さんが買いに来るはずの日だけど、まだ来てない…もうちょっと待つか、どうしようか…みたいな悩みは少し増えたかもしれません。
最近はだいたい朝7時くらいに起きて、販売場所に向かい、朝から19時半くらいまで販売しています。

※2017年5月現在は梅田の地下街のほかに阪急西院駅でも週に1度、販売しています。
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Q:ステップハウスの利用期間はあと9カ月ですが、目標はありますか?

できればお金を貯めて、アパートを借りたいね。
あとは、住民票もうつして、免許停止のまま失効してしまった免許も更新したいな。
ハローワークで仕事を探すときに、「要原付免許」みたいな求人もあるから、ステップハウスの次のステップとして、アパート入居、免許取得、それを活かした就職活動…みたいにできるといいね。
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ビッグイシューの販売も続けつつ、羽生さんのいうところの「人生の仕込み」(※)をする期間だと思っています。
(※ビッグイシュー164号に登場いただいた羽生善治さんの言葉)
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吉富さんの「ステップ」を応援してください!

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若者の住宅問題と空き家活用を考えよう!
「市民が考える! 若者の住宅問題&空き家活用」シンポジウム報告書
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下記からダウンロードいただけます。ご希望の方には、ビッグイシュー基金が無料で必要冊数をお送りいたします(着払い送料のみご負担をお願いしております)。 http://www.bigissue.or.jp/activity/info_15101501.html


ステップハウスの運営をはじめ、ビッグイシュー基金の活動は、寄付参加、ボランティア活動など、市民のみなさまのご参加・ご協力で成り立っております。活動に参加することを通じて、私たちと一緒に様々な人達の自立を応援してくださいませんか?
ビッグイシュー基金では、多くの方に気軽に参加していただくために、各種のご参加方法をご用意しております。
http://bigissue.or.jp/support_ind/index.html







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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。