「ビッグイシューって、350円の雑誌を1冊売って180円の儲け? でもあまり売れてる様子を見ないけど、アレでほんとに路上脱出できるの?」という疑問をときどきいただきます。
1991年に英国で始まったビッグイシュー。日本では2003年9月に創設者ジョン・バードの応援を取り付け『ビッグイシュー日本版』を創刊しました。
この14年の間に、1500人以上が販売者として登録し、『ビッグイシュー日本版』は774万冊を販売。ホームレス状態の販売者へ11億5253万円の収入を提供、150人を超える方々がビッグイシューの販売をきっかけに、他の仕事を見つけることができ、住所を確保して販売を卒業されています。
「卒業された人にもっとクローズアップして紹介すればいいのに!」と思われるかもしれませんが、卒業後は、かつてホームレス状態にあったこと、ビッグイシューを販売していたことを職場に隠したい、という方も多く、露出がしづらい事情があります。そんな事情もありながら、卒業の体験談を寄せてくださった方を「今月の人」からピックアップしてご紹介いたします。
「お茶の水博士」ことOさん (元・お茶の水橋販売者)
ビッグイシュー販売をするまで:IT企業に勤務
会社員のお父さん、専業主婦のお母さん、そして弟というごく一般的な家庭に生まれ育ったOさんは、パソコンが今のように普及するはるか昔の35年前に故郷の北国から上京し、IT企業に就職。そこで20年間もソフトの開発に携わってきたにもかかわらずバブルが弾け、リストラの対象となった。業界全体の仕事が減ってしまったため、それまでの経験を生かした再就職は難しく、やむを得ず警備員などのバイトを転々とした。そして5、6年前、ついに路上で暮らすようになった。
ビッグイシュー卒業後:契約社員として事務の補助
2年と少しの販売者生活を経て、今は都内で契約社員として事務の補助をしている。月に平均1200冊を売り上げるほどのカリスマ販売員だったOさんは、ぱらつく程度の小雨なら傘を差し、クリアケースに入れた雑誌を25冊ほど小脇に抱えて売り続けるほどの努力家だった。毎朝7時半から夕方4時まで橋の上に立ち、貯めたお金で今春、まっさらなスーツを買うと10社以上の面接を受けた。そしてついに今の仕事を射止めたのだが、仕事を手にしただけで満足してしまうようなOさんではない。「チャンスさえあれば、働き盛りの頃に籍を置いたIT業界でもう一度働きたい」と、早くも次なるステップアップを目指している。
▼Oさんの登場する「今月の人」全文はこちら
https://www.bigissue.jp/vendor/56/
白土修一さん (元・中野駅北口販売者)
ビッグイシュー販売をするまで:パチンコ店勤務
修ちゃんは炭鉱の町として栄えた福岡県飯塚市出身の九州男児。9人兄弟の末から2番目でみんなにかわいがられて育ったが、早く一人前になりたいという思いと東京へのあこがれは、誰より強かったという。その夢をかなえるべく、17歳で上京。左官、製本屋、パチンコ店などの仕事を経験。21歳の時、結婚もした。
ところが45歳の時、人生が暗転する。バブル終焉とともに16年間つとめたパチンコ店をリストラされてしまったのだ。 「カミサンは自分で商売やって頑張ってたから、生活には困らなかったんだけど、女性に食べさせてもらってるって状況が、どうにも耐えられなくてね。それで家を出たんですよ」
ビッグイシュー卒業後:東京都内の大学で用務や清掃の仕事
「それでどうですか、新しい仕事は?」 「ビッグイシューに比べたらね、すごく暇なの(笑)」▼白土さんの登場する「今月の人」全文はこちら
https://www.bigissue.jp/vendor/75/
石田誠さん (元・京橋駅前販売者)
ビッグイシュー販売をするまで: 牧場→イスの製造会社
早くに家族と別れ児童養護施設で育った石田さん。 中学卒業後、牧場で働いた。牛の世話は思っていた以上にキツイ仕事だったが、5年間働き通して、イスを製造する会社に転職。そこでも10年間勤めた。もう30歳になり、会社の信用もでき、立派な大人になっているはずだったが、「そこで、つまずいたのが自分の分岐点だった」と石田さんは振り返る。
ビッグイシュー卒業後:スーパーマーケット勤務
現在、大阪府内のスーパーマーケットで商品補充の仕事に就いている。 「すごく緊張して面接に行ったら、『あなた、京橋駅で雑誌を販売していますよね』って言われてびっくり。きっと落とされるだろうなあと思っていたら、『いつもまじめにがんばっている姿を見ていますよ』と、採用してくださったんです」▼石田さんの登場する「今月の人」はこちら
https://www.bigissue.jp/vendor/85/
https://www.bigissue.jp/vendor/225/ (*一部掲載)
故・石橋孝三さん (元・渋谷の東急プラザ前販売者)
ビッグイシュー販売をするまで:まち工場、警備会社、飯場・・・
広尾で5人兄姉の末っ子として生まれた。当時、広尾にはまだ都電が走っていて、やんちゃな子どもだった石橋さんは、都電の車庫に忍び込んでは遊んだ。成人して、大田区の町工場でゴムをプレスする仕事に20年携わった後は、警備会社や千葉の飯場などを転々としたが、仲間との折り合いが悪く、仕事を辞めて渋谷に戻ってきた。
ビッグイシュー卒業後:清掃会社
施設の支援を受けて、ビルの清掃管理を行う会社で、面接と掃き掃除のテストを受けた石橋さんは見事合格し、念願の仕事を手に。 「お客さんの言葉を今もしっかりと胸に焼きつけて、清掃中にすれ違うマンションの入居者には笑顔で、『おはようございます』『いってらっしゃいませ』と、気持ちのよい挨拶を欠かさないようにしています。知らん顔をして通りすぎる人もいれば、『いつもご苦労様』と温かい言葉をかけてくれる人もいます。中には菓子折をくれたり、田舎から送ってきた果物を届けてくれる人までいるんですよ」▼石橋さんの登場する「今月の人」全文はこちら
https://www.bigissue.jp/vendor/50/
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
いかがでしたでしょうか。
「ホームレスの人の自立は応援したいけれど、1冊買ったところで何も変わらないのでは?」と思っているとしたら、それは当てはまりません。
1日10冊売れれば、悪天候の日に路上ではなく、ネットカフェに泊まることができます(これもひとつの路上脱出です)。20冊前後を売れば、簡易宿泊施設に毎日泊まれる余裕ができて、路上生活を脱出することができます。その後も1日30冊前後の売上げをキープして、毎日1000円ずつ貯金ができれば、1年ほどでアパートを借りられるようになるのです。
何より、あなたとの何気ないやり取りが、販売者にとって毎日を生きる励みになっています。
「そもそもビッグイシューってどんな雑誌なの?」
『ビッグイシュー日本版』の雑誌の内容を、ホームレス問題やホームレス支援情報が満載…と思っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、国内外の映画やアート、自然・環境・エコロジー、仕事・働き方、地域住民がつくりだす持続可能な経済活動など、多岐にわたるテーマを扱っています。▼編集コンセプトはこちら
https://www.bigissue.jp/about/concept/
ちなみにビッグイシュー日本自体は小さな有限会社ですが、同じ志をもち活動する世界中の100誌以上のストリートペーパーが集まる国際ストリートペーパーネットワークに参加し、記事や情報を融通し合っています。そのため海外で話題になっている映画情報も、タイムリーにご案内できます。
https://www.bigissue.jp/about/network/
ビッグイシューは海外のセレブが表示を飾ることも多いのですが、無料またはチャリティ価格でご登場いただいています。
ビッグイシューの考え方に賛同いただいたり、本や映画などでのパブリシティのタイミングだったり、動機は様々です。
ぜひ一度、路上の販売者にお声掛け頂き「オススメの号はどれ?」と聞いてみてくださいね。
ビッグイシューを購入した人の声をピックアップ
カタカナが苦手で海外俳優さんの名前もサッパリだった私が映画を通してビッグイシューを買うようになったり、韓国の社会情勢を調べたりするようになるなんて。
— 野水伊織@10/28とちアニ!那須ハイ (@nomizuiori) 2017年10月23日
好きなものを追い求めるのはたのしい。
ただただ好きだからできること。
ビッグイシュー。
— やぬしゅ (@Tomohisa_Sensyu) 2019年2月27日
なかなかおもしろい記事が多くて楽しい。
これからもちょくちょく買ってみよ。 pic.twitter.com/gVFQFqQBg1
地味に東京にくる楽しみやったりする。シンプルに記事の内容がタイプやしおもろい。ホームレス支援で課題をシンプルにおもしろいことで解決してる感じも好き。#ビッグイシュー pic.twitter.com/BRUNWcqrdF
— 新卒田舎暮らしな現代の百姓 (@zakukai69) 2018年11月22日
やっぱビッグイシュー面白い〜
— 清水雅美 masami shimizu (@IyL3hlFfaNRSF30) February 8, 2023
環境保護犬の活躍はさすがといった感じだし。
情報量もちょうどいいから読もうって気になれるのよね😃
多すぎても全部は頭に入らないもんね。。
ぜひお気軽にお声掛けください。
販売場所はこちらです。
https://www.bigissue.jp/buy/
販売場所は近くにないけど、何かできることない?と思ってくださる方へ
ビッグイシューから皆様へお願いしたいことをまとめました。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。