「一般社団法人Colabo」代表の仁藤夢乃さんに、夜の街をさまよう女子中高生を支援するためのアウトリーチ活動、「支援者養成講座」や夜間巡回バス活用について聞いた。


街で見かけた少女に まずは「大丈夫?」と声かけ

 高校時代、家庭の事情から家に帰れず、渋谷や新宿をさまよった経験のある仁藤夢乃さんは11年から「Colabo」として女子中高生を支える活動を始め、大学を卒業した13年に法人化。「夜間巡回による声かけやSNSを通じた相談事業、児童相談所や警察への同行支援、一時シェルターや中長期シェルターでの保護」などを行ってきた。

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 活動が知られるにつれて、本人から直接の相談も増えてきたが、「声をあげられない少女たちに手を差し伸べる大人が増えること」を目指してきた原点に立ち返るために、アウトリーチ活動の充実を図ろうと今年、「中央ろうきん若者応援ファンド」に応募。Colaboの職員や社会福祉士など3人の運営メンバーが週に1度のミーティングを開き、支援者養成講座の準備を進めている。

「父親から性虐待を受けていて、母親も守ってくれない」「母親の彼氏がいて家に居場所がない」などと訴える少女たちは大人へのあきらめや不信感が強く、自暴自棄に陥っている子も少なくない。街で声をかけてくるのは「買春者や性風俗業者など、子どもの性を利用しようとする大人ばかり」だったと自らの体験を振り返り、仁藤さんは言う。

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 仁藤夢乃さん

民生委員など、子どもの支援をしている方からも、街で見かけた少女になんて声をかけたらいいのかわからないという相談をいただきますが、まずは『大丈夫? 気をつけてね。困ったらColaboがあるよ』と言うだけでも、少女は『気づいてくれる大人もいるんだ。まだ私、大丈夫かもしれない』と思える。そういうきっかけを増やしたいんです。

家出少女の気持ち体験研修。夜間巡回バスの利用も視野に

 支援者養成講座は「夜の街歩きスタディーツアー」「支援が必要な少女たちの状況を学ぶ座学」「家出体験研修」などを通して、少女が夜の街に出る理由を想像し、気持ちに寄り添えるようになることを目的としている。

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 夜の街歩きスタディーツアー

「家出体験研修は夜の街に出て、少女の立場や気持ちになって24時間過ごしてもらうというものを考えています。『未成年なので年齢確認があるネットカフェなどには入れない』『飛び出してきたのでお金をほとんど持っていない』など年齢や所持金も細かく設定し、終了後に、どう過ごしたかをシェアしてもらいます。こういう経験が1度でもあれば、声をかけた少女とのコミュニケーションのきっかけになります」。この講座は年内に1度、「子どもとかかわる活動をしている人」を対象にトライアル講座を実施した後、来年の2月には20〜30人を対象とした1回目を開く予定だ。

 また、仁藤さんが9月に視察した韓国では「夜間巡回バスをソウルの繁華街の近くに止めて、さまよう少女たちに声をかけ、バスの中や周囲のテントで食事をしたり、相談に乗ったりする取り組みが5年ほど前から続けられている」という。こうしたバスを拠点にしたアウトリーチ活動を来年の夏以降、歌舞伎町で始められないかと、新宿区や地元の更生保護女性会と調整を進めているところだ。

支援を装って少女を搾取する人もいる。でも、少女に話を聞くと『その人しかいない』と思うくらい孤立している」。それでも「街をさまよう少女に対する社会の目はまだ厳しい」と仁藤さんは言う。「家族が支えられない少女も、私たち大人が地域で一緒に支えていける社会になることを願っています。

一般社団法人 Colabo
すべての少女が「衣食住」と「関係性」をもち、困難を抱える少女が暴力を受けたり、搾取労働に行き着かなくてよい社会を目指して活動。夜間巡回・相談、同行支援、一時・中長期シェルターの運営、中高生を中心とした少女たちによるサポートグループTsubomiの支援などを行う。
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ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド2017」の特集記事をお届けします。この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています。





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