日大アメフトの悪質タックル事件後の大学側の対応のまずさや、官僚による文書改ざん事件に見る、“組織の風通しの悪さ”から生まれる昨今の不祥事の数々には多くの人が辟易していることだと思う。

この結果を作り出す「風通しを悪くしている人々」は、万が一「所属している組織」を離れて別のコミュニティで生きていかなければならなくなったとき、いったいどうなるのだろうかと心配になるほどだ。


自分が自分のままでよいという「風通しのよさ」に触れたことがなければ、「今の立場をなくしてはいけない」という気持ちが働いて判断を誤らせてしまいがち。
2018年6月15日発売の『ビッグイシュー日本版』337号では、こもりがちな重い空気を吹っ飛ばす特集としてパーマカルチャー(*)の考え方などを参考に〝風〞とおる暮らしを営む2つのコミュニティを訪ねた。

* 持続可能性の高い生態系と文化を築くためのデザイン

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写真提供:三角エコビレッジ サイハテ

ルールもなければリーダーもいない「村」。/三角エコビレッジ サイハテ

熊本県の山中に、クリエーターなど27人が集まって暮らす1 万坪のエコビレッジ「三角エコビレッジ サイハテ」 がある。

エコビレッジとは、持続可能な循環型の暮らしを目指すコミュニティのこと。海外には数多くのエコビレッジがあり、最近はその暮らし方が注目されてきているが、日本ではまだ聞き慣れないかもしれない。

「それって、“ヒッピー”とか“ユートピアを目指す共同体”みたいな感じ?」と感じる人もいるかもしれないが、今回ご紹介するのは文明を否定するものでもなければ、人々の生き方や宗教的・政治的信条を縛るものではない。むしろ、すべてが「お好きにどうぞ」な場所なのだ。

呼びかけ人の工藤シンクさんは、もともと廃村状態だったこのエリアを1千万円で売ってもらえることになり、ネット上で資金調達して3カ月後には10人を集めて開村したという驚きの人物。その行動の動機や、ルールもリーダーもいない、27人の村の暮らしぶりについては、本誌337号にてご確認いただきたい。

「熊本は遠いし、今の生活ともかけ離れすぎて想像できない」という人には、宿泊場所と食事を提供する代わりに、長期滞在して大工仕事や畑仕事、ゲストハウスの運営や各家庭の家事を手伝う「サイハテインカム」という制度もある。興味が湧いてきた人は休みなどを利用して「風通しの良さ」とはどんなものなのかを確かめに行ってみるのもいいだろう。

ルールや当番のないシェアハウス?/「ウェル洋光台」

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Photos:浅野カズヤ


シェアハウスに永住する人は少ない。そのため、「ある時期人気のシェアハウス」も、5年後、住人が入れ替わるとずいぶん居心地が変わるということも珍しくない。
誰もが他人任せなら荒れ放題になる一方だし、かといって運営スタッフや当番を決めると“平等”にはなっても「やらされている感」がつきまとうというのは、どのシェアハウスにもよく見られる悩みではないだろうか。

神奈川県横浜市のシェアハウス「ウェル洋光台」も、かつてはウェイティングリストに名が連なるほどの人気物件だったが、その後入居率は急降下し、5割を切った時代もあったという。入居者同士挨拶もせず、共有スペースも汚れ放題…。そんな状態から再び24世帯31人が笑いあって暮らすシェアハウスとなった。

ここには普通のシェアハウスにあるルールや当番といった決まりごとがないという。その代わり、日々の暮らしを成り立たせているのが住人の自由な行動と“贈りあい”文化だ。いったいどういうことなのか? 自身も「ウェル洋光台」に住まう大家の戸谷浩隆さんにその暮らしの秘密を尋ねた。

『ビッグイシュー日本版』337号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:女優 西田尚美さん
・スペシャルインタビュー:真木よう子さん
・国際:分離壁に引き裂かれる、パレスチナ人カップルたち
・滝田明日香のケニア便り:マサイマラの野生動物を空から保護する
・ホームレス人生相談:73歳男性からの「特に楽しみがなく一日を長く感じる」の相談

など盛りだくさんです。
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ぜひ路上にてお求めください。

関連書籍:都会からはじまる新しい生き方のデザイン

都会でより自然に、楽しく、豊かに生きるために、その哲学から実践まで紹介する日本初のアーバンパーマカルチャーガイドブック(amazon紹介文より)
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『ビッグイシュー日本版』自由な生活関連号

THE BIG ISSUE JAPAN312号
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https://www.bigissue.jp/backnumber/312/






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

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