ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、教育機関や各種団体などに出張して授業をさせていただくことがあります。今回訪れたのは、大阪商業大学堺高等学校。昨年度に引き続き、2回目です。
体育館を訪れると、3年生400人余が既にスタンバイ。早速、ビッグイシュー日本のスタッフ・吉田耕一の話が始まりました。


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ビッグイシューの説明が始まる

「『ホームレス』というのは、その人自身を表す言葉ではないんです」。そう吉田は切り出しました。

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「ホームレス」という語の意味を考える

「例えば、僕が今日住む家を失ったとしますよね。そうすると、僕は今日から『ホームレス』と呼ばれるわけです。僕自身は、昨日の僕と『家がない』ということ以外、変わらない。でも、僕たちは、まるでその人の人格を表現するように『ホームレス』という語を使っている時があるかもしれません」

「でも」と吉田は言葉を継ぎます。「例えば、『女性』と言ったっていろんな性格の人がいますし、『大阪商業大学堺高校』だってそうですよね。『ホームレス』だって同じで、おとなしい人、賑やかな人、本当に様々な人がいるんです」

リストラで「ホームレス」に。実家を出て、ネットカフェで寝る日々

この日登壇したのは、なかもず駅の販売者の平川さん。昨年度登壇した販売者の中本さんが、講演後しばらくしてビッグイシューを卒業したため、今回が初めての登壇です。

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平川さんは高校卒業後、大手メーカーの子会社に就職しますが、2年半働いた後、リストラに遭ってしまいます。

「ある日出社すると、会社の掲示板にリストラ対象者として自分の名前が張り出されていて……ショックでしたね」

失職したことで実家におりづらくなり、家を出たという平川さん。ネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりするうちに、ついになけなしの所持金は尽きてしまいました。

 話は壮絶なのですが、スタッフの吉田との掛け合いで、ホームレス状態に陥った理由を落ち着いて語りました。


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吉田(右)との掛け合いで、半生を語る平川さん

炊き出しのおにぎりを分けてくれた公園のおじさん

ついに野宿生活が始まりましたが、ある公園を寝床に決めたのはある親切なホームレスの男性がきっかけだったと言います。安心して寝られそうな場所を見つけてブルーシートにくるまって眠ったことをきっかけに、近くにいたホームレスの男性が「炊き出しでもらってきたから、このおにぎり食べな」と渡してくれたのだそうです。

 その男性はその後も、何かと助けてくれました。そして、ある日手渡された『路上脱出・生活SOSガイド』(※)によって、「ビッグイシュー」のことを知ることとなりました。

(※)路上生活する人が生きのびるために必要な情報を冊子にまとめたもの。「ビッグイシュー基金」が制作・発行。大阪、東京にはじまり、札幌、名古屋、京都、福岡、熊本の各地でも作られ配布されており、ウェブからのダウンロードも可能。
https://bigissue.or.jp/action/guide/


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「路上脱出・生活SOSガイド」

講演の最後に、「自分は親不孝をしてしまったので……」と語った平川さん。「皆さんの家庭もいろいろ事情があるかもしれません。ですが、できそうな機会があればぜひ親孝行をしてほしいです。僕はできずに後悔の日々でしたが、母親はまだ元気なので、これから孝行していけたらと思っています」

「ホームレスの人たちへの見方が変わった」「ホームレス状態になっても頼れる人を」――アンケートから

 授業後、学生さんたちからは、次のような声が寄せられました。

「ホームレス同士の人たちはあんまり仲が良くないのかなと思っていたが、おじさんがからおにぎりをもらったという話を聞いて、他のホームレスの人たちとも関わりがあるんだなと思った」
「しっかりと人間関係を築き上げていきたいと思いました。もしホームレス状態になった時にも、頼れる人は作っておきたいと思いました」
「お風呂に入ることなどの日常生活での当たり前のことがホームレスの方からしたらそうではないと知った」

大学の授業で知った「ビッグイシュー」、販売者の話が今だに心に


授業後、この出張講義を企画した奥田真由美先生にお話を伺いました。「私自身、大学の授業でビッグイシューのことを知りました。そしてその時初めて、様々な理由が重なって、ホームレス状態に陥っていくということを理解しました」と教えてくださいました。「その先生とビッグイシューの販売者さんと、学生の皆で一緒にご飯を食べる機会があったのですが、その経験が今でも心に残っています」

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出張授業を企画した奥田真由美先生 

「これから社会に出ると、様々なことが起こると思いますが、今日のお話が生徒の心にも届いているといいなと思っています」と生徒さんへの思いを語ってくださいました。

(写真と文章:八鍬加容子)

参考:大阪商業大学堺高等学校 各学年 総合学習の取り組み

昨年度の登壇の様子:
介護離職をきっかけにホームレスになった販売者に、高校生から重い質問/大阪商業大学堺高等学校への出張授業


格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

 

小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/ 

参考:灘中学への出張講義「ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会/ビッグイシュー日本」



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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。