東京電力ホールディングスは、福島県・楢葉町にある「Jヴィレッジ」の原状回復工事を行い、2018年に福島県に返還した。しかし今、超党派の国会議員らでつくる「原発ゼロの会」などが、原状回復工事とその後の「線量低減措置」の違法性を指摘している。
97年、東電が福島県に寄贈 原発事故で事故対応拠点に
Jヴィレッジはサッカーの総合トレーニングセンターで、全天候型含めピッチは11面あり、敷地内にはホテル、テニスコートやフィットネス棟などもある。東京電力が開発を行い、1997年に福島県に寄贈した。管理・運営は株式会社Jヴィレッジが行っている。この会社の社長は歴代福島県知事(現在は内堀雅雄知事)が務め、副社長には日本サッカー協会理事と東電役員が就任している。
総工費130億円という破格の寄贈には電気事業者間でも過大だと批判が出ていた。福島県でのプルサーマルとの関連も指摘されていた。 福島第一原発事故が起きると、Jヴィレッジは事故対応の前線拠点として活用された。ガレキ撤去作業機材や測定などの特殊車両の待機場所となり医療班が常駐。自衛隊ヘリコプターの除染もここで行われ、ピーク時には1000人が寝泊まりしていた。2013年にこれは終了したが、この経緯からすれば、Jヴィレッジの土壌はひどく汚染されていてもおかしくはない。
総工費130億円という破格の寄贈には電気事業者間でも過大だと批判が出ていた。福島県でのプルサーマルとの関連も指摘されていた。 福島第一原発事故が起きると、Jヴィレッジは事故対応の前線拠点として活用された。ガレキ撤去作業機材や測定などの特殊車両の待機場所となり医療班が常駐。自衛隊ヘリコプターの除染もここで行われ、ピーク時には1000人が寝泊まりしていた。2013年にこれは終了したが、この経緯からすれば、Jヴィレッジの土壌はひどく汚染されていてもおかしくはない。
除去土壌、工事に再利用 県が風評被害怖れ非公開
東電は、16年4月から18年6月まで「グランド、スタジアムのピッチや楢葉町営多目的駐車場について、表面土壌の撤去やアスファルトの敷き直しといった『原状回復工事』を施して返還した」という。Jヴィレッジは19年4月から全面営業を再開、福島復興のシンボルとして東京オリンピックの聖火リレーの出発点とされた。
ところが19年10月に、国際環境NGO「グリーンピース」が、多目的町営駐車場の線量が地上1mの高さで毎時1.79マイクロシーベルト(μSv)と、事故前の0.04と比較して45倍も高いことを発見した。その後、環境省がこれを確認し、東電が線量低減措置を講じて、0.39μSv/時まで下がったと同省ホームページで報告。0.23μSv/時を超えるエリアは今も除染の対象になるが、実施すべき追加除染は行われていない。
ここで大きな問題が発覚した。原状回復工事も、その後の低減措置も、ともに法に基づく除染業務としては行われず、各地点の線量の記録や、作業員の被曝線量の記録がない。除去した土壌(汚染土)の記録もなく、保管場所も非公開だ。
駐車場から除去した土壌は103万ベクレル(Bq)/kgもあった。東電によれば、除去土壌は5万1000㎥。汚染レベルが1kgあたり8000ベクレル以下と低かったので土地造成工事に再利用したが、再利用先は「関係者に迷惑がかかる」と非公開を通している。しかし事故対応拠点だったことから、この値を超えていても不思議ではない。また、フィールドを囲う防球ネットなどは指定廃棄物の手続きを準備中というが、記録を残していない上に非公開なので確かめようがない。
東洋経済オンラインの記事(6月25日)によれば、福島県が東電側と密接に協議し、風評被害を危惧して非公開を求めていたことが明らかになった。Jヴィレッジは汚染対処特措法(※)に基づく対策地域内にある。従って、本来なら政府直轄で除染が実施されるべきエリアだ。だが、環境省は民間の作業なので法の対象外だと言い逃れている。当初から環境省とも示し合わせていたのだとすれば、三者とも無責任きわまりない対応だ。(伴 英幸)
ところが19年10月に、国際環境NGO「グリーンピース」が、多目的町営駐車場の線量が地上1mの高さで毎時1.79マイクロシーベルト(μSv)と、事故前の0.04と比較して45倍も高いことを発見した。その後、環境省がこれを確認し、東電が線量低減措置を講じて、0.39μSv/時まで下がったと同省ホームページで報告。0.23μSv/時を超えるエリアは今も除染の対象になるが、実施すべき追加除染は行われていない。
ここで大きな問題が発覚した。原状回復工事も、その後の低減措置も、ともに法に基づく除染業務としては行われず、各地点の線量の記録や、作業員の被曝線量の記録がない。除去した土壌(汚染土)の記録もなく、保管場所も非公開だ。
駐車場から除去した土壌は103万ベクレル(Bq)/kgもあった。東電によれば、除去土壌は5万1000㎥。汚染レベルが1kgあたり8000ベクレル以下と低かったので土地造成工事に再利用したが、再利用先は「関係者に迷惑がかかる」と非公開を通している。しかし事故対応拠点だったことから、この値を超えていても不思議ではない。また、フィールドを囲う防球ネットなどは指定廃棄物の手続きを準備中というが、記録を残していない上に非公開なので確かめようがない。
東洋経済オンラインの記事(6月25日)によれば、福島県が東電側と密接に協議し、風評被害を危惧して非公開を求めていたことが明らかになった。Jヴィレッジは汚染対処特措法(※)に基づく対策地域内にある。従って、本来なら政府直轄で除染が実施されるべきエリアだ。だが、環境省は民間の作業なので法の対象外だと言い逃れている。当初から環境省とも示し合わせていたのだとすれば、三者とも無責任きわまりない対応だ。(伴 英幸)
※ 汚染対処特措法:平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法
(2020年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 388号より)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/
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